一章二話
二番目に部室に入って来て、部屋の隅で黙々と本を読んでいた男性が、少女の貧乏ゆすりにイラついたような声を出す。この男性は、不機嫌でないと多少のこと――少女の出す音が主である――は無視して、読書し続ける。一年ほどの付き合いでそれがよく分かった少女は、しぶしぶ貧乏ゆすりを止める。
少女の名は
「でも、私の腕、せいぜい20mくらいしか伸ばせませんし、関節だって普通の肘が一つだけですよ?部長の方がよっぽど人間離れしてるじゃないですか」
「あのな、楠木。お前の言う『人間』ってのは少数派なんだ。『門の出現』によってよく分かっているだろう」
部長と呼ばれた男性が本から目を離し、眼鏡を直しながら侑里に呆れた声を出す。この男性の頭部は狼のそれと酷似していて、制服からは尻尾が出ていた。手も指が五本あるものの、毛深い。平たく言えば、狼人間だ。
門の出現。約半世紀前にこの惑星――恒星
そして、社会制度がようやく世論に追いついたのがここ数年のことである。この学校を例に挙げれば、
唸りながら部長に対して反論することを考えていた侑里は、天啓を得てほくそ笑みながら部長に言う。
「部長、ダウト。
何か言い返そうと口を開いた瞬間に、ちょうどガラリと部室の扉が開いた。
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