第3話 金平糖の音


目の前のその子は、未だ僕に気づかない、そして動かない。

僕がゆっくり近づいてみても、気づかないし、動かない。


遂に僕は、僕の右手がその子の肩に触れる事のできる距離にまで、

近づいてしまった。


触れるつもりはない、でも、かける言葉も見つからない。


なぜか気になってしまって、ここから立ち去る事もしないまま、

ただただ柔らかい黄金色を眺めていた。



突然訪れたその時は、息を呑むほど繊細で、やわく甘かった。



振り向いたその子は、僕をまっすぐ見つめたまま、微笑んだ。

金平糖を、そっとグラスに落としたような、そんな音が聞こえた気がした。



「綺麗な音…、君が笑った音、素敵だね。」



青い瞳に見つめられて出た言葉は、

またもうひとつ、グラスに金平糖を落としたみたいだ。





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