4#リスと風船

 「あっ!風船発見!!」


 ニホンリスのグリボンは、森の上空にフワフワ飛んでいる、紫色のゴム風船を見つけた。


 グリボンは、急いで木から木へととびうつり、飛んでいく風船を追いかけた。


 「おーい、グリボン!!何急いでるんだい?」


 他のリス仲間は、グリボンに問いかけた。


 「風船だよぉ!!ふ・う・せ・ん!」


 「はあ?あっはっはははは!!」


 「何が可笑しいんだ!!」グリボンは膨れた。


 「だって、風船なんかどこに?」


 他のリス達は、ニヤニヤと笑った。


 「だって、すぐ上・・・」


 リス達は一斉に空を見上げた。


 「あっ!!風船の紐に誰か・・・ネズミじゃね?」「ネズミいいいぃ!?」


 リスのグリボンは、ネズミが大の苦手だった。


 「ううう・・・くやじぃー!!・・・よし、あいつから風船を奪ってやる!!」


 「バイバーイ!せいぜい頑張ってね

ー!!」


 猛スピードで行ったグリボンに、リス達は笑いながら手を振った。


 「兎に角、あの風船を捕まえなきゃな。あ、そうだ!!」


 そこに、一頭のシカが現れた。


 「丁度良かった!!おーい!」シカのフラコにリスのグリボンは、呼び掛けた。


 「しまった!!角の無いシカだった!」


 リスのグリボンはつい、言ってしまった。


 「私が角の無いシカで悪かったね!!牝シカを舐めんなよ!!」


 牝シカのフラコは怒って、リスのグリボンを後脚で蹴り飛ばした。


 「うわー!!」


 落っこったところに丁度、ノウサギのドレミがいた。


 「おーい、ドレミやーい!!」


 「なあに、リスさん!!」


 「そこに角のあるシカはいませんか?」


 「いるよ。すぐそこ。で、何で?」「角を借りたいんだ。」「はあ?」


 「空に浮かんでる風船を取りたいんだ。」


 「どうやって?」ノウサギのドレミはリスのグリボンを質問責めにした。


 「だから、ええと・・・あっ!!」


 リスのグリボンは、目の前にゴム紐を見つけた。


 「これをシカの角に付けて、僕が風船に向かって・・・」


 「あっ、ちょっとまっててね!!」


 ノウサギのドレミは、通りすがりのシカのベニイに声をかけた。


 「いいよん!!」そこに、立派な角のある雄シカのベニイがやって来た。


 「じゃあ、俺の角にゴム紐かけて!風船取ったら、俺にも・・・いや何でもない!! じゃあ、俺の角にゴム紐かけて!風船取ったら、俺にも・・・いや何でもない!!じゃあ、右30度、上90度・・・てーーーーっ!!!」


 リスのグリボンは、ゴム紐の反動で勢い良く大空にフワフワ飛んでいく紫色の風船目掛けて飛び出した。


 「うわっ!!風船!」グリボンは風船に手が届くところまでもうちょっと・・・


 「あれ?」グリボンはもうちょっとのところで、こを描き、そのまま墜落していった。


 「うわーーーーーーーっ!!」


 ぐしゃっ!!


 リスのグリボンは、泥の山に見事に落っこちた。


 全身泥だらけのグリボンの目の前に、臭い空気を吐き出す豚鼻が迫ってきた。


 「やあ、リスくん!!」


 その豚鼻は、イノシシのブッピだった。

 それに、この泥の山はイノシシのブッピのお気に入りのぬた場だった。


 「そうだ!!」グリボンはひらめいた。


 「ねえブッピ。」


 「なあに?」


 「君の鼻の穴に僕を入れて、大空に吹き飛ばしてみて!!」


 「ええっ!?いいの?僕の鼻の穴はばっちいよ!!鼻水とか鼻くそとか・・・」


 イノシシのブッピは困惑した。


 「そんなこと構わないよ!!君の風船をすぐに大きく膨らませられるような肺活量を見込んでるから頼んでんの!!」


 「いやあ、照れるなあ。でも、何で?」


 「空に飛んでる風船を取りたいんだ。」


 「ふうせーーーーん!!!!


」風船が大好きなイノシシのブッピは、目を輝かせた。


 「どこどこどこなの!?」


 「あの向こう側!!」


 リスのグリボンは、木の影に隠れながらフワフワ飛んでいる紫色の風船を指差した。


 「おお!あれか!あれ?風船の先に何か??ネズミだ!」


 「今から僕はこのネズ公と戦いに挑んで風船を奪い取ってくる!」


 「おお!何て強欲さ!」


 「ん?」


 「いいや。こっちの話。じゃあ、俺の鼻の穴に入れや。」


 リスのグリボンは、イノシシのブッピの右の鼻の穴に体を潜り込ませた。


 「うう・・・ぬるぬるする。」


 「それ位我慢しろよ。俺だって鼻の息がお前さんで制限されて苦しいんだから!じゃあ、いくどぉーーーーー!」


 「左45度、高さ85度。打ち方よーい!」

 イノシシのブッピは、深く深く息を吸い込み頬っぺたとお腹を空気で満たし

て・・・



 ふんっ!!!!!!!!!!!



 ピョー――――――――――ン!と、リスのグリボンは、イノシシのブッピの鼻の穴からロケットのように勢いよく飛び出していった。


 「ばいばーい、リスくーん!気を付けてねぇ!」 


 イノシシのブッピは、吹っ飛んでいくリスのグリボンに前脚を振った。


 「うわあああ!ばっちい!ばっちい!」


 イノシシのブッピの鼻水と鼻くそだらけのリスのグリボンは、一直線に紫色の風船に向かって飛んでいった。


 「よし!風船取ったり!」


 風船の紐で体を結わえて飛んでいたクマネズミのチャブはいきなり飛んできたリスに仰天した。


 「お前は誰だい!・・・って獣臭いよお前!」


 「名乗る者ではないよー!大人しくこの風船を僕に渡すんだ!」


 「何をしやがる!」


 「この風船をくれ!」


 ネズミとリスは空中で取っ組み合いの大喧嘩を始めた。


 「僕はネズミは嫌い何だよ!ネズミが風船を持ってるなんて、生意気なん・・・」


 「何だとてめえぇぇ!!!!!!!」


 リスのグリボンの発言にマジ切れしたクマネズミのチャブは、グリボンの頬を渾身の力を込めて前脚で襲いかかった。


 バキッ!


 グリボンはチャブのグーパンチで激しく殴られ、風船の紐を思わず離してしまった。


 「うわあああああああああ!」


 リスのグリボンは、真っ逆様に墜落して行った。


 グリボンは、ふさふさの自慢の尻尾を広げてパラシュートにして安全に降りたいが、そんな暇はなかった。


 バシッ!ザザザザザザザ!ドスン!


 ・・・しばらくして気が付いたグリボンの隣には、あのリス仲間がグリボンの周りに集まっていた。


 「よお!!グリボンー!風船取れたかい?」


 顔が腫れ、なすりついた鼻水や鼻くそが体からまだ体から取れないリスのグリボンは、突然目からうっ・・・うっ・・・と涙が溢れて、やがて、


 「うわあああああああん!!」


 と、大声で泣き声をあげた。


 そこに、ゴム紐がまだ角に付けているシカのベニイと、まだ違和感がある右の鼻の穴をポリポリと右前肢で掻いているイノシシのブッピがやって来た。


 「おーいグリボンよお、ゴム風船は取れたかい?」


 「リスくん、あのネズミに勝てたか

い。」


 リスのグリボンは、ボルテージをあげ更に大声で泣いた。


 「うわあああああああん!!」


 周りのリス仲間やシカのベニイ、イノシシのブッピは異口同音に言った。


 「ドンマイ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る