13.友人の優しさ
「その藤田君って子と出かけるの?」
目の前に居る黒髪の和製美人。
「うん……ねぇどうしたらいいと思う?」
私は花楓に尋ねた。
「どうしたらって……もう行くって言っちゃたんでしょ?」
「うん」
「莉菜は行きたくないの?」
花楓は少し呆れる様子で聞いてきた。
「行きたくないってことはないけど……でも……少し怖い……」
「どうして?どうして怖いの?」
花楓は今度は不思議そうに聞く。
「だって……好きになっちゃいそうだから……」
既にもう好きなんだろう。
だけどまだ認めたくない自分も居る。
そんな気持ちで答えた。
「え?本当に?」
花楓は驚いている。
「ま、まだわからないけど……」
私は必死で否定するように言う。
「なら、行くべきね」
「どうして?」
「だって、莉菜にはその様な人が必要だと思うよ実際」
「でも、花楓だって知っているでしょ?」
私は茉菜と明楽という少年のことを思い浮かべた。
「茉菜ちゃんのこと?」
「うん」
心が痛くなる。
「私思うんだけど、莉菜がいつまでもそんなんだから茉菜ちゃんも前に進めないじゃないかな?」
花楓が何を言っているのかわからない。
「え?どういう意味?」
「茉菜ちゃんは昔みたいに明るい莉菜に戻ってもらいたいんじゃないかな?」
花楓に言われて、またあの言葉を思い出す。
『私には茉菜が助けを求めているような気がする。そのように思えてしまう』
あの子が書き示した言葉。
「だからね莉菜、いいんだよ。莉菜が誰かを好きになっても」
優しく花楓は言う。
自然と涙が溢れてくる。
「私なんかが人を好きになってもいいの?」
泣きながらそう尋ねる。
「そんなのいいに決まってるじゃん」
私の頭を撫でながら花楓は言ってくれた。
花楓の優しさが私の心をまた一つ癒してくれた。
「ありがとう、ありがとう」
何度も何度も花楓にお礼を言った。
花楓は何も言わずただ笑顔で私の頭を撫でている。
「そうそう、今度、その藤田君って子に合わせてね」
花楓は嬉しそうな笑顔で言う。
「うん」
私も笑顔で答えた。
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