EP.04 - 5

 ここが王立シルウス学園。魔法使いの生徒が集うファンタジーのような異世界の学校。


 ここに通うことになるのか胸が躍ってしまう。いつもみんなからバカにされ、他人には見えない何かに怯えながら暮らしてきた。人に対してどう接していいのかわからなくなるほど、他人からの比較は【あたまおかしい人】だった。


 中世時代を思い浮かべるが中世時代などぼくの記憶力では想像できないほどの広大で説明しきれないものだった。


「シド学園長が大変お待ちしている」


 少女コトハに案内され、後をついてきた。魔法という現象と抜け穴と呼ばれる異次元のトンネル。数々の出会いと魔法という存在でぼくの心は奪われていった。


「遅くなりました」


 扉をノックし、中に入る。


 学園長…どれくらい恐ろしい顔と容姿をした人物なのか唾を飲み込み、その顔とやらを緊張の糸が切れるまでの間、学園長と目が合う瞬間まで心臓の鼓動は高鳴っていた。


「ようこそ新入り(ルーキー)、話しは聞いているよ。【相談の魔法使い】からの招待を受け取ってね、早々お会いしたくて返事を出してしまった。忙しいところわざわざすまなかったね」


 にっこりと笑みを浮かべた。髪色は白髪なのか銀色なのかコトハと同じような髪色をしている。こうしてみると銀髪か白髪か見た目だけでは判別できないものだ。


 この人が学園長…。見た限りだと歳は20代後半か30代前半といったところだ。おっさんとも言えずまだ若く見える。 


「ほぉーこれは極めて珍しい体質だ。本学園に置いて今までいなかった。これほどとは…クク、うれしいですね。」


 席を立ち歩きながらぼくに近づき鼻で笑った。


 シド学園長。思っていたよりも変態だということが分かった。


「セクハラですよシド学園長」


 隣にいたコトハの胸を撫でているシド学園長。胸を触られるの抵抗してか、両腕で抵抗しているがシド学園長のしつこい攻撃に抵抗できずにいた。しかも、喋れないことを棚に上げて追撃している。


「縛れ、棘木(いばらぎ)」


 コトハの言葉とともにシド学園長の足元から木の触手がシド学園長の足に向かって伸ばす。触手には棘のように複数のトゲがついている。あれに刺されたら結構痛いだろうなと思うほど。


 学園長は軽々かわし、元の椅子の席に着いた。


「危ない危ない、怒らせるところだった」


(いや、十分に怒らせたと思うのですが…)


 両手を組み、ぼくに向かってこう言った。


「合格だな。コトハと同じルームメイトに任命し、棲み家暮れ荘へ引っ越しの手続きをしておく。それから必要な物資や資料、資金はこちらで保証しておく。これだけの人材だ。まだ他の学園にも存在の発見がされていない人材だ。ここで失ったら、我が学園の永遠の後悔となる」


 あーこれは、ぼくを使って何かをしでかしそうだ。そう聞こえるよシド学園長殿。でも、学園生活に置ける資料や資金まで確保してくれるとはこれほどありがたい話はない。


 これは引き受けた方がいいかもしれない。でも、親にはなんていうべきだろうか。リコト先生が説得してくれると言っていたが、先生のことだ旨い事説明してくれているのかもしれない。


 グイっと袖を引っ張られる。


「ん」


 コトハだった。色紙に筆記し、見せる。『いまから、案内するからついてきて』と。ぼくは頷き、シド学園長にお礼とあいさつをして、その棲み家暮れ荘と呼ばれる住むこととなる家に向かっていった。 

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暇なときに書く にぃつな @Mdrac_Crou

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