第17話 共同依頼
翌日、俺たちはギルドで依頼を見回していた。
「どんな依頼があるかなっと。お、これは……」
「いい依頼があったのですか?」
「ああ、共同依頼なんて面白そうだと思ってな。盗賊団を倒すのが目的で、2パーティー合同の依頼らしい。ウルルはどう思う?」
「楽しそうなのです!」
まだ他人が戦っているところを見たことがないし、一度見ておくのも勉強になるだろう。ウルルも賛同してくれたことだし、共同依頼を受けることにする。
「もう一組の方たちはあちらでお待ちです」
ギルド嬢の言葉に従って、俺とウルルは冒険者パーティーと顔合わせをする。
彼らも2人パーティーだった。一人は金髪の男、もう一人は赤髪の女だ。見た目の印象は、男が優しそう、女が気が強そうといったところか。どちらも顔、スタイルともに整っていて、まるでモデルのようだ。
「君たちが今回のお仲間かな? 僕はライアン、Aランク。よろしくね」
「あたしはシェリー、Aランクよ、よろしく。……ところで、あなたたちどこかで見たことあるような気がするんだけど……」
「俺は集。Sランクで、賢者だ。よろしく」
「ウルルはウルルなのです。Aランクなのです。ご主人様ともどもよろしくなのです」
「あっ! あんた賢者!? ライアン、この男、賢者よ!」
シェリーは興奮したのか、口調を荒くしてライアンの背中をバシバシと叩く。
「あー、そうなんだ。ごめん、僕世間に疎いから知らなかったよ」
「今この国を沸かせてる2人のうちの1人よ、そんぐらい覚えときなさいよね!」
「ちなみに、もう一人は誰なんだい?」
「そりゃ、ミリア様でしょ。あの人が国王になってくれたおかげでこの国は安泰だわ」
ミリアが王に即位したことは一般人にも歓迎されているらしい。とりあえず吉報だな。
それにしてもこの2人、かなり仲がいいな。
「お前らは付き合ってんのか?」
「は、はぁっ!? なんであんたにそんなこと言わなきゃいけないのよ!」
「うん、付き合ってるよ」
真っ赤になっているシェリーとは対照的に、ライアンはあっけらかんと交際を宣言した。
「ふぇー、凄いのです」
「す、凄いって何よ。意味わかんないわ、あんたたち」
「シェリー、どうどう」
「あたしは馬じゃないわよ!」
息があっている、とはこういうことを言うのだろうな。まるで夫婦漫才を見ているようだ。
「羨ましいのです……」
「なんだ、焦がれる相手でもいるのか?」
「……はい、なのです」
「ウルルが好きになった相手なら一度会ってみたいな」
ウルルが好きになった人間なら、きっと立派な人間に違いないだろう。
「ご主人様が会うのは無理なのですよ」
? どういう意味だ? ……どこか遠くに住んでいるということだろうか。
遠距離恋愛とは、ウルルの恋は茨の道のようだ。
「まあ、頑張れよ。応援してるぜ」
「……ご主人様は、こういうとこはダメダメなのです」
ウルルはなぜかため息交じりにうなだれた。意味が良くわからない。
俺たち4人は盗賊団がいるという森の中へと入った。一直線に並んで、前から、反応が素早いライアン、気配察知が得意なシェリー、一撃の威力があるウルル、何でもできるオールラウンダーの俺、という布陣だ。
「それにしても驚きだよね。まさか6属性全部使える人がいるなんて。世界は広いなぁ」
「賢者が4属性使えるらしいとは噂で聞いてたけど、噂を超えてくるってあんたどうなってんのよ」
「噂に尾ひれがつくようじゃ大したことないってことだ。俺レベルになると、噂が俺に付いてこれない」
「さすがご主人様なのです! 格好良すぎて昇天しそうなのです!」
「えっ、ちょっと、大丈夫ウルル!?」
突如倒れこんだウルルにシェリーとライアンが驚く。
俺は慌てることもなく、いつものように癒魔法をかけてやった。
「ああ、シェリー、心配しなくていい。ウルルが昇天しかかるのはいつもの癖だ」
「そんな命に関わる癖、聞いたことないわ……」
「シュウ君のそばにいるにはそのくらいの人間じゃないと務まらないってことなんだね。すごいなぁ」
「死の淵から生き返ったら、なんか褒められてたのです。嬉しいのです」
「よかったな、ウルル」
「はいなのです!」
ウルルは元気よく返事をした。とても先ほど死にかかっていたとは思えない。
シェリーはもう十分だと言わんばかりに頭を抱えた。
「あんたらの関係には口出ししないわ……。あたしの精神が持たない……」
「シェリーは難しく考えすぎなんだよ。もっと僕みたいにのほほんとすればいいのに」
「あたしまであんたみたいになったら騙され放題じゃないの! 月一のペースで騙されてお金をとられてるのなんて、この国でもライアンくらいよ」
「シェリーと組む前は週一で騙されてたからね、感謝してるよ」
「わ、わかってればいいのよ……!」
「シェリー、ライアン。おしゃべりはここまでだ。……魔物が近づいてきてるぞ」
魔物の気配を感じた俺は2人ののろけ話を中断させる。
「……方向は?」
「右斜め前。距離は150ってとこか」
「150って、どんな索敵範囲してんのよ……。索敵が大得意なあたしでも80メートルまでしかわからないんだけど」
「比べる相手が悪かっただけだよ。シェリーはすごい」
「そ、そうよね。ありがとうライアン」
「3人とも、俺に付いてきてくれ魔物がこちらに気づいていないうちに先制攻撃を叩き込む」
ライアンに代わって先頭に立った俺は、魔物の方向へと隊を率いていく。およそ80メートルまで迫ったところで、シェリーの索敵に敵が引っかかった。
「オークの群れね。数は30。こいつらの討伐はAランク依頼相当……ここでオークと戦うと、盗賊団との戦闘まで魔力が持たない可能性があるけど、どうする?」
シェリーが俺たちの意見を集める。
「僕は戦いたい。オークが街に近づいたらどれだけの被害が出るかわからないからね」
「ウルルはご主人様に任せるのです」
「俺も戦うに賛成だ。盗賊団と戦う前に連携も確認しておきたいしな」
全員戦うことに賛成のようだ。
それを確認すると、シェリーは目をぎらつかせて言った。
「おーけー、満場一致ね。――じゃ、やりましょうか。オーク討伐」
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