逃げられない!
3分足らずで銀行に着いた
鏑木部長は国道沿いに車を止めて待ってるからと言う
銀行の駐車場に入れないのかと聞いたら
余計に時間がかかるからここで待っていると
私はそのまま銀行へ行き
カウンターの端の個別に仕切ってある席で
すぐに現金をもらった
担当の銀行員が大丈夫?と心配してたので
会社の者が車で一緒に来てると話すと安心して巾着袋の中に帯の付いた札束9個と半端のお札を入れてくれた
持ってみると本当に軽く量もそんなにない
他人からみたらリンゴ5個位が巾着袋に入っている感じにしか見えないだろう
14時45分銀行を出る
待っていた車に乗り込む
「すみませーんありがとうございます無事にお金おろしてきました」
「いくらおろしたの?」
「一千万円はありませんでした九百万と半端が少しでした」
話しながら車が動き出す
同時にカチャっとドアに鍵がかかる音がした
すると鏑木部長が携帯を出し
少し見た後こう言った
「涼子ちゃん…大変だ現場でトラブル起きた!すぐに、行かなくちゃならなくなった!悪いけど先に現場に行かせてもらうよ」
えっ?私は耳を疑った
先に現場に行かせてもらうよ?
おいおい何を馬鹿な事を
会社まで2~3分でしょ
こっちが先でしょ
どう考えたって!
「鏑木部長…すみません会社を先にお願いします2分で着きますよね?現場はそれからでお願いします」
しかし車は会社とは反対側に走りはじめている
「鏑木部長!冗談はやめてくださぁい
現場は後にして先に会社まで行って下さい」
「涼子ちゃんごめん、無理、大変な事になってるから悪いけど先に現場に行かせて」
そうしてる内に車は会社とは反対方向へどんどん走っていく
「鏑木部長…どこの現場なんですか?」
「◯◯邸」
「あぁ…リフォームの外壁工事の所ですね」
「そう」
「何が起きたんですか?」
「緊急事態」
あれ?会話も段々と短くなってる
いつものおしゃべりな鏑木部長と様子が違う
突然動悸がし始める
もしかしてもしかしたら?…
お金?それとも私目当て?
いやいやどう考えてもこの状況で私目当てってことは100%ないでしょ
まさかお金…奪う気?
とりあえず冷静になれ
それに確か一昨日のミーティングの時に
◯◯邸はお盆で留守になるので施主さんが帰って来てからまた工事始めるって言ってたし
行っても誰もいないんじゃ?
社長に連絡しなくちゃ…って携帯持ってきてない!
急がされてバック持ってこなかったんだっけ
まさかこれも計算なのか
とりあえず話しかけてみよう
「すみません携帯貸してもらえますか?社長に連絡しなくちゃ」
「あ、ごめん携帯電池ないさっきので切れちゃった!だから早く行かないと」
…完全にアウト!決まった!金目当て
急に手足が震えてくる
顔も冷や汗でおでこ冷たくなっているのが自分でもわかる
無意識に巾着袋を抱きしめた手に力が入る
指が真っ白に変色していた
やがて車は
鏑木部長が言う現場は林道を10分位登った所に数件家がある殆ど山奥と言っても良いくらい
国道なら信号待ちの時に飛び降りるって事も出来たが
こんな林道じゃ信号さえもありゃしない
走ってる途中で飛び降りるしかない
コンクリートじゃないぶん助かる可能性はあるよね
とりあえず車のドア開ける所を確認しておかなくちゃ
震える手でそーっとゆっくりドア部分を探る
「走行中はロック掛かってるからドア開かないよ!てか危ないよ」
「ひっ!いや!あの違います…窓…窓開けようと思っただけです」
突然話しかけられ完全に怯える私
鏑木部長には私がもう怯えてるのがわかってるだろう
また無言の時間が続く
現場まで30分あれば着くはずだが
既に銀行を出てからかなりの時間走っている
腕時計に目をやると時計の針がもう少しで16時になろうとしていた
会社では多分もう大騒ぎになってるに違いない
もしかしたら警察に連絡してるかもしれない
あっそうだ!事務員の篠原さんが見ていた
そう多分この車が出ていくのを見てるはず
だとしたら鏑木部長だってことはもう既にばれている
だから完全犯罪は無理
言ってみようかな?
鏑木部長に…こっちからふってみようか…
いや!変に刺激したら余計に危ない
それに走っている限り襲ってはこれないし
相手が無言貫くなら私も下手な事はしないで黙っていよう
もし…車が止まりかけたら…
その時は…
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