第29話 直感!予見!少女の竜視!
ジゼが『東』を捨て、手番はナキへと回る。
(これで……ドラが4枚か)
この時、彼女がツモったのは『六筒』。
4枚へと増えたドラを見て、ナキは頭を抱えた。
(まずいわね。また私にドラが寄りだしてるのかしら。でも――)
しかし、彼女はドラを抱えたぐらいで勝負を投げる雀奴隷ではない!
(今、私の手牌には『發』と『六筒』が二枚ずつ。そして、手牌には二枚の『中』と一枚の『西』がある。もし、仮に『六筒』と『中』を鳴くか暗刻できて……なおかつ『西』であがることができれば……
勝利への道筋の一つ。
それを頭のうちに描いて『三索』を捨てながら、ナキはこれまでの局を思い返した。
(――今、頭のうちに浮かべたドラ5枚。これ以上にドラが増えることになれば、また私が狙い撃たれる)
不安を胸に押し込めながら打牌を完了するナキ。
(できれば『中』を雀頭にして、『六筒』と『發』を三枚揃えるって展開は遠慮していわね)
そんなことを思う彼女の視線の先で――今、竜殺しの少女が牌をツモった。
(『七筒』ですか)
一目見て確認したそれを、少女は迷うことなく手牌へ加えることを選び、代りに『一筒』を河へ出す。
何故ならば――。
(
――たった今のツモで、少女の手牌には『七筒』が三枚揃ったからだ。
これで、少女以外の者が『七筒』を捨てれば明槓。
少女自身が『七筒』をツモれば『暗槓』ができる。
そして――。
(これで、またドラが増やせますね)
心の淵でそんなことを呟いて微笑み、少女は次にどちらのドラが増えるだろうかと考えた。
(……察するに今、お兄さんのドラは2枚。お姉さんは3……いえ、4枚くらいかな?)
ドラを抱える者からあがるという異能の特性ゆえか。
少女はドラに対してのみ働く直感をもって、二人が抱えるドラの数を予測する。
さらに――。
(そして。次に、
少女は次に開かれる王牌が指し示すドラを予測した上で、ナキの鳴いた牌――つまり、三枚の『三筒』を見た。
(ふふっ――そうなれば、お姉さんの抱えるドラは7枚。まだ戦う気はなくしてないみたいだけど……おもしろいお姉さん、いつまでもつのかしら?)
ナキの鳴いた『三筒』。
それがドラになると見越したうえで少女はナキへと狙いを合わせ始める。
だが――。
(あれ?)
ジゼが牌をツモった途端、少女の異能がドラの訪れを告げた。
(今、お兄さんもドラを引いたのかしら?)
それは自らの異能を自覚する少女にとっては、確かな直感だ。
しかし、『北』を捨て、打牌を終えたジゼから目線を外し、少女は再びナキへと狙いを定める。
(でも、今お兄さんが何かしらのドラを引いても、ドラが多いのはお姉さんの方よ。だって、かわいそうに……『三筒』が三枚もドラになるんだもの)
手牌のドラが増える……。
そんな確定的な未来のナキの姿を、今現在のナキに重ねる少女の視線。
それを受けながら、ナキは山から牌をツモった。
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