第22話 見極めろ!ドラの罠!
竜殺しの少女が暗槓をした直後、自身の手番が来たジゼは『五筒』をつもった。
赤ドラではない、ただの『五筒』だ。
だが、だからこそ彼は、ひどい胸騒ぎを覚える。
何故かっ――!
(ドラが……全く来ねぇ)
今、ジゼの手牌には先程ドラになったばかりの『一索』が一枚あるだけだったのだ。
現在、ドラは『一萬』『一筒』『一索』そして赤ドラの計14枚。
それだけドラがあって、たった一枚しか自分の手元に来ていない。
この状況が指す事実――それは、自身の相方であるナキにドラが集まっているということだ。
確定的ではない、だが、おおよそ事実であろう想像。
しかし、それがわかっていながらジゼには今、何もできなかった。
(くそ、まだ自風牌である『西』が二枚しかない。しかも……このままだとあがれたとしても安手――とても24000点には届かない)
この状況で彼にできることと言えば、せめてナキの手を進めるために彼女が鳴けそうなところを捨てることだろう。
それは、ジゼ自身もよくわかっていた。
(今、もし仮にナキにドラが集まっているのだとしたら……あいつはひどくやばい状況だろう。だが、これはチャンスでもある。ドラが集まっている状況でナキが上がれば、24000点。倍満もしくは三倍満をあがることだって難しくはない筈だ…………なら)
ごくりと唾をのみ、彼は『一索』を河に捨てた。
直後!
「ぽ、
ナキは、相方のパスを見逃すことなく鳴いた!
(ジゼ、やるじゃないっ! よくぞ、よくぞ
『一索』を鳴き、不必要である『四筒』を捨てる。
すると、ナキの手牌は三色同刻
(まだ、やれる! 勝てる!)
薄れかけていた勝利――。
彼女はそれを、再び手の内へと引き戻す!
相方との連携があってこその、攻撃的な鳴き。
そんなナキ達に対して、続く竜殺しの少女の打牌はおとなしかった。
少女はナキの鳴きなど、まるで問題にはしてないとばかりに涼し気な顔で牌をツモり、淡々といらぬ牌を捨てた。
河に二枚目の『東』が出る。
続くジゼにも大きな動きはなく、彼は『六筒』を捨てた。
そして、再びナキに手番が回る。
彼女がツモった牌、それは――『七索』だった!
(そうか――これも、選択肢の一つだったわね)
この瞬間! 彼女は三色同刻を
だが、喜んでばかりもいられなかった。
現在、彼女の手牌は『一萬』『一筒』『一索』を三枚ずつ。
そして、『四索』と赤ドラである『五索』に『七索』が二枚と不必要な『八筒』だった。
これは『三索』と『六索』の両面待ちということになる。
本来であればあがり牌が8枚ある形だ。
だが今、ナキのあがり牌の一方である『三索』は全て竜殺しの少女が槓して消費しているのだ。
つまり、あがり牌は『六索』のみ!
河に『六索』は一枚も出ていないから、
ナキの心の隙間より生じる不安。
万全とは言えない両面待ちでの
牌を切る手に、迷いが出る。
しかし――。
(形はどうあれ……
彼女は自らが鳴いた『一萬』と『一索』を見た。
(私はナキ。鳴けば鳴く程あがりへの道を許された、そういう祝福を与えられた雀奴隷……ならっ! 何を臆することがあるっ!)
ナキは『八筒』へと手を伸ばし、ギラリと瞳を光らせて勝負をかける!
(あがれば36000点! 東一局で、私達の勝ちだ!)
ナキの打牌! 河に『八筒』が出る!
そう、河に『八筒』が出てしまった!
「
鈴を鳴らすような可愛らしい声で放たれた宣言。
だが、それは毒を塗った矢じりのように、深々とナキの聴覚に刺さる!
「白のみ、2300です」
竜殺しの少女、彼女もナキと同じように既に
それも両面待ち――『五筒』と『八筒』で……。
この瞬間、ナキのドラ10を抱えた三色同刻は露と消えた。
そして、彼女は思い知る。
竜殺しの少女が出した条件――24000点をあがれという意味を。
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