第17話 竜種狩り!

 トカゲ  25000点 親

 セイメエ 25000点 南

 竜人   25000点 西

 少女   25000点 北


 持ち点、各25000点。

 少女を三人の竜人が囲む形で始まった東風戦はドラ『八萬』でトカゲの親から始まった。

 そして、開始早々トカゲは野次馬たちを沸かせる!


(そうだっ! ドラは、ドラは来るのだっ!)


 初っ端から、彼の手牌には八萬が3枚来ていた。

 しかも、それでけではない赤ドラである五萬も彼の手にあったのだ。

 つまり、配牌時点で既にドラ4!

 さらにっ――!


(来たっ! そうとも、来るのだ!)


 一巡目のツモ! 八萬!

 これで、彼の手元には5枚のドラ!

 だが、そこでは終わらないっ!


龍召喚儀式カン!」


 彼は、迷うことなく鳴いた!

 王牌の一枚が開かれ新たなドラが表示される!

 表になった牌は『一筒』! つまり『二筒』が新たなドラとなる!


 この時、またトカゲは自らの力が衰えていないことを確信する!

 何故か! 彼の手牌には、二筒があったからだ! それも二枚!

 だが、まだ終わらないっ!


 トカゲは龍召喚儀式カンしたことにより、王牌から一枚の牌をツモる!

 ツモった牌は、二筒!

 これで、トカゲの手牌には合計で8枚のドラが集まった!


 さらに、いらぬ牌を捨てたところで彼のシャンテン数は2リャンシャンテン

 上々の立ち上がりと言っていいだろう。


 しかも、次に牌をツモった南家のセイメエが二索を捨てた!

 直後!


呪文石多方奪取ポン!」


 トカゲが、捨て牌を鳴いた!

 彼の手はさらに進み! シャンテン数は1イーシャンテン

 テンパイまで目前!


 この瞬間、彼はあがる自分というものを考える!


(進む! 手が進むぞ! 現状のままタンヤオであがったとしても24000点! あの娘を、瀕死の状態に追い込めるっ!)




 そして、トカゲがポンした鳴いたことにより再びセイメエがツモる。

 セイメエは牌を捨てる直前、傷を負いながらも未だ戦意を失わないトカゲを見た。


(トカゲ様……その手、良いのですね。まだ、我々が尊敬してやまないあなた様は、負けてはいないのですねっ)


 トカゲに対する信頼と尊敬の眼差しをセイメエは向ける。

 だが、その一方で彼は不安も感じていた。

 しかし――。


(はじめは、あの小娘に負けた我々の敵討ちだと、軽い気持ちでいらっしゃった。だが、あの娘の――妙なあがり方の前に、面妖な負け方をしたあなた様は固執した。結果、これまでの惨敗。しかし、あなた様はまだ勝つ気でいらっしゃる!)


 まだ、彼は自らが尊敬する男の勝利を疑ってはいない。

 これまでの惨敗を覆す一勝!

 その一勝を信じて、彼は牌を捨てる。


 また、セイメエと同じように、若い竜人もトカゲに対する尊敬の眼差し、勝利を信じる心をもって牌をツモっていった。


 だが――。


攻撃発動条件成立宣言リーチ


 北家である少女に順番が回った途端。

 彼女は、彼らの信頼――勝利への渇望を鼻で笑うように、リーチ棒を掲げる。


「なっ――バカな」


 当然、男達の顔は驚愕に染まった。


 早々のリーチ宣言。

 トカゲが鳴いていなければダブルリーチだったかもしれない手牌。


 トカゲの目には少女が今しがた捨てた『南』のみが映る。

 回って来るトカゲの手順――ツモった牌は赤ドラの五筒。

 シャンテン数は変わらない。

 だが、またドラが増えた! これでドラは9枚!

 しかし、喜ぶことなどできなかった。


 今彼が考えるのは、一体何を捨てるか!


 彼の手牌に『南』はない。

 つまり、現時点でトカゲに安牌はないのだ。


(こんなもの……なにを捨てればいいっ)


 先程までの余裕は消え失せた。


(いや、落ち着け……あたるはずがないっ)


 心ではそう思いながら、彼を襲うのはこれまでの敗北。

 圧倒的負のフラッシュバック!


(ワシにも勝ち筋は……ある筈なのだっ)


 くじけそうな心を必死に奮い立たせ――彼は、自らの勝利に必要のない牌。

 九索を祈るような気持ちで捨てた。


 瞬間――!


竜殺、完了ロン


 容赦のない先制がトカゲを襲い。

 同時に9枚ものドラを抱えた彼の手はこの瞬間無に帰した!


「リーチ一発場風牌一盃口……8000点。残念ね、竜のおじ様?」


 トカゲ  17000点 親

 セイメエ 25000点 南

 竜人   25000点 西

 少女   33000点 北


 まだ、勝負は始まったばかりだ。

 だがこの時、竜人達の中で、なにか勝利を得るに必要な何かが……砂城のように崩れ去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る