第25話 言葉を交わさずとも!
少女による『九萬』の暗槓!
つまり、新たなカンドラが開かれる!
少女の指によってめくられた王牌の一つ――それは『三筒』!
この瞬間から『四筒』がドラへと変わった!
そして、王牌の『三筒』を見た瞬間、ジゼとナキの表情に焦りが滲む。
何故ならこの時、二人の手牌の中には『四筒』が一枚ずつあったからだ。
現在、ナキの手牌にはドラが1枚……そして――。
(……ドラ、三枚か)
ジゼの手牌には『四筒』一枚に加え、赤ドラである『五索』と『五筒』が一枚ずつあった。
つまり、ジゼの手牌にはドラが3枚!
(まだ、竜殺しの少女の射程圏外ではあると思いたいが……)
ジゼの喉が空唾をのみ込む。
直後、竜殺しの少女が『南』を捨て、ジゼに手番が回って来た。
(これは、喜べない流れだな……)
彼がツモったのは今さっきドラになった『四筒』。
これで、ジゼが抱えるドラは4枚となった。
だが、問題はそれだけではない。
(まだ、自風牌が来ねぇ)
この局。南家であるジゼがあがるのに最低三枚必要な自風牌の『南』。
それが、未だ一枚しか手元に来ていなかった。
しかも、4枚しかない『南』のうち1枚を、彼は直前に竜殺しの少女によって捨てられていたのだ。
(このままじゃテンパイすらできないままドラを抱え込むことになるかな……いや、テンパイできないだけならいいが)
ジゼは、自身が竜殺しの少女へ
ふぅと細い息が漏れ、自然と視線がナキへと移る。
彼はナキと、彼女の捨て牌を交互に見つめた。
(ナキは俺が捨てた『四索』を鳴いてドラである『白』を捨てた。
24000点をあがらなけりゃ負けって状況で、初っ端からドラを捨てる。
これは、普通なら勝負を諦めたと取られてもおかしくない行動だ。
けど、ナキはそんなにおとなしい女じゃない。あの鳴きと『白』を捨てたことには意味がある)
ジゼは、すぅっとほんの短い時間まぶたを閉じ、つい先程のナキと少女の会話を思い返す。
『24000点以上……ドラもなしにあがれると思いますか?』
『ええ。思うわ』
そして、ナキの言葉を心の中で繰り返し、薄らと笑った。
(仮に……ナキがドラもなしに24000点をあがるつもりなら……『四索』を鳴いて作られる役は限られてくる。
例えば、当然のことだが、面前が前提の役は全て消える。
そして、自分で『四索』を鳴いて、竜殺しの嬢ちゃんがカンした時点で四暗刻や四槓子もない。
また、『白』がドラだから大三元も狙わない。
となると、後は彼女が鳴けて、既に鳴いた『四索』を活かせる高い手――。
それはおそらく、緑一色。
だが、それは仮にこの試合が残り5局じゃなかったとしても、故意に狙って出せるかわからん役満だ。
けど、お前なら……狙うよな?)
それは勝算の低い賭けだとジゼも心の底では理解していた。
だが、彼はナキの姿勢にのっかる!
ジゼは、ナキと同じようにドラである『四筒』を河へと捨てた!
(今、俺が自風牌で24000点をあがれる可能性は至極低い。テンパイできるかすら怪しいくらいだ。だが、ナキは違う。彼女はきっと勝負手を揃えてくる。なら……彼女が
河に二枚目のドラが出た瞬間。
ナキと竜殺しの少女――両者の表情には対照的な違いが表れた。
また、ナキへと手番が回る!
(ジゼ……それは、あんたなりの意思表示ね?)
ナキは山牌から二枚目の『發』をツモった後――。
(あんたは私に乗って――あたしに賭けた訳だっ! それって、案外気分いいわよっ! ジゼっ)
――迷うことなく『四筒』を捨てた!
これで、河に3枚のドラが出たことになる。
しかし。
自らが抱えさせたドラである『四筒』。
それが二枚とも捨てられていく様子を、竜殺しの少女はただただ落ち着いて眺め、山牌から『七索』をツモった。
その後、彼女は静かに思案する。
(……あのお姉さんは役満狙いだとして、お兄さんがドラを捨てたのはあたしからの直撃を避けるため、でしょうか?)
『力を示す』と、カッコイイことを言っておきながらなんて臆病者だろう。
そう思ってしまった瞬間、彼女の中にあったジゼへの関心は良くも悪くも急に薄まってしまった。
(でも、すごくカッコ悪いけど……正しいです。それに、あたしもお兄さんからあがるより、あのお姉さんが本当に役満を揃えてこれるのかという方が気になりますし。けど……)
ナキがこの状況で、本当に役満を揃えにくるのか――。
また、揃えに来るならどこまで揃えられるのかを楽しみにしながら、彼女は自分が負けるという可能性を塵程も考えてはいない。
少女は河に捨てられたドラを見つめ、ひぃ、ふぅ、みぃと心の中で数を数える。
(捨てられたドラが……三枚、いえ――)
彼女が不必要だと判断した『五筒』を捨てた直後。
山から牌をツモったジゼが赤ドラである『五索』を捨てた。
(これで、4枚……やっぱり、このままだと二人からあがれなくなってしまいそうですね)
それが、まるで可笑しいことだと言うように少女は笑い、彼女はナキが牌をツモる姿を見ていた。
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