第3話 外斜視

折角あれこれ受け入れ準備をしていたのにも関わらず、私は帰宅してから直ぐに熱発して40度くらいの熱が1週間続きました。


全く原因は不明です。

誰もその当時風邪もひいておらず、産後まだ1週間程度しかたっていたいところでこの強烈な発熱。

考えられるとしたら室内で飼っていた文鳥が原因の鳥アレルギーくらいですが、当時アレルギー疾患などは多分今ほど知られていませんでしたし、基本的に文鳥はベランダに置いていました。

だから人畜感染症の可能性も限りなく低いはずです。

因みにこの文鳥は兄が産まれた日と同じ日に孵化した文鳥でした。

この文鳥はメス。母の長兄が兄の誕生祝にとわざわざ買い求め、そして私が産まれる前に一度東京に出てきてその時にプレゼントして呉れたそうです。ピーコという名前がつけられていて、母に特によくなついていました。

そしてこの頃はまだ叔父からもらってませんが、母がこの文鳥のプレゼントを大変喜んで呉れたようなので叔父は私が産まれた時に今度はオスで私と同じ日に孵化した文鳥を捜して購入しいつ頃連れてきてくれたのかわかりませんが、私が物心ついた時にはもう文鳥は二羽飼われていました。


今のご時世なら何の躊躇いもなく母は病院に逆戻りして、兄は手のかからない子でしたから、同じマンションの仲良くしている人か、戸塚に引っ越してしまった社宅仲間の人のところへ預けるかしていたでしょう。


なぜ母や父の兄弟に預けないかと言ったらみんな関西に居るんです。


飛行機で行けばすぐですが飛行機代が今のような誰もの足に使える程安くはありません。新幹線は今と同じくらいの金額でしたが、それでも時間がかかります。


しかもこの時、タイミングが非常に悪い事に父の従弟が結婚式のお礼にと香川県から東京まで新婚旅行もかねてやってきたところだったのです。

結局、この父の従弟夫婦に兄を見てもらい、母は私を連れて入院したのです。


事情が事情なので兄を連れて父の従弟夫婦は東京観光に出かけて呉れました。


折角の新婚旅行が子守とは何とも気の毒な話です。しかも父の従弟夫婦の奥さんは母に代わって家事などをかなりやってくれたりしたようで、両親は本当にたすかったようです。兄は手がかからなくて父の従弟夫婦と一緒に東京各地の旅行に連れて行っても全く邪魔にならなかったばかりか、早く子供が欲しいという気持ちをつよくしたそうです。ある意味事前演習みたいな感じになったそうです。

だからかどうか知りませんが、結婚して1年たつか経たないかで長女が、その3年後に長男を設けています。


さて、母は私を連れて江東病院にかけこみましたが、江東病院では原因不明で熱を下げる対処療法しかできないからというので、順天堂大学病院か東京女子医科大学附属病院に江東病院から直送で送られたようでした。


ところが大学病院としては大手になるこれらの病院でも原因不明で、結局江東病院と同じ対処療法をするしかなく、母は毎日私の様子を見に病院通いをする羽目になりました。


父の従弟夫婦のうち旦那の方は当然有給をとって来京していたので、時間切れで先に高松に戻り、父の従弟夫婦の奥さんの方だけが、私が退院するまで兄の面倒と家事などを引き受けて呉れたようでした。


私のせいで折角の新婚旅行を台無しにされぶち壊されてしまいました。

私がこの事を知ったのはつい最近なんです。

実はこの父の従弟夫婦の奥さんが10数年前に他界され、その後父の従弟は亡くなった奥さんの荷物などをそのままにしていたのを思い切って断捨離したのです。

その時に兄を連れて旅行した時の写真などが出て来たそうで、それを両親に今更ながら両親に返そうとして呉れた時に、昔のそんなドタバタがあった話を思い返して、歓談しているのを聞いて初めて知ったのです。

私のせいでそんなひどい目に遭わされていたんですかと真っ青になって平謝りに謝りましたが、父の従弟にとってはとんだトラブルだったけどいい思い出でしたよと笑って当時の事を話して呉れました。

私も兄も当然全く覚えていないのですが、兄が父の従弟の奥さんが帰るときに従弟の奥さんの手を離さないでずっと固く握りしめて、ずっとお父さんと結婚してうちに居てといってしがみついていたそうです。

不倫を強硬に勧める2歳児のまた従兄弟には参ったよと

父の従弟は面白おかしく話して呉れました。


幸い結局原因は何だったのかさっぱりわからないのですが、1週間ほど入院して熱も下がりました。ところが、熱が下がった代償に外斜視になっている事にしばらくして両親は気が付きました。確かに産まれたその日の写真や、熱発する前の写真では私が目を開けている写真はロンドンパリの目ではありません。


熱発中に何度もひきつけを起こしていたので、それが原因だったのでしょうか。


とにかく、ただでさえ、生まれつきに左手首に黒い大きな痣という天然の入れ墨を入れてしまっている上に、どこを見てるかわからない視線の悪さとめつきの悪さを強化してしまいました。


元々不細工な子供が人相の悪さと目つきの悪さから態度が悪いと誤認されるような状況に見た目なってしまったのです。自分の意志とは全く無関係に。


この左手首の痣と外斜視という二つの外見上の異質感は私の幼少期、少年期、青年期に大きな影響を与えます。

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