第3話 雀奴隷に課せられたペナルティ!

「なんだ?」


 ザドリエはダークエルフの少女に訝し気な目線を送る。

 しかし、「ああ、そういうことかあ」とこぼすとニタリと笑った。


「嬢ちゃん、おめーもこいつをいたぶるのに参加したいってことだな?」

「ああ! そいつはそうだぁ」


 ザドリエの言葉で納得したようにゴブリンが頷く。

 だが、ダークエルフの少女は「はぁ」と溜息を吐くと。


「バカ言わないでよ」


 彼らの誘いを一蹴して、決闘空間を開いた!


「私はね、あんたらの魔雀はぬるくて見てられないって言ってんの」

「なんだと!」


 激昂するザドリエをよそに、ダークエルフの少女は俺へと向き直る。


「協力なさい。そうしたら助けてあげる」

「君は?」


 問いかけた時、彼女はもう俺を見ていなかった。

 だが。


「ナキ……私は、ダークエルフのナキよ」


 静かに彼女は名を告げる。

 直後、俺、ナキ、ザドリエ、ゴブリンによる東風戦が始まった。




 ◇


 東風戦という決闘空間では各決闘雀士に25000点の命が与えられる。

 決闘中、俺達は呪文石を組み合わせて攻撃魔法を発動し、点棒を互いに削り合わねばならない。


 だが、それは通常の決闘ルールだ。


 俺は、あくまで雀奴隷。

 雀奴隷は負けるのが仕事……つまり――。


 ザドリエ:25000点 (親)

 ゴブリン:25000点

 俺   :5000点

 ナキ  :25000点


 負けやすいように、点数制限がされている。

 そればかりか、雀奴隷には配牌のシャンテン数が必ずウーシャンテンかローシャンテンから始まるようになっていた。

 一説によれば、配牌ウーシャンテンであがれる確率は上級者でも15%ほど。

 見る者によれば15%もあるじゃないかと思うかもしれない。

 だが――。


「がはは! 自発装填完了ツモ!」


 その15%ですら、たったの半荘一回では数字のままで発揮されない。

 しかも、俺は雀奴隷。

 魔雀において、あらゆるペナルティが課せられているのだ。


「リーチ面前ツモ平和タンヤオドラ1……4000オールだ!」

「くっ……」

「……」

「ザドリエの旦那ぁ、少しは加減してくださいよぉ」


 ザドリエ:37000点 (親)

 ゴブリン:21000点

 俺   :1000点

 ナキ  :21000点


「グハハ……まぁたすぐに終わっちまうかなぁ?」


 下卑た表情を浮かべ、余裕だと言わんばかりのザドリエを相手に、俺の額を汗が伝う。

 だが。


「くだらないわね」


 ナキは、満貫高等攻撃魔法であがられたくらいじゃその涼し気な表情を崩さなかった。


「こっからは、本気で行くわよ」

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