二章四話

「では目的はなんだ」

次弾の装填が終わり、再び女性の眉間に狙いを合わせて、咲岡が問う。

「ミュズィースよ。あなたの後ろにいるカミサマをもらい受けたいの」

言い切らない内に、咲岡が返事をする。

「生憎だな。それはできない。俺の仕事はミュズィースを保護しながら『門』まで連れていくことだ」

「『門』……?」

女性が周囲を見回す。いつの間にか、女性の出てきた青銅色の扉は消えていた。何かを探すように動くその赤い目が、少しだけ光ったように見えた。

「ああ、『青銅の門』ね。開きそうだから閉じなくちゃいけないけど、普通の人間が束になったところでどうしようもないからミュズィースに頼ろうってことで間違いないわね?」

肩を竦めながら女性が言う。攻撃の意思がないことを示すため、薙刀を壁に立てかけてしまったが、咲岡はまだ銃を向け続けている。

「お前に話す理由はない」

「そうね。その通りだわ。でも、あなたは私の額に大口径の銃弾ぶちかましたんだから言いたいことはきっちり言わせてもらうわ。フェアじゃないもの。――。どう?ミュズィースと引き換えにするなら魅力的な提案じゃない?」

明るく笑ってそう言い放った女性にかける言葉を探していると、ミュズィースがゆっくりと扉の陰から現れる。

「あなたは、私を助けに来てくれた人?私をに会わせてくれるというのは、本当なの?」

ミュズィースのその声を聞いて、女性はにっこりとミュズィースに笑いかけた。

「ええ、そうよ。私は香弥かや。それにしてもミュズィース。あなたもう少し力を調節する方法を覚えないとダメね。眠らせてとはお願いしたけれど、こんなに広範囲を眠らせたら誤魔化すのも骨よ?」

真也しんや、お願い。見逃して……?」

咲岡真也は、ミュズィースの言葉から放たれる強い誘惑を必死に振り払って言った。

「ダメだ、ミュズィース。この世界が君の歌を求めている。どこか遠くへ行ってしまっては大勢の命が失われるかもしれない。そんな事態は避けるべきだ」

「真也。私が楽しく歌う姿を褒めてくれたあなただから頼んでいるの。お願い」

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