第6話 雀奴隷の真実!
「君が、雀奴隷!? 俺と、同じ?」
信じられなかった。
雀奴隷は魔雀に負けるための奴隷の筈だ。
だからこそ、俺はこれまでザドリエや他の魔族にいいように痛めつけられ、まともに攻撃発動条件成立すらできかった。
しかし、ナキは違う。
彼女はまるであの場の支配者のように振る舞い、自由気ままに捨て牌を鳴き、流れるようにあがっていた。
そんなナキが俺と同じ雀奴隷だなんて、俺には信じようがなかった。
しかし、声も出せなくなる俺を見つめ、ナキは試すように笑う。
「もしかしてあなた、雀奴隷は魔雀で痛めつけられるために存在だと思ってない?」
「まさか、違うっていうのか?」
「ええ、違うわ。あなたの予想はオオハズレ」
彼女はその思い違いを指摘せんとばかりに、胸を張りながら俺を指差して口を開いた。
「いいっ? 雀奴隷とは魔王、魔族の奴隷を指す言葉じゃなく、魔雀そのものへの隷属を強制される者なのよ!」
「え?」
魔雀、そのものへの隷属?
「ひょっとして、牌魔国で新たに誕生した新興宗教かなにかか?」
「違うわよ!」
ついこぼれた疑問を力強く否定すると、ナキは足りなかった言葉の埋め合わせを始める。
「いいっ? 他の国じゃどうか知らないけど、ここ牌魔国では魔雀牌である呪文石に意志があるというのは常識よ? 呪文石とは魔力を秘めた石の集合群ではなく、あくまで何かと共生しなくては生きて行けず、個々では微弱な力しか持たないとても小さな存在達の集まりのことを指すの」
「とても、小さい? 妖精みたいな?」
「いいえ。妖精なんかよりももっと小さい。そうね、あえて言葉にするなら目に見えない微小生物と言うところかしら?」
ウンウンと自身の言葉に納得するとナキは説明を再開する。
「普段、というよりこれまであたし達はその微小生物を無意識の内に使役することで魔雀術を行っていた。雀奴隷になる前のあたし達は無意識的に微小生物の支配者だったわけよ。でも?」
「今の俺たちは、これまで使役してきた微小生物達より下の立場にいる、ってことか?」
ナキが「そういうことっ」と何かを達成し、肯定するように笑った。
「つまり、今の私達は魔雀術を行うために、微小生物にお願いする立場にいなきゃいけないのよ」
「それって、具体的には何をすればいいんだ?」
新たな疑問が浮かぶ俺に、ナキは「決まってるじゃない」と前置く。
「微小生物達の打ちたいように魔雀を打つのよ!」
簡単なことだと言うように笑うナキを見て、俺は彼女の魔雀スタイルを思い出した。
「もしかして、君が魔雀を打つ時に必ずと言っていいほど鳴いていたのは、微小生物がそのスタイルを好んでいるから?」
「そうそう! わかってきたじゃない!」
「つまり、俺も君と同じように鳴いて鳴いて鳴きまくればいいっ!」
答えに辿り着いた!
と、思わず声がはずんだ瞬間。
「はい、だめ! 間違い!」
ナキは冷水を浴びせるように指摘した。
「私と同じようにやってもだめよ。微小生物が私に許したことをあなたにも許すとは限らないでしょうが」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
またもや答えがわからなくなった俺に、ナキは再び「決まってるじゃない」と前置き。
「探すのよ! あなただけに許された魔雀のスタイルをっ!」
簡単なことだと言うように笑ってみせた。
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