雪だるま来歴
「見て下さい! 雪だるまを作りました!」
「ほう、これは大きい。 昨日は降りましたからねぇ」
「ふふん、どうです? なかなか凛々しい顔をしているでしょう?」
「よくもまぁこんな寒い中、長々とはしゃいでいられるものです。 君は犬かなにかですか?」
「人間です!」
「知ってます」
「まったく、貴方は一日に一回嫌味や皮肉を言わないといられないんですか? 家で本ばかり読んでいないで、たまには外に出た方がよいですよ!」
「何の用事も無く外に出て何をしろというのです?」
「え……ほら、あの、雪合戦とか」
「君じゃあないんですから」
「だから笑わないで下さい!」
「ああ、そうだ。 君、雪だるまの由来を知っていて作っているのですか?」
「え? 由来なんてあるんですか?」
「おお、無知とは残酷で恐ろしいものですね」
「え、なんで顔を背けるんですか、ちょっと」
「では、折角なのでお話しましょうか」
「むかしむかし、とある寒村でのお話」
「はい」
「その村では絶えず雪が降り続いており、作物は育たず、村人が皆、飢えに耐え忍んでおりました」
「……」
「弱い者や小さい者から斃れていき、耐えかねた村人達は、ついに『雪の神』に供物を捧げることにします」
「え」
「毎年村人の中から一人、人柱を立てるようになったのですよ」
「ひ、人柱…」
「はい」
「え、あの、それってもしかして…」
「その人柱の方法というのが、身動き出来ぬように全身を縛り付け、頭だけを出した状態で、身体を雪に埋め固めるというものです」
「ひいっ!!」
「吹き荒れる吹雪の中、生きたまま晒され続けるという……生き地獄ですよ」
「う、ううう……」
「そして、一晩晒し続けられた者の最期の姿はまるで」
「……」
「……『白いダルマの様だった』と……」
「うわああああああん!!!!」
「あ、泣いた」
「そんな悲しい由来があったなんて知らなかったんですう!!!」
「君、何してるんですか?」
「少しでも温かくなるように僕のマフラーをと……」
「ああ、そう」
「なんだか罪悪感でいっぱいになってきました」
「はい」
「遊び半分で作ってはいけないものだったんですね、雪だるま……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「まぁ嘘ですけど」
「……」
「嘘です」
「は?」
「嘘ですよ」
「……」
「2秒で考えた嘘です」
「……」
「……」
「あの」
「はい」
「いつになったら出してもらえるんですか、これ」
「僕がイイと言うまでです」
「いや、寒いし冷たいんですけど」
「知りません」
「えー」
「そのまま『白いダルマ』になってしまえばイイのです」
「そんな猟奇的な」
「貴方が考えたことでしょ!」
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