三の火は実直だった。
「『不老不死』さ」
ヨンは充分に間を取って、告げる。が、他の四体はよくわかっていない様子である。
「この本には、不老不死をもたらしてくれる神格との契約について書いてある。いま読み込んでるところまでだと、呼び出し方、契約方式はさっぱりだがね」
「でさぁ、どうやって邪魔なの片付けるワケ?」
「最後まで読んで見ないと、なんとも」
「あ、そう。セブン、パトロールに戻ろ」
「あー、チル。オレは最後まで聞いていく」
セブンの言葉に、チルは顔を歪めた。
「………そう、ボクは行くから。リーダー?」
「特に変わったことは無いんだな?」
「前のところより端っこの方だからさ、前みたいな人間は来ないと思うよー?」
言い残して、チルもフォーメーションから離れる。周囲の警戒に戻ったのだろう。その後ろ姿をセブンは眺めていた。
「サンク、次の候補地は見つかったか?」
「一応、三ヶ所ほど目星をつけてます。探査機を出せるなら、確実に出来るんですけど……」
「アルに連絡を取れ。俺たちの探査機が見つかると不味い。人間が作ったのを改造した方がいいだろう。そういうの拾ってくるのはアイツだ」
「分かりました。この会が終わり次第、連絡飛ばしてみます」
「うむ。じゃあ、次。セブン」
「特にこれといって報告は無い。無いんだが……」
「だが?」
「大反乱、あの時と同じような、何といえばいいんだ。……その、なんだ。これから大反乱が起こりそうな気が……」
「あの!大反乱がどんなものかが……よく分からなくて、何が言いたいかが……」
おずおずとサンクがセブンに問いを投げる。
「あぁ、そうか。サンクはまだ生まれてない年か。……大反乱はな、「大実験室が謎の大爆発を起こしてな!ほんっとうに後片付けが大変だった!天井は落ちてるわ、器具はぶっ壊れてるわ、実験体は逃げ出すわでな!なぁ、ヨン」
「……そうだったね。リーダーが犯人だと疑われたりしてね」
「え、マジで、そうだったの!?だからあの時やたら皆から視線感じるなぁと思ってたけどそれだった!?」
「そう、それ。どんだけ容疑を解くのに苦労したか」
「そしてお前がなんとかしてくれてたのか!?ありがとう〜〜〜!」
「くっついてくんなよ。魔導書一冊な」
「分かった分かった。ウチの本棚で探しとくよ」
その間、セブンは何か言おうとして、言えないようにしているのを、サンクは見逃さなかった。しかし、聞き出すには邪魔が多いなと同時に思った。
「よし、じゃあ報告会は解散!各自仕事に戻ってくれ」
その発言を受けて、完全に報告会フォーメーションが解かれる。あるものは今後の計画、あるものは魔導書の読解、あるものは候補地の選定、あるものはパトロールへと戻っていく。
知らないことを幸せとするか、不幸せとするかは人により、状況により違うことだろう。これから起こること、あるいは既に起こっていることを、もし彼らのうちの誰かが知っていたのなら。最悪の事態は避けられたかもしれないが、決して、
それは幸せでは無かったことだろう。
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