第4話 魔力測定

入寮してから入学式までのんびりと時間を過ごしたかったのだが、隣人のマルクのおかげで少し騒がしい日々だった。教材等が支給されるので、学園の方に向かう時もマルクは俺についてきて、パンチラについて熱く語ってきた。なんなんだあいつは。

 しかし、マルクは変態という点を除くと非常に好青年だということが分かった。同じ寮に住んでいる人たちから結構話かけられていて、やはり人が良いんだろうなと思った。割と信頼されているようだった。寮に住んでいる人たちは、マルクの変態性については華麗にスルーしていた。俺も見習おうと思った。


 そして、入学式。

 主席であるアデク・キングレイが式でなんか喋っていた。王様の息子ということで名実ともに王子様ということだった。内容は、威厳のあるような感じだったことしか覚えていない。式なんてめんどくさいからな。ボーっとしていた。

 王族や貴族が大半を占めているため、豪華な入学式だったのではないだろうかと思った。参列している人も豪華な服装を身にまとっており、人もたくさんいた。



 式が終わると、教師に引率されクラスに移動した。俺のクラスはAクラス。その中には、友達になったルナもいた。まぁ、当たり前なんだが。ルナに手を振ってやると、ルナも小さく手を振り返してきた。

席に座り、しばらくすると担任と思われる教師がやってきた。

って、アイツは実技試験のときに戦った男じゃねーか。冒険者だと思っていたが、ちゃんとした教師だったようだ。


「このAクラスの担任になったグラン・ボーデバーンだ。この中には、実技試験のときの相手が俺だった奴が何人かいるようだな。まぁ、これからもよろしく頼むわ。今年のAクラスは、入学試験の結果が非常によかった者ばかりだそうだ。お前らの才能に更なる磨きが入るように精一杯頑張るつもりだ。1年間よろしくな」


 やっぱり、学園の教師というより、冒険者っぽい感じがする人だなーと改めて思った。

 名前に家名があることから、平民ではないのだろうという事が分かる。まぁ、実力のある者の大半が貴族っぽいから驚きはしないが。


「とりあえず、皆の自己紹介からいくか。アデクから順に自己紹介していってくれ」


 グラン先生がそう言うと、王子様は席を立ち、皆の方を向き、自己紹介を始めた。


「アデク・キングレイだ。入学式でも話したように皆とは、良きライバルとして切磋琢磨していきたいと考えている。この学園では、俺が王子だというこは考えずに気軽に接してきてくれ。1年間よろしく頼む」


 自己紹介が終わると、拍手が起こった。とりあえず俺も周りに合わせようと思い、拍手をした。

 拍手が鳴りやむと、ルナが立ち上がった。


「……ルナ・バーベンベルクです。……よろしくお願いします」


 ルナはそれだけ言うと着席した。俺はそんだけかよ!とツッコみたい気分になったが、周りからはアデクのときと変わらない拍手が起こった。

 この後の自己紹介は、出身や特技、趣味、目標などなど人によって言うことが違っていて面白いなぁと思ってきいていた。そんな風に自己紹介が進んでいき、俺の番になった。席順的に俺が最後ということになる。

 ここは無難に終わらせるとしよう。


「ガレアです。魔法は、あんまり得意じゃないが剣の腕にはそこそこだと思ってます。1年間よろしくお願いします」



 まあ、こんなもんだろ。と自分の自己紹介を評価した。敬語で喋ってたし、嫌悪感を抱くやつはいないだろう。


「ああ、そうそう。言い忘れてたけど、この席順は入学試験の結果が優れていた者順だから。って、どうでもいいか。ハッハッハ」



 なるほど、グランの言うことが本当なら俺はAクラスで最も成績の悪いやつだということになるな。クラスの注目がアデクと俺に集まる。……勘弁してくれ。俺は、ひっそりと学園生活を送りたかったのに、最初から落ちこぼれレッテル貼られてしまうではないか。



 自己紹介の後は、この学園の施設の紹介やら方針やら色々とグラン先生が話していた。入学式までの暇な時間に結構見て回っていたので、大体の施設は知っていた。あと、マルクにも色々教えてもらったしな。


「あー忘れてた。この後、魔力測定があるんだった。皆、教室の前に席順で並べー。魔力測定しにいくぞ」


 ……魔力測定か。これは非常にまずいな。


皆、席を立ち上がり教室の前に並ぶ。グランが歩き出すと、皆もそれについて歩き出した。


「よう、黒髪。名前は、確か……ガレアだったっけ?席も近いことだし、これから仲良くしよーぜ」


 俺の前のやつ、Aクラスワースト2位が俺の横に並び、話しかけてきた。こいつ名前なんだっけ。チク...チクワ君だ。


「おう、よろしくな。チクワ」

「チクワじゃねえ!チクアだ!」


おっと、俺は名前を間違ってしまっていたらしい。悪気はないんだ。お前の影が薄かっただけなんだ……。


「すまんすまん。チクアだったな。ちゃんと覚えてるぜ。土魔法が得意なんだろ?」

「ああ、土魔法が得意だ。ちゃんと覚えてんじゃねーか!ったく。お前は魔法が苦手なんだろ?魔力測定であんま良い結果が出なくても気にすることないと思うぜ」

「ん?どうしてだ?」

「俺達は、入学試験の結果がAクラスでは悪かったにしろ、このアンガレド学園のAクラスに入ることができたんだ。自分の実力に少しでも自信を持つべきだと思わないか?」

「そうだな」


 チクアは、俺を気遣って励ましてくれたみたいだ。結構良いやつみたいだな。入学早々、仲の良い友達ができそうだな。だが、少しだけ傷をなめ合ってるような気がして悲しくなった。


 魔力測定をするために移動した先は、魔法研究室という名前の部屋だった。中は広く、色々な機材や書物が置いてある。俺達がクラスに入ると、白衣を着た研究員らしき人がやってきた。


「ここは、魔法研究室だ。魔法に関する研究が日々行われている場所だ。学生のお前らでも許可がもらえればいつでも入ることができるので、興味があったら今後利用してみるといい」


 グラン先生が魔法研究室について軽く説明した。

 魔法研究室か。俺には縁のないところだろうな。


「私は、この魔法研究室の研究員です。名前はエルメスと言います。今日は、皆さんの魔力測定、つまりどれだけ魔力量があるかを測ります。方法は、この機械のパネルに手を乗せてください。そうすると、目の前の液晶に数値として魔力量が現れます。では、順番にやっていきましょう」


 順番は、もちろん成績順だ。アデクから魔力測定を行うことになる。

 アデクがパネルに手を乗せると、皆の前にある大きな影響に数字が表れた。

 その値は【874】

 目安がどれぐらいか分からないが、結構多そうだ。


「おお、これは凄い!!!歴代の学生でも、最高の値は【712】でした。それを大幅に上回るこの魔力量!素晴らしい!」


「「おおーっ!!!」


 クラスの皆は、研究員のエルメスさんの説明をきいて驚きの声をあげた。

 一発目から凄まじい数値が出たってことか。まぁ、成績順だから一発目が一番でかい数値が出るのも当たり前か。

 アデクは、驚きもせず、喜びもせず、当たり前と言わんばかりの顔をしている。王族だから、事前に魔力測定を行ったことがあるのかもな。



 そして、次はルナの番だ。

 ルナがパネルに手を乗せる。液晶に出た値は、【768】

 またしても、歴代最高を超える数値が出てしまった。

 ルナも王子同様、表情に変化はなかった。

 こいつの場合は、事前に測定しててもしてなくてもこうなのかもしれないが。


「今年は凄まじいですね……。既に二人も歴代最高の数値を超えてしまってますね。これでは、後ろの学生さんたちが魔力測定しづらそうですねぇ……。ですが、気にせずドンドン測定していきましょう」


 エルメスさんは、笑顔でそう言った。この人は、何気に鬼畜なのかもしれない。

 エルメスさんが言ったように魔力測定はドンドン進んでいった。

 液晶に出た値は、大体300~400ぐらいだ。今年は、優秀な学生が多いため例年の平均を大幅に超える結果となっているらしい。


 チクアの魔力測定が終え、俺の番がやってきた。

 ちなみに、チクアは【452】と中々の魔力量だった。

 チクアは、俺に『中々なもんだろ』と列に戻る際にドヤ顔で言ってきた。なんかムカつくな。


 俺は、機械の前に立ち、パネルに手を乗せた。

 液晶に映し出された値は、【0】という数字だった。

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