竜殺しと呼ばれる者
第9話 ドラゴンキラー!
ドラ。
名の由来がドラゴンだといわれるそれは、魔雀において重要な起爆剤である。
例えば、1300点の自風牌であっても、ドラが1つあれば2600点になる。
2つあれば5200点。
3つあれば8000点。
つまり、1300点の安手であってもドラが3つあるだけで8000点の満貫となることもあるのだ。
故に、ドラを多く抱える者はおのずと脅威となる。
仮に、ドラを自由に支配することのできる者がいたとするならば。
その者を龍の支配者、あるいは龍そのものとして恐れても恥じることはないだろう。
それほどドラの持つ力は大きいのだ……だが。
もし、もしも……そんなドラを抱えるものを狩ることに長ける者がいるとするならば……。
その者こそ、『竜殺し』と称され、真に畏れられる存在だと言えるのかもしれない。
◇
竜人。
巨大な竜に仕える兵として生まれたともいわれる戦闘に長けた種族がいる。
彼らは武器を扱うことだけでなく、格闘術にも長け、また魔術にも深い理解があった。
そんな種族ならば当然、魔雀術にも関心は高い。
特に神龍の元を離れ、魔王の配下として堕ち、戦いを望む者ならばなおのことその気はあった。
「ははは! よいのか? そんなに鳴いてしまって、ほらほら。また我の牌がドラに化けたではないか」
機嫌よく笑うのは竜人のセイメエ。
彼は自身と他の者が
(ははっ。笑いが止まらん。今日はよくドラが来るっ)
王牌の三筒、二索、中、八索と手牌を見比べ、セイメエは顔がにやけるのを止められなかった。
(三索のポンでドラが三枚……くくっ)
(東の暗槓でドラが四枚……はははっ)
(さらにどこぞのバカが
索子の六と九。
どちらが来てもあがれる両面待ちという状況に、セイメエの心は踊る。
六索であがっても16000点。
ドラである九索であがれば24000点。
やがて来る大勝の予感に、セイメエの口元は緩んでいた。
だが――。
「
「なっ――なにぃっ!?」
彼の倍満……あるいは三倍満となるはずだった多くの
「タンヤオのみ……1300点です」
点数申告を終えた少女は、竜人のセイメエに笑いかけると。
「すみません。ドラさんがたくさんいたのに、こんな手であがってしまって……」
彼に詫びた上で――。
「でも、ドラのいないあたしの安手に振り込んで……まだ、よかったでしょ?」
――そう親し気に……あくまで親し気に笑った。
「あ、ああ……そうだ、な」
しかし、セイメエは少女のあがりが安手だったことに安堵しながら。
(この娘……あれだけカンドラが表になっていながら、一枚もドラをもっていなかったのか)
彼女の手が安かったことに……なにか、言いようのない異様さを覚えていた。
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