第4話 鳴け!あがれ!ゴミ手連続和了!
「本気だと?」
負け惜しみをと言うようにザドリエは顔をしかめた。
しかし――。
「さあ、いくぜ! 一本場あっ」
東一局の一本場が始まり、次の呪文石が配られた途端!
ナキの纏う雰囲気が変わった。
ビリビリと肌を刺すような緊張感が、下家のナキから伝わって来る。
だが。
(気付いていないのか?)
彼女の雰囲気の変化は俺にしかわかっていないようだった。
そして、ここから俺は彼女の本気を垣間見ることになる。
配牌ウーシャンテンから少しでも
しかし――。
「
「えっ?」
俺が――いや。
「
「また、鳴きやがった!」
誰かが呪文石を捨てる度、彼女は鳴き――捨てられた呪文石を自分のものにしていく。
まるで、ナキに必要な呪文石を俺達が捨てさせられているのではと錯覚するほどに、彼女は鳴き――。
「くそ。調子狂うぜっ」
「
――華麗にあがっていく。
「なにっ!?」
「白のみ……1000点の一本場は、1300」
点数申告を終えても、ナキは顔色一つ変えない。
だが、親番を流されたザドリエはひどく機嫌が悪くなっていた。
「そんなゴミ手で――俺の親番がっ」
奴は、くやしいというよりも、ただただ苛立ちが募ったという声を漏らす。
しかし、俺はザドリエとは違い、ただの安手であがっただけの彼女に魔王にも匹敵する底の知れなさを感じた。
「さあ、続けましょう」
ザドリエ:35700点 (親)
ゴブリン:21000点
俺 :1000点
ナキ :22300点
その後、ナキは俺達を……いや。
「中のみ、1000点」
「混一色のみ、2000点」
「自風牌、場風牌……ダブ東で2900」
ザドリエをあざ笑うかのような連続和了を披露した。
どのあがりも安手ばかり、だが彼女は4連続和了全てをザドリエからあがって見せたのだ。
まさに狙い撃ち、気付けば安手ばかりをあがっていたナキは、一位であるザドリエとの点差を1600点にまで縮めていた。
しかも、彼女は未だに攻撃の手を緩める気がない。
ザドリエ:29800点
ゴブリン:21000点
俺 :1000点
ナキ :28200点 (親)
「こいつっ、ゴミ手ばかりのくせによおっ」
ちまちまと点数を削られたせいか、ザドリエの苛立ちは最高潮に達しているように見えた。
だが、頭に血がのぼった奴の様子を見て、ナキはおもしろくもなさそうに鼻で笑う。
「ふん。ゴミ手の何がいけないの? あがればいいのよ……それよりも、あんたわかってるのかしら?」
「あ゛?」
「ここからは、私の連荘なのよ?」
そして、彼女はまるで自身が支配者であるかのように呟いた。
「さぁ、行きましょうか……一本場」
そこからは、鳴きの連続だった。
「
一巡目! ナキは俺の捨て牌から一萬を鳴く!
「まだ、
続いて、対面にいるゴブリンからは九索を!
さらにっ――。
「もうひとつ、
ザドリエが捨てた一索を鳴いた!
「ええいっ! ぽんぽんぽん! うるせぇんだよゴミ手女!」
しかし!
ナキが呪文石を切った直後、怒り狂ったようにザドリエは叫び。
「これで、リーチだあっ!」
奴は一筒を捨てながら、荒々しく宣言した。
「……」
「なにっ」
憎い敵である筈のザドリエだったが、俺は――この時ばかりは奴に感心してしまった。
奴は、この場を完全に支配しているかのようなナキを前に、これまでの彼女に匹敵する速度で
ナキの実力は確かなものだった。
正直、俺に雀奴隷の制約がなかったとしても勝つのは容易じゃない相手。
そんな彼女を前に、奴は見事にリーチをかけた!
だが――。
「グハハ……チマチマチマチマ刻みやがってよぉ。俺はお前みたいなちまっこい魔雀をする奴が大っ嫌いなんだ。連荘だと? 笑わせるんじゃねえ! ここまで何点取ってようが関係ねえ! この一回でまた突き放してやるよおっ!」
「
「なっ――バカなッ」
それでも、ナキの方が速かった。
彼女は、ザドリエの捨てた一筒であがったのだ。
それもっ!
「清老頭……」
特大の
「48000の一本場は、48300点」
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