忘れなぐさ

 教師の優秀さはどこに現れるのだろう。著作の売れ行き、版をいくつ重ねたか?数は確かに増えていくが実感を伴わない。大学の入試説明会に呼ばれたことがある。嬉しいことに私の著作を手に質問の列にならんでくれた子がいた。

「ん?サインしようか?」

「いいです」

「でもここにサインしてあるよ」

「違います。バトンなんです」

「バトン?」

「受かった先輩がサインしてくれたんです。お前も続けって」

複数名のサインが誇らしい。


 学会前日に馴染みのバーでミントジュレップを飲む。懐かしい装いに写真をアップした。すぐに反応がある。

「このスタイル懐かしいです(*´∇`*)」

「たしかに懐かしい 」

「これをSさんに教わったのがもう12年位前になります(笑)グラスもボールもあのときのままですねー\(^o^)/」

「懐かしいです。20年前から変わっていない(笑)」

重ねた数より確かなものがある。伝統という歴史。記録より思い出。

森博嗣先生は西之園萌絵に「記憶と思い出の違いは何?」と言わせている。今こそ自信を持って答えられる。

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