第10話 武術科の授業

選択科目を決めた翌日。


 今日は、武術科の授業がある日だ。魔法科や武術科は、他の選択科目の中でも人気の高い2科目だ。この2科目だけは、これから毎日の時間割に組み込まれている。

 この2科目は、継続して訓練することが大事だ。なので、毎日の時間割に組み込まれている。俺も師匠に毎日しごかれたもんだ。


 朝、Aクラスの教室に入るとラスクが席に座ってるのが見えた。机に顔を伏せている。こいつの事は、どうでもいいか。どうせクソ野郎なんだし。改心するなら別だが、心を入れ替えずこれからも悪事を続けるような奴のことなんてどうでもいいだろ?





 いつものように朝礼の時間が始まった。

 グラン先生は、寝不足なのかあくびをしていた。目にたまった涙を指でこすった。


「おっと、悪いな。少し寝不足でな。……今日から、魔術科、武術科の授業が毎日の時間割に組み込まれているのは皆知っているよな?Aのクラスの皆は、魔術科、武術科共にほとんどの物が履修することを選んだので、他クラスと合同になることはなく、Aクラスだけで受けてもらうことになった。ちなみに、武術科を担当する教師は担任の俺だ。あとでよろしくな」


 Aクラスのほとんどの者が武術科、魔術科を選んでいたようだった。考えてみれば、実力が物を言うこの学園では当たり前の結果なのかもしれない。Aクラス以外のクラスでも選択している学生がほとんどだろう。


 と、なるとAクラスがBクラスと合同にならないのは何故だろうか。もしかすると、Aクラスの学生が武術科と魔術科を選択している人が少ないということにならない限りAクラスは単独で受けることになるのかもしれない。


 Aクラスが単独で受けることを前提に考えると、綺麗にまとまることになる。【Aクラス】【BクラスとCクラス】【DクラスとEクラス】このように分けることができる。つまり、Aクラスは優秀な学生の中でも更に優秀であるため、多少他のクラスより優遇されているということが分かる。たぶん、そういうことなんだろうなぁ。






 朝礼の時間を終え、武術科の授業を受けるために闘技場に移動した。

 闘技場は、対戦を行うほかに武術科の授業で使われている。なので、放課後でしか学生は対戦を行うことができないのだ。


 その闘技場の更衣室……闘技場で対戦するときは準備室と言われていた部屋だな。そこで学園から支給されているジャージに着替えてから武術科の授業を受ける。制服の方が、魔法や衝撃に対する耐久性に優れているのだが、武術科の時間はそこまで危険な事はしないのでジャージに着替えることになっている。汗をかいて、この後の授業を気持ち悪い気分で受けないための学園側からの配慮だろう。


「うぉ、ガレア結構筋肉あるんだな」


 俺が制服を脱いで、ジャージに着替えようとしていたところ、右隣のロッカーで着替えていたチクアが俺の身体の筋肉を少しびっくりしていた。


 確かに師匠に鍛えられた身体は、動きやすく、力も出しやすい。だが、大きく主張するような筋肉をしているわけではないので勘違いしないでほしい。


「まぁ、それなりに鍛えているからな」


「ほう、中々引き締まった質の良い筋肉ではないか。これがお前の強さの秘密か?」


 左隣のロッカーを使って着替えていたアデクも会話に参戦してきた。アデクは俺の上半身を凝視している。ま、まさかコイツ……。いや、そういうわけではないだろう。


「お前は一々、俺のことを探ってくんじゃねえ!」


「フッ、別に良いではないか。これもまた一興よ」



 そんな感じで俺たちは、会話を弾ませながら楽しく制服からジャージに着替えた。


 ジャージに着替え、各々の武器を持ち、闘技場に出てきた。闘技場の真ん中にグラン先生が立っているので、俺達男子はグラン先生の周りまで歩いていった。


 しばらくすると、俺達とは反対側の更衣室から女子達が出てきた。女子達もグラン先生の前まで歩いてきて、Aクラス全員がそろった。


 グラン先生の前に男子勢と女子勢に分かれて、各々適当に立っている。


「よし、全員揃ったな。今日は初めての武術科の授業だ。お前らの魔法を使わないで戦った実力がどれだけのものか知りたいから、この時間は一人ずつ俺と模擬戦な。俺と模擬戦をしていない奴らは、各自で模擬戦やら練習やら色々やっててくれ。じゃあ、相も変わらず席順で俺のとこまでやってきてもらうぞ。アデクお前からだ」


「はい」


 グラン先生とアデクは、闘技場の半分を使って模擬戦を始めた。グラン先生は、俺が実技試験で戦ったときと同じ剣を使っている。アデクは、槍を使っていた。

 アデクの槍さばきは、様になっていた。俺からみても普通に上手く、強いと言えるだろう。




 アデク以外のAクラスの者達は、しばらくの間グラン先生とアデクの模擬戦を眺めていたが、次第にみんな自分たちの訓練や模擬戦を始めだした。


 俺もチクアとどうしようか話ていたところ、ルナともう一人女子が近づいてきた。


「よっす、ルナちゃん。と、サクヤさんだっけ?」


「はい。拙者サクヤ・ウエハラと申す者でござる」


 またキャラの濃い奴が現れたな。独特な喋り方をしているサクヤという子は、小柄なルナより頭一つ分ほど身長がでかく、薄いピンク色をした長い髪が印象的だ。鼻は少し小さめだが、目はくっきりとした二重で整った顔立ちをしていると言えるだろう。


「……ガレアと話したいらしい。私の新しい友達」


「はい!そうなのです!いや~、ルナ殿は、愛くるしく可愛らしいでございますなぁ!」


 サクヤはそう言って、ルナに頬ずりをする。ルナは、無表情なままだが、何となく嬉しそうだ。


 ところで、俺と話したいってなんだろうか。また、ルナとアデクみたいに対戦したいみたいな話じゃないだろうか。


「それで、そっちのサクヤって人は俺に何の用があるんだ?」


 サクヤは、『おお、そうでした!』と言い、ルナにしていた頬ずりをやめ、俺の方を向き、話し出した。



「先日、ガレア殿とラスク殿の対戦を見て、拙者、ガレア殿の剣の腕に感動しました!ガレア殿さえよければ、拙者に剣術のご指導を願いたいのですが……」


 ナ、ナンダッテー!!!



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