第2話 如月の手紙
梅便りが聞こえる今日この頃、ご健勝のことと存じ、お慶び申し上げます。
行く逃げる去るとはよく言ったもので、あと数日で2月も終わろうとしています。あなたに手紙をしたためなければならないと思いつつ、筆をとるのがこんな時期になってしまいました。
この手紙が2月中にあなたに届けばいいと心から願います。
あなたの桜が咲く前に、今時期楽しめる花があります。梅です。今年は庭の蝋梅の、花が開くのが遅く。
花開いたかと思えば、鳥に摘まれて、花ごと地面に落ちてしまっていました。
かぐわしい香りが楽しめなくなり、少し残念でしたが、エサの少ないこの時期の、鳥の糧になったなら、それはそれでよかったのかもしれません。
そういえば、あなたの桜もよく雀が花を摘んでいましたね。花びらに交じって、五片そろった花を拾っては、押し花にしようと拾って帰ったことを思い出しました。
あの時の花はラミネート加工して栞にしました。それを眺めては、あなたの桜を妄想します。
ああ、今年は桜だけではありません。桜のそばに立つあなたも。
薄紅色に染まった世界に、
一人と一本が並んで立っている。
きっと美しい光景なのでしょう。
あなたの桜が花開く、春が楽しみです。
インフルエンザが猛威を振るっています。
あなたの桜のためにも、なにとぞご自愛ください。
またお便りします。
2月吉日
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