第28話 見極めろ!竜を呼ぶ牌!

 竜召喚儀式――槓カン

 簡単に言えば、同じ牌を四つ集めて作る面子である。

 だが、魔雀において各牌は四枚ずつしかないため、その四枚全てをいづれかの方法で集めるというのはなかなかに難しい。


 例えば、たった今。

 竜殺しの少女はジゼが牌をツモる前、『九萬』で暗槓をして『九筒』を捨てた。

 この時、誰かがこの『九筒』を鳴いていれば、後に『九筒』カンをする機会もあっただろう。

 だが、


 この時点で、ジゼ達は『九筒』をカンすることができなくなったのである。


 同様に、ナキが河へ捨て、誰も鳴かなかった『七索』。

 そして王牌にカンドラとして表になっている『白』と『五筒』。


 これらの牌も、この局中は四枚集めることができなくなったため、カンのできない牌になったと言える。


 また、ナキが鳴いた『三筒』も、彼女が加槓をしなければ、他の者が……そう、牌だ。


 そして、今――。


(これで……)


 ――ジゼが『九索』を捨て……誰も鳴かなかったことで、『九索』もカンができない牌となった。


(……ああ、これで俺から見える竜召喚儀式カンができる牌は)


 ジゼが捨てないと決めた有効牌である『南』を含め――。


(現状、少なくとも19種類。しかも、あの嬢ちゃんにはドラが来ないから、これに加えて現状ドラの『發』と『六筒』……そして、赤ドラが混ざる『五索』嬢ちゃんがカンできない牌になる。なら――)


 これで、ジゼから見える竜殺しの少女がカンできる牌は、16種類!


(でもって、今開かれているカンドラは二種類。赤ドラと合わせて10枚……まだ、まだあの嬢ちゃんにとっては物足りない筈だ)


 赤ドラ2枚にカンドラである『發』と『六筒』が8枚。

 それだけのドラでは、満足せず竜殺しの少女はまだ竜誘引儀式カンを仕掛けてくるとジゼは予想していた。

 そう、カンが可能な


 つまりこの時、ジゼは――。

 ドラが手牌に来ないという少女の性質。

 そして、ナキが鳴くことによってより多くの牌が晒されることを踏まえ。


 竜殺しの少女がカンする牌を、事前に特定できるのではないかと考えていた。


 だが。

 仮に竜殺しの少女がカンする牌がわかったとしても、それだけでは勝てない。

 ジゼ達には、24000点という点数をあがる制約がある。



 彼の思考中。

 手番の回って来たナキが山から牌をツモり、『二筒』を河へと捨てる。

 続く竜殺しの少女は、牌をツモった後に『四筒』を捨てた。


(これで、カンできる牌は14種類……)


 次いで、ジゼの手番。

 彼がツモった牌は先程、竜殺しの少女が捨てたのと同様の『四筒』だった。

 これは、少女がカンする牌への特定には近付かないものだ。


 だが!


 この時、彼の手牌の中には既に『四筒』が一枚と『五筒』が一枚。

 そして、ドラである二枚の『六筒』があった。


(これは……仮に『五筒』が来れば自風牌一盃口ドラ2。しかし――)


 自風牌一盃口ドラ2このままでは、ただの満貫8000点。

 三本場であることを踏まえても8900点だった。

 仮に、『赤五筒』あかウーピンで仕上げ、リーチ一発がついても跳満12900点。


(これじゃ、全然足りない……か。いや、だが――)


 風牌の他を筒子で染め、混一色の形にしたならばとも考える。

 しかし、それでも16900点。


(だめだ……まだ安い、やはり――)


 ――ドラに、頼るしかないのか?

 と、そんな自問が脳裏を過った時だった。


(待てよ……ど、ら?)


 自らが抱えれば抱える程、竜殺しの少女にアドバンテージを与えるドラ。

 しかし、点を高くするためには、今! この瞬間! 必要不可欠なドラ!


 そんなドラを、抱えずに手に入れる方法が一つあった!


 だが! 彼の頭に浮かんだのはひかえめに言って無謀な賭け。

 竜殺しの少女のカンを防ぎつつ、ドラを抱えずにドラを得る方法――。


 ひどく無謀な、だが最善の策!


(試す価値は、必ずある!)


 彼はこの無謀を選び、『四筒』を手牌に加え、『東』を捨てた!

 これで、竜殺しの少女がカンできる牌は――13種となった!

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