4#雌タヌキを探して
「くっそお・・・!何でこんなことに!」
タヌキのポクは、脚をひきづりながら川のせせらぎに向かってトボトボと歩いていた。
「うう・・・傷口にしみるう・・・!!」
ポクは、カラスにやられた傷やアザを川に浸した。
「僕がオレンジ色の風船を見つけなきゃ、あの雌ダヌキを怒らせなかったし・・・
嗚呼…雌ダヌキよどこいった…?」
タヌキのポクは、だいぶ腫れも引いた体をムクッと川から引きあげ、水気を震い落とした。
「おーい!雌ダヌキやーい!」
よたよたと、タヌキのポクは呼び掛けながら山の中をさまよった。
嗚呼…雌ダヌキ・・・
雌ダヌキ・・・
黒光りするぷっくりとした鼻、
小肥りな体、
ふくよかな尻尾、
忘れ難い…
どこにいる…
「おーい!雌ダヌキぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!」
「うるせえ!」
上空から、ドングリが振ってきた。
リスのグリボンが木の上で怒っていた。
「あのぉ、この辺で雌ダヌキ・・・」
「知らん!」
リスのグリボンは、そそくさと行ってしまった。
「けち!」
タヌキのポクは膨れた。
「おーい!アナグマのプチャ!!」
「なあに?ポク君。」
「『同じ穴のムジナ』でしょ?この辺で雌ダヌキの居場所解る?」
「ははっ!知るわけねーだろ?
それより俺は、可愛いベビーちゃん達の為に、食い物を調達しなきゃならないから行った行った!!」
アナグマのプチャは、ポクに向かって『しっ!しっ!』と追い払うジェスチャーをした。
「やっぱり知らないんだ…。」
タヌキのポクは、もう一度草原に出て、鼻を空に突き上げて匂いをかいだ。
雌ダヌキの匂いをする気配さえなかった。
ポクは雌ダヌキを探した。幻想でないことを信じて。
「ははっ!何やってるんだ?僕。
リスは木の中しか知らないし、アナグマは冬眠から目覚めたばかりだし・・・
ははっ・・・!!ははっ・・・!!
はあ・・・
うっうっうううう・・・」
突然、タヌキのポクの目から涙が溢れてきた。
「うわあああーーーん!!」
タヌキのポクは、大声で泣いた。
「うるせえー!このバカダヌキ!!」
森の動物達は、タヌキのポクを怒鳴った。
「僕は・・・僕は・・・」
ポクは目頭を押さえて、逃げていった。
『孤立』
タヌキのポクに、今ある現実がのしかかった。
愛した雌ダヌキを追いかけてきて、カラスやリスやアナグマどころか、全部の森の動物達を敵にまわしたことだ。
それでもいい。
あの雌ダヌキに逢いたい。
あの雌ダヌキに逢って、風船を逃がしたことの誤解を解きたい。
出来れば、あの雌ダヌキと結婚して子だからに恵まれたい・・・
「待ってろ…雌ダヌキ。」
タヌキのポクは涙を振り払い、山の中を雌ダヌキを求めてさまよった。
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