第3話 神様送迎人

ある日のこと。

いつものように普段何気ない生活。

相変わらず女も出来ず自分の時間に費やす私。

最近始めた事といえば、地元の神社への朝の参拝である。

日課にしている。

最近相談相手が出来た。

自分の職場の後ろにある某事務所の小太り顔の黒い中年男性理事だ。

この男性は自称『狐使い』。

いわゆる『霊獣』とやらを使い、鑑定する相手のこと、未来のことなどを見られるという。

最近のことも相談してみた。

「あー。お前は神に守られてるなー。」

と言われた。

ふとそれに共感することを思い出した。

というのも、先日自分の身に起こった手がビリビリとするものがした後にある夢を見た。

それは…

私の職場のお隣、一の宮という神社の中でも位の高い??昔の延喜式にも記帳されている有名な神社だ。

その神社が夢に出てきた。

その内容は…

神社の拝殿の真ん中中央に座り、自分が本殿に向かって正座をし、前には誰かが後ろ向きになって立っている。

左側には恐らく神々であろうと思われる神が横並びで私を見つめるかのように正座している。

男性神は縄文時代とかでみかける神を耳元で団子状に結い、勾玉をつけて、刀がある神様は刀を腰に刺して白い衣を着ている。

女性神は頭に黄金のお皿のような物を身につけて白い衣を着て座っていた。

すると後ろ向きに立っていた神は私の方に体ごと向けてこう言った。

顔は人間でいう50代くらいで、アゴからこめかみにかけて濃いヒゲを生やしていた。

「私は豊城入彦の命である」

わたしはボーゼンとした。

「我々はお前を守らなければならない。今後どのようなことがあってもお前を守りたい。そこで我々が守れるよう「豊城入彦命に帰依します」と言いなさい」

「ありがとうございます。でも……これを機に朝などの参拝はどんなことがあっても必ずやるべきなのですか??」と問いた。

すると横に座っていた神々は一堂に大きく笑ったあとに一人の神がこう言った。

「そういうことではない。ただ、お前はこの神社の氏子であるから形上としてそう言ったほうがいいって言うことだ。」

「わかりました。ではそういたします。」

と、ここで夢が覚めた。

朝、最近日課にしている隣の神社の参拝で「日頃見守りいただきましてありがとうございます。昨日の夢のことでもし本当なのであれば、豊城入彦命に帰依いたします」と告げた3日後だった。


「あー。っっ…あつ!!稲荷がいない!!あー!!大変だぁ!!いなくなったー!!」黒い理事は一人で騒いだ。

「大変だぁ!!大変だぁ!!」

状況が見えない私はなんのことやらさっぱりわからない。

「なに?どうしたの??」

「大変だよいなくなったー!!」

よくよく聞くと…つまりこういう事だ。

神社の前が現在広場になっており、参道となっている。

神社から向かって右側は私の現在の職場。広場を挟んで左側はマンションだ。

このマンションが建つ前は地元でも有名な百貨店で当時屋上には稲荷社があった。

どうもこの稲荷社は街中を占めるとてつもないパワーの一部だったらしくそのパワーが無くなってからというもの、まちなかの人通りは激変。

将来的にもゴーストタウン化も恐れる始末にまでなったという。

それも関連しているのかはこの時点では不明だったため、この話はこれで終わってしまった。

数日後。

O神社へ参拝。天候は雨。

いつものように参拝し、今日は山まで歩くのは控えようとしたその時、体は自然と山の方へ山の方へと山道を歩き出す。

山道を歩いていると「カーエーレー・カーエーレー・カーエーレー」と聞こえた。

普段は歓迎の声が聞こえるのにこの日はお怒りだったのか。。

「触らぬ神に祟りなし」のことわざ通りこの日は帰ろうとしたその時であった。

「私が呼んだの」私の後ろで女性らしき声が聞こえてた。

周りでは帰れ帰れ帰れの声が聞こえる中で

「ごめんね…ごめんね…」との声が聞こえた。

私は「わかりました」と一言心の中で告げて、

「では奥宮へ挨拶に行きましょう」と言い、奥宮へ参拝して帰った。

その日帰宅後、その中年男性理事に会う。

するたらびっくりした表情で言われた。

「あーーーー!連れて帰ってきた!!!連れて帰ってきた!!一緒にいる!!!あはははははははっ」

「お前はO神社を繋ぐ送迎人だ!!」

なにが起こったのか自分にはさっぱりだった。

次の日のこと。。

職場には沢山のおおきな注文が次から次に殺到した。

稲荷神のお礼だったのだろうか。。




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