第5話 ダークエルフの誘い!その正体!
清老頭。
一と九の呪文石のみで構成される
48300点の直撃をくらい、ザドリエは一瞬で一位の座から陥落、ハコになった。
「なっ!」
「なっ!?」
「なんだとおおおおおっ!?」
俺、ゴブリン、そして観戦していた者達は皆驚愕!
「ふんっ……ゴミ手ゴミ手と、油断するからよ。バカね」
直後、決闘空間の周りにいた見物人達からは歓声があがる!
「うおおおおおっ! イカサマ和了のザドリエが!
「そ、そんな……」
ザドリエの腰ぎんちゃくをしていたゴブリンがその場に崩れ落ち。
「君、すごいんだな……」
幾人もの魔族から賞賛の声が飛んで来る中、そんな言葉をナキに告げた。
すると。
「そんなことより、私について来て」
彼女は、俺の手をぐいと引っ張り、
◇
雀巣の奥は薄暗く、まるで牢屋を思わせる。
ナキに連れられて歩く通路も狭く、二人で並んで進むにはつらい。
だが、そんな中を――。
「お、おいっ」
「…………」
ナキは一声も発さず、黙って俺を連れ歩いた。
すると、彼女の進む先に小さなドアが現れる。
普段使いするには不便そうなドアだが、ナキはそのドアを開き――。
「うおっ」
場所がひらけた瞬間、俺をそこへ放り出した。
「さて、ここなら誰にも邪魔されないわね」
よろめく俺に対して特に謝罪の言葉もなく、彼女は一人愉快そうにニヤリと笑みを浮かべ。
「貴方、魔王に興味はないかしら?」
そんな……誘いとも思えない誘いを口にした。
魔王に、興味はないかだって?
一瞬、自分の耳を疑った。
しかし、ナキの表情は真剣そのもので、冗談を言っている感じはない。
だから――。
「ああ、そうか。魔王を倒すことに興味はないかって意味か?」
俺は、彼女の言葉を自分なりに解釈してみた。
だが。
「少し違うわね。私、あんたに次の魔王になってもらいたいの」
彼女の真意は冗談にしか聞こえないものだった。
「いやいやいや! ちょっと待て」
「なによ?」
「俺は今こそ魔王に負けて雀奴隷になってるが、これでも元勇者だぞ?」
「だから?」
きょとんと首を傾げるナキに、俺は前のめって再度告げる。
「打倒魔王の話を振って来るのはわかる。だが、その後魔王にならないかと誘うのはどうなんだ?」
「なによ? 同じことでしょう? 魔族は強い者に従うのよ? 魔王を倒したなら、そいつが次の魔王になるのは当然じゃない」
「いやいや、だから俺は魔王になる気はないんだって!」
「……つまり、自分が魔王を倒した暁には魔族全員を皆殺しにするってこと!? まあ、現魔王以上の鬼畜じゃないっ! 王の責務を放棄する気っ?」
「だから! どうしてそうなる!」
「あら? そういう話じゃないの? 民がいなければ王は生まれない的な」
得心がいかない様子のナキから目をそらし、俺は「はぁ」と溜息をこぼす。
「俺は元々、魔王を倒した後は自分の国の姫様に全てを任せる気でいたんだよ」
「なんだ……勇者なんてやってるからどんな奴かと思えば、欲がないのね」
「王って身分が性に合わないだけさ」
真意を隠したいがために口を衝いて出た言葉。
それを聞くとナキはどこか落胆したように俺から目を逸らした。
しかし。
「まあ、いいわ。欲のなさ、志の低さには目をつむりましょう。」
彼女は気持ちを切り替えるようにつぶやいた後。
「私にとっては魔王と敵対する意思があるってだけで貴重だもの」
不敵な笑みを浮かべ、ぎらりと野心に瞳を光らせて俺に手を差し出す。
「あなた、私と共闘なさい。そしたら、もう一度魔王と戦うチャンスをあげるわ」
自信に満ちた誘いの言葉。
正直、魅力的な誘いだと思わないでもない。
だが――。
「いや……やめておくよ」
痛めつけられた犬のようにうなだれながら、俺は首を振った。
「君がどこまで知っているのかは知らないが、魔王の恐ろしさを俺はこの身で味わった。呼吸をするように役満をあがる力。まともにやって勝てる相手じゃない……しかも、元の俺ならともかく今の俺は雀奴隷に堕とされた身だ。並の魔族を相手にたったの一度も
情けない答えだ。
心の中で自分を罵倒し、俯瞰的に己自身を見つめる。
けれど。
「なんだ、そんなこと?」
ナキは些末なことだとばかりに肩をすくめ、落胆でも、失望でもなく、呆れからくる視線を俺に向けた。
「そんなことって……致命的だろう? この
「そんなことないわよ? あなた、勘違いしてない?」
「何を?」
「雀奴隷でも、普通に魔雀で勝てるのよ? だって、私も雀奴隷だもの」
この彼女の一言は、失意にのまれ、敗北に身を染め切った俺が飛びつくには十分すぎる餌だった。
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