3#カラスにからかわれた雄タヌキ

 タヌキのポクは歩きながら、ずっとあの雌ダヌキのことばかり考えていた。


 「逢いたいなあ・・・」


 ポクの雌ダヌキへの思いは、まるで風船のように膨らみ、正にパンクしそうな位にパンパンになっていった。


 「どうしよう。」


 タヌキのポクは、不安に襲われた。


 「もし、このままあの雌ダヌキを見失ったらどうしよう。」


 ポクは、鼻面を空に突き上げて、くんくんと周りの匂いを嗅いだ。


 雌ダヌキも、あの風船の匂いもぜんぜんしなかった。


「かーかーかー!オーイ!タヌキくん。何探してるの?」


 空から、ハシボソガラスのカーキチとカースケがやって来た。


 「僕の嫁候補。」


 「へ?」カラスのカーキチは怪訝な顔をした。


 「じゃあ見た?タヌキ。」


「いるじゃん!ここに」カラスのカースケがは、ニヤリとした。


 「僕じゃなくて、他のタヌキ!!」


 タヌキのポクは赤面した。


 「知らんがな。」「見てませーん!!」


 カラスのカーキチもカースケも、そっぽを向いた。


 「あっ!カラスさん!君の脚に掴んでるのは・・・」


 タヌキのポクは、カラスのカーキチの脚に掴んだオレンジ色の割れた風船をくわえて引っ張った。


 「君、割ったな!!あのタヌキの風船を割ったな!!」



 ぐいーっ!



 「おい!タヌキ!!離せ!」


 カラスのカーキチは、割れた風船に脚の鍵爪をぎゅーっ!と掴んだ。




 ぐぐぐぐ・・・




 「あれ?この風船、吹き口結んである!!間違えた!!ごめん!!」




 びょーーーん!!ばちん!!



「いてえっ!」


 タヌキのポクが口から離した、割れた風船の破片は、ゴムの反動で鍵爪で掴んでたカラスのカーキチに激しく叩きつけた。


 「何するんだ!!この野郎!!」


 2羽のカラスは、タヌキのポクに襲いかかった。


 「ひえええっ!」




 つんつんつんつんつんつんつんつん!!




 カラスのカーキチとカースケは、タヌキのポクを激しく突っついた。


 「ごめん!悪気なかったんだ!」


 「ごめんで済むか!!」


 「俺達腹立ってるんだ!」


 「俺達はなあ!気が立ってるんだよ!」


 「雌カラスにお互いふられまくって、俺達合計200羽目だ!!」


 「この風船は、プロポーズに渡した風船を彼女に割られたんだ!!」


 「人間の結婚式から、飛んできたやつだ!」




 つんつんつんつんつんつんつんつん!!




 「そんなこと知らないよお!」


 2羽のカラスに突っつかれて、アザだらけのタヌキのポクは必死に逃げ回った。


 「ひえええっ!しつこい!」




 つんつんつんつんつんつんつん!!



 「もう我慢ならないよ!」


 Uターンしたタヌキのポクは、執拗に突っついてくる2羽のカラスに反撃に出た。


 がぷっ!


 ポクは、カラスのカースケの翼に噛みついた。


 「何しやがる!!」


 「僕、もうブチキレた!」


「このタヌキめ!!」


 もう一羽のカラスのカーキチは、タヌキのポクに鍵爪を剥き出しにして脚蹴りしてきた。


 「あうち!」


 ポクの口から、カースケの翼が離れた。


 「カーキチ、危ないとこすまん!

 この野郎!!」




 ギッタンバッコン!!ギッタンバッコン!!




 2羽のカラスとタヌキは、激しく大喧嘩を始めた。


 やがて・・・


 「覚えてろ!!」


 「覚えてやがれ!!」


 「きゅうううう・・・」


 タヌキのポクは、のびていた。



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