第18話 本命です
~食堂~
1つだけちゃんとチョコレートをもらえただけで、やっぱりテンション上がるなあ。
「
権蔵がニヤリと言う。
「うるさいなあ」
僕はイライラしながら権蔵に言った。
そして僕がお守りに念じようとした時に後ろから話しかけられた。
「ごめんなさい! うるさかったですか? 」
前にエビフライをくれた田中さんだ!
「いえ、うるさい
僕は権蔵に向かって手で払う仕草をした。
「誰が
権蔵はプリプリと怒っている。
「それで田中さん何か僕に言いたいことがあったのでは? 」
僕は慌てて話を変えた。
田中さんが思い出したようにカバンからなにか取り出した。
「はい。チョコレート。いつもたちばなさん
田中さんが僕に可愛い包装用紙に包まれたチョコレートをくれた。
わーい。手作りでチョコレートに『頑張って』って書いてある。
しかし、義理チョコならぬ
でも田中さんの気遣いが嬉しい。
「ありがとうございます! 嬉しいです! 」
僕は喜んで田中さんに頭を下げた。
「まだ配る人がいるので、それじゃあ! 」
田中さんはそう言ってどこかへ行った。
あーやっぱり義理だったか……
食堂にいる社員をよく見ると、男女共に田中さん印の手作りチョコレートを持っている。
僕は食券機でかけそばの食券を買って、食堂のおばちゃんに渡す。
~しばらくして~
「かけ一丁! これサービス♡」
食堂のおばちゃんが僕のトレイにチョコレートケーキを置く。
「おばちゃんの手作り♡ 本・命・チョコだよ」
おばちゃんはウインクしながら言った。
僕はうろたえて、冷や汗が出たので、ポケットからハンカチを出すためにお守りをトレイに置いた。
「なんじゃ? こないだのケーキとは味が違うぞ」
権蔵が勝手にチョコレートケーキを食べていた。
生きてて初めての
僕はさりげなくお守りに触り念じた。
「ぎゃあああああ」
権蔵が半泣きになっている。
「おばちゃん。こないだのケーキと味が違うみたいだけど、どうしたの? 」
僕は権蔵を無視しておばちゃんに聞く。
「食べずに分かるなんてスゴいね! 実はね。ここだけの話だけどね。こないだのシフォンケーキは、知らない人にあそこでお弁当ひっくり返した人に渡してくれって言われたのさ。バレンタイデーが来るまで自分のことは内緒にしてくれって。あまりに
おばちゃんは胸の前に手を合わせ僕に謝る。
「……その女性はどんな人でしたか? 」
僕はドキドキしながらおばちゃんに尋ねた。
やっぱりシフォンケーキは権蔵の初恋の人の生まれ変わりの人からだったんだ!
「それがね……顔を隠していてわからなかったわ。
声も中性的だったし、男か女かもわからないんだ。ごめんなさいね。これはホント」
おばちゃんが僕にさらに謝る。
「大丈夫ですよ! いろいろすみません! チョコレートいただきます」
僕はおばちゃんに頭を下げた。
しかし、何で生まれ変わりの人は僕にシフォンケーキをくれたのだろうか?
会社の食堂は一般開放されていて誰でも入れる。
今まで会った人の中にいるのか?
それともお弁当をひっくり返した僕を見て、同情したのか? それで見ず知らずの僕にシフォンケーキをくれたのか?
「なかなか掴めそうで掴めんな……」
権蔵も同じことを考えていたようだ。
僕はかけそばを
「おーい、たちばな! 何か届いているぞ」
高梨先輩がディスクに戻るとすぐ僕に話しかけてきた。
僕は高梨先輩から2つ小包を渡された。
なんだろう? 取引先の書類かな?
僕は1つ目の小包を開けた。
中には手作りのチョコレートが入っていた。
えっ誰だろう?
ワクワクしながら裏の住所を見た。
「
僕がチョコレートにツッコミを入れる。
「たちばなのおふくろさん『
高梨先輩が僕のチョコレートを覗き込んでくる。
「何で会社にチョコレートを送ってきたんすかね?」
桂も僕の母ちゃんが作ったチョコレートを覗き込む。
「たちばな先輩!『サプライズです! 驚いた? 』って書いてありますよ」
桂が笑いながら言った。
「やっちゃダメなサプライズだよ」
僕は期待した分がっかりしてしまった。
もう今度はなんだよ……
「たちばな! 誰からだ? 」
高梨先輩が好奇心に満ちた目をしている。
「依頼主の住所と名前は郵便局で分からないです」
僕は小包の裏側を見ながら言った。
何で名前も住所も書かずに送ってきたんだろう。
「手紙がはいってますよ」
桂がチョコレートの上に貼り付いていた小さい封筒を見つけ、僕に渡した。
僕は慎重に封筒を開けた。
《本命です。 Mより》
ただそれだけ書かれていた。
「たちばな先輩! Mって誰か心当たりありますか?」
桂がすごく驚いているようだ。
さては僕が本命チョコ貰えないと思っていたな。
「アプリで出会った『
音楽コンで出会った『
婚活パーティーで出会った
『
婚活飲み屋、パーティーで会った『
今猿コンサルティングの『
そして秘書の『
こんなもんかな? 僕は思い出せるだけの人物を言った。
「たくさんいるっすね」
桂が驚いている。
「いや、まだだぞ。梅田
高梨先輩が女子社員の名前と母ちゃんの名前を言う。いや、母ちゃんはないでしょ。これも母ちゃんのイタズラだとしたらかなり悪質だ。
「皆藤さんは高梨先輩一筋だから違いますよ」
僕は高梨先輩に言った。
高梨先輩は女子社員全員のフルネーム覚えているなんてスゴイな。梅田さんは
「近藤みどりさんって誰ですか?」
僕は疑問に思い高梨先輩に尋ねた。
僕が会ったことのある人だろうか?
「たちばな!食堂のおばちゃんの名前だよ」
高梨先輩は驚いて言った。
えーそうなの?
高梨先輩はよく食堂のおばちゃんの名前まで知ってたなあ。
「そういえば、今猿社長も
桂が思い出しながら僕に言った。
あっそうだな。女性だけとは限らないんだ……
というかMのつく人がほとんどじゃないか!
「俺も高梨
高梨先輩がわざわざこんなことしないでしょ……
「自分は桂
桂はホッとした顔でそう言った。
うん。桂ではないことは僕でも分かるな。
どうしたら絞りこめるだろうか?
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