第6話 聖なる力【加護】 呪われた力【異能】
夕食を食べ終えた俺は自室に戻り、布団の上に寝転がる。
夕食は慌ただしかった。
俺らのステータスを自分の事のように自慢しだす父。
驚きのあまりに皿を落とす母。
それを聞いて問い詰めてくる馬鹿兄。
ステータスの事を考え続け、何も無い皿をつつくアンリにそれをいつものように可愛がるアレット姉さん。
落ち着いてご飯も食べられない。特にエリクのせいで。
ようやく落ち着くことが出来たのが今だ。
あのステータス確認後......
俺のパーソナルカードを見て再び錯乱状態に陥った父は、ようやく落ち着いたようだ。
「ヘル....先のステータスについて、お前に一つ注意して起きたいことがある。これは、とても大事なことだ」
そう切り出し、俺のパーソナルカードに項目の一つを指す。
それは
「いいかヘル。スキルを所持していることは周りの人には秘密だ。いいな」
そう言う父の顔は、先程とは打って変わって真剣だ。
俺が何故か聞くと、とても悲しそうな表情でことを告げた。
加護は神から授けられし聖なる力。
そう言い伝えられているらしい。
加護は妖精や天使から授かる特別な力。
スキルは数万人に一人しか所持できない特別な力。
この2つは魔法では叶わない事すらも可能にすることが出来る。
ここだけ聞けば「凄い力だなぁ」で事は済む。スキルだって加護と同じように皆が羨む神の力のように見えるだろう。
だが、スキルは別の生物が悪用する力だった。
魔族....その中でも特に人間に近い思考、姿をした魔人種が持つ力だったのだ。
魔人種はスキルを使い、多くの命を奪ってきた。
その行いから魔人種は邪神の眷属と言い伝えられてきた。
そしてその力は呪われた力だとも....
その呪われた力を持つ人間は魔族だ、そう言い伝えられてきたとか。
近年では偏見、差別を無くそうと国が動いてくれているらしく、大分マシにはなってきているらしいが、それでも凝(しこ)りは残った状態なのだそうだ。
「むぅ。これは騎士団に連絡をするのは次の機会、落ち着いてからがいいかもしれんな。騎士団は魔人種嫌いで有名だからな....。
とりあえずは学園には連絡は通して置くべきか」
そう言い残こし、父は俺らの訓練の事を忘れて部屋に篭もり、夕飯の時間まで出てこなかった。
で、夕飯の騒ぎに繋がる。
アンリはほとんど一日ぼーっとしてたな。真面目すぎてついに頭が飛んだか。
改めて俺はパーソナルカードを覗く。
俊敏が78で筋力が22。
これは忍者にでもなれと告げているのか。
確か俊敏は人気ランキングワースト2位。
理由は多少上がっても変化を感じないから。
多少足が早くなったり、運動神経が伸びる程度らしく、戦力としてより回避能力として見られているそうだ。
だが、大半の人達は力と技術でそれを覆すことを優先するらしい。
ここまでの話しは通常の場合だ。
父が部屋に篭もり、アンリが放心している間に軽く運動して見たが明らかにおかしい。
最初はいつも通りに動いてみる。普段と大して変わらない。
本気で走るよう意識して走ってみると....風を感じた。
続いてジャンプ....二階の窓から家に入れた。
まぁ要するにだ。
レベル3の状態で騎士団と同等の筋力、ずば抜けた敏捷を持つ俺はチーターということです。
速くて力でも押し負けない。
......主人公っぽいですねー。主に黒髪系のキャラは皆身軽だよね....身軽じゃない?
「それと、このスキルだよなぁ....」
スキル《絶対悪》
何なんだこの如何にもラスボスの二つ名みたいな名前は。
呪われた力云々抜かしても怪しすぎる名前だな。
ていうか今更だけど呪われた力って....。
あの馬鹿天使、そんぐらい先に説明しやがれっての。
これを手に入れた事を意識してみると、そのスキルの概要、使い道がいつの間にか知識として存在していた。
「......ちょっくら試運転でもしてくるかな」
他の家族が寝静まったことを確認すると、布団の中に枕を突っ込んで偽装し、窓から静かに飛び降りた。
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