一章十一話
「春休み。春休みか……」
学年末試験はもう終わってしまっている。萌子は二年生も引き続き部活ができると喜んでいたし、侑里も二年生になる。
「コー
楠木
侑里の携帯が震える。確認すると、隆康からのメールだった。
「母さんには伝えたんだが、引継ぎの部隊が洋上で事故にあった。門によって汚染された生物の仕業だ。今月終わりには帰れない」
門の影響は人類だけではなく、惑星上の全ての生物に及んでいる。門から遠いこの辺りでは影響は微々たるものだが、近海に与える影響は凄まじいものがある。足が何十本もある巨大なタコだの、巨大ロボットじみた形状の貝だのの写真を隆康から見せてもらったこともある。
返事を送ろうと隆康のメールを見たが、送信されたのは昨日の深夜だと書いてある。通信衛星の都合で、メールはかなりのラグが生じてしまうのだ。かと言って電話しようにも、今は侑里に構っている場合ではないだろう。電源が切られているという自動メッセージが聞こえるのが関の山だ。「うん、頑張ってね。応援してる」とだけ送信して、ニュースを確認する。
「え?」
トップニュースを見て、侑里は唖然とした。三十分ほど前から、『門』がゆっくりと開きだしたというのだ。青銅の門は開く角度によってもたらすものが異なる。出現時は
今回の場合はまだなんとか目視できるほどの開き具合で、ほぼ閉じた状態であるが、8年前を上回る可能性があるため、各地に注意報が出ているとのことだった。
二章へ続く。
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