四章十話
「そんなものですか?」
「そんなものだとも。青銅の門と言うのは右を左と言い、上を下と言い、白を黒と言った者から力を得る世界である可能性が高い。強い能力を持つ神徒ほどその側面が強いということは、君もよく知っていよう?」
ターナ値18。人工の技術だけで作りだすことのできるターナ値の限界だ。その値を繭のように展開して飛行機を包むことで、人間は大気圏外に出ることも、大気圏外から地上へ戻ることもできるようになった。
「人とは違った側面で一つ君に言ってなかったことがあるな。ターナ・ボイスというものを知っているか?」
「ええ、噂程度には聞いたことがあります」
「一応日常の基準値以内のターナ値に抑えることができた試作品が研究所にあってね」
「本当ですか?」
「本当だとも。携帯電話が要らなくなる時代がもう少しで来るに違いない。それで、ここからは提案なのだが……」
研究所はもう目と鼻の先である。雨岡は声を落とした。
「一つ無断で持ち出してはくれないか?実験しようにも研究所内でいくら通信しても魅力に乏しい物でな、今も倉庫で埃を被っているのだよ。だから、できれば南半球のどこかとここほどの距離で通信を……」
「冗談はいいですよ、教授。あなたに似合わない」
咲岡は笑って拒絶した。そんな技術を使うつもりはない。百害あって一利なしだ。雨岡は露骨に肩を落として見せた。
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