風前の灯

「セブン、やれるか」


ウノが問を投げる。


「任せておけ」


即答し、頂上を離れようとするセブンを、本を閉じる音が遮る。


「僕も行こう」


「え!?」


戦闘員であるセブンについて行く宣言をするヨン。前回と今回とで完全に頭脳労働担当とばかり思っていたサンクは驚く。


「・・・・・・やれるのか?」


「なんで僕に聞くときは不安げなのかなぁ。キミんちの魔導書、何が載ってたか忘れたの?」


「あぁ、魔術の。使えるのか、アレ」


「優秀な前衛に時間を稼いで貰えたらね」


ヨンは視線をセブンへやる。セブンは自慢の大きなハサミを掲げるのみである。


「じゃあリーダー。僕たちで片づける間にずらかる準備をよろしく」


「チルとドライの仇は・・・・・・俺たちで」


「相手は噴霧器が効かない相手ですよ!?正気ですか!?」


サンクは叫んだ。勝ち目はないと、敵の姿も見ぬ内から絶望している。


「・・・・・・アレ?もしかして知らないの?」


ヨンは心底意外だった風に言う。サンクの育ちが、自分含めた他のメンバーよりはいいだろうと、察していたからである。


「何を知らないって言うんですか・・・・・・?」


「あー、バックアップのことか!」


「リーダー、何で言っちゃうかなぁ。もったいぶりたかったのに」


ヨンはちょっとカッコつけて言いたい趣味である。


「やってる場合か!!その説明はリーダーに任せて行くぞ!ヨン!」


痺れを切らして声をあげるセブン。よほど頭に来ているらしい。


「りょーかい戦闘主任。じゃ、任せたよ」


勢いよく飛び出すセブンを追って、ヨンも飛んでいく。その姿を見送って、サンクはつぶやく。


「・・・・・・大丈夫ですかね」


「いつからチームやってると思ってる。おまえが教練受け始めぐらいんの時からだ。普段はそうは見えないかもしれねぇが、舐めてくれるなよ」


サンクは思わず黙る。新入りである自分には分からない、積み重ねがあることを思い知らされて。


「えーと、チルとチルの言ったことが本当ならドライも。・・・・・・連絡取らなかったあたりアルも怪しいな。まったく、復活もタダじゃねーってのによぉ」


「・・・・・・復活?」


「あー、なんつーか。死んでも死んでないっていうか?母星に俺たちのデータ、みたいなのがあるからそこから復活させて、まぁある程度時間はかかるだろうが、チーム再結成というわけだ。だから、」


ウノは言葉を途中で切って、出来る限り気楽な雰囲気を持って続ける。


「自分たちを殺してくれやがった奴の情報を、少しでも多く手に入れる!それが今出来る事だ。だから、まぁ、心配しなくていいんだよ」


サンクの背中を、ウノがバンバン叩く。サンクにはその衝撃が遠く、遠く感じられる。


ウノの、ひいては他のチームのメンバーの精神性。一度死んでも、それを糧にして前へ進もうと考えているであろう、強かな算段。まるで今まで、幾度となく、その身を地面に横たえて来たような言い方。


死に恐怖しないその在り方にこそ、サンクは恐怖した。


「撤収の準備、一応しとくぞ。セブンとヨンのコンビなら、首級あげて来てもおかしくねぇ。力で相手を封じて、封じた所を完全に落とす。どうしようもないよ敵は。ほら、ボサッとしてないで手伝え。それとも何か?優等生ぶるの辞めるのか?」


チームを襲った、殺していったはずの敵よりも、目の前に居るウノの方が、襲われた、殺されたチームのみんなの方が、恐ろしいと、逃げてしまいたいと。


サンクはそう、思った。

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