第5話 子豚に絡まれた

 液晶に【0】の数字が映っていた。

 あーあ、やっぱりな。

 周りの皆は、一斉に笑いだした。

 Aクラス最下位の人間が魔力量も最下位だったのだからな。こいつには俺がひどく惨めに見えるだろう。


「お前ら、静かにしろ。教室に戻るぞ。列に並べー」


 グラン先生がそう言うと、話し声は治らないものも、列に並び始めた。

 俺も、列に並ぼうと最後尾についた。


「あー、まぁ、ああいうこともあるさ、元気出せよ?」

「おう」


 チクアが困った顔をしながら俺励ました。

 まぁ、この結果は予想できていたから何も驚いてはいない。ただ、これからの学園生活に面倒ごとが起きなければいいなと、そう思った。



 教室に戻ると、グラン先生が明日の日程を話し終えた後、解散になった。

 時間は、まだ昼前。せっかくだし、クラスの誰かと昼食でも食べようか。


「ガレア、この後暇か?昼メシ一緒に食べようぜ」


ナイスタイミングで前の席のチクアが話しかけてきた。ちょうど、こいつでも誘おうと思っていたところだ。


「おう、俺も誰か一緒に食おうかと思っていたところだ」


「やっぱ、そうでなくっちゃな!」


 席を立ち上がると、まだ席に座ってボーっとしているルナの姿が見えた。ああ、こいつ友達作るの苦手そうだもんな。しゃーねえな。


「チクア、もう一人誘ってみてもいいか?」


「いいねぇ、数が多い方が賑やかでいい!もちろんOKだ!」


 チクアからのOKが出たことだし、ルナを誘うことにした。ルナの座っている席まで歩いていく。


「ルナ、昼食一緒に食べようぜ。あいつも一緒だけどな」


 そう言って俺たちの席で待っていたチクアの方を見ると、口を大きく開けて驚いた顔をしていた。なんて顔してやがる。


「……一緒に食べる」


「よし、じゃあいこうぜ」


 チクアが『こっちこい』と手でサインをしているのが見えたので、ルナより一足先にチクアのもとに移動した。

 チクアは小声で


「誘うって、お前、氷姫かよ!」

「ん?まぁ、友達だし」

「友達って……」


 チクアは、ルナが来たので内緒話を切り上げた。俺とルナに『いこうぜー』と言って、前を歩き出した。



 食堂までの道のりは、皆、一言も喋ることなく気まづい時間を過ごした。



 食堂に到着した。白と黒を基調としたデザインになっている。シンプルだが、品があり、落ち着く空間なのではないだろうか。


 ほとんどの席が既に座られている。運良く、空席の3つの椅子が置いてある丸いテーブルが見えたので、 そのなかの椅子に座って、ルナとチクアを手招いた。


 そのとき、横から3人の男らがやってきた。


「おい、ここは俺たちがとろうと思った席だぞ。離れろよ魔力量ゼロのガレア君」


 少し小太りの金髪の男が、話しかけてきた。後ろの二人もニヤニヤとした顔をして、こちらを見ている。

金髪のこいつは、Aクラスの奴だな。なんかこんな奴いた気がする。名前は覚えてないけど。


「ごめんな、子豚くん。こういうのは早い者勝ちだ。離れる気は一切ない」


 俺がそう言うと、子豚くんは顔を真っ赤にし怒りを露わにする。


「なっ、お前この俺をバカにしやがって……許さんぞ」


「先にバカにしてきたのは、そっちだろーが」


「俺は事実を言っただけだ!」


「俺も事実を動物に例えて言っただけだ」


「それをバカにするっていうんだろうが!」


「お互い様だ」


 低レベルな言い争いをしていると、チクアとルナがやってきた。

 ルナは相変わらず無表情だが、チクアは慌てて俺たちの仲裁に入った


「まぁ、二人とも落ち着けって。見てた限り、そっちのラスク君が席を横取りしようとしていたんだろ?それは悪いが譲れないよ。だけど、ガレアが無礼なことを言ったのは俺が詫びるよ」


 チクアは大人だった。状況を冷静に判断して、相手が納得するような言葉を選んだのだろう。

 それより、あの子豚くんは、ラスクって名前だったか。うん、そんな感じだった気がする。


 子豚くん改め、ラスクは、まだ怒りがおさまっていない様子だった。


「ふふふ、そうだ。良いことを思いついた。ガレア、明日、俺と闘技場で勝負しろよ。そうしたら、ここは穏便に引いてやるよ」


 ラスクは、ニヤニヤとした顔をしながらそう言った。勝負だぁ?なんで俺がそんなことをしなくちゃいかんのだ。めんどくさい。もちろん却下だ。


「ああ、それでいいぜ」


「なんでお前が言ってんだ!!」



 俺が断る前に、チクアが勝負を受けてしまった。こうなってしまうと、俺が無理に断ろうとしても意味ないだろう。やってくれたな、チクア。お前だけは許さんぞ。


「へへ、決まりだな。逃げ出すんじゃねーぞ」


 そう言って、3人は去っていった。


 なんか疲れたな。

 俺が一息ついていると、チクアが申し訳なさそうな顔をして『すまん!』俺に謝ってきた。

 こいつなりに、穏便に終わらそうと善処してくれたんだろうな。まぁ、少しなんだコイツと思ったが、水に流すことにしよう。

 謝ってきたチクアを俺は、快く許した。


「……お腹すいた」


 ルナがそう呟いた。

 なんか凄くシュールで面白かったため、俺はププッと笑ってしまった。

 チクアも同じだったようで、俺と同じように笑っていた。


「よし、じゃあ飯取りに行くか」

「そうだな」


 そう言って、俺たち3人は、食堂で昼食を食べて過ごした。

 それにしても、勝負かぁ。

 めんどくせえ……

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