第19話 忘るの儀式?!

「よし!分からない時にはSNSに拡散だ! 」

 高梨先輩が意気込む。


 僕はkonstagramで[mandarinorange0727]さんが新しい投稿をしているのを見つけた。


 新しい投稿には、こないだ行った婚活パーティーの会場の写真に『頑張る! 』とだけあったのだ。


 ちょうど僕らが婚活パーティーに行った日だ!さらに見ると、次の投稿が上がっていた。


konstagram

『今日はバレンタインデーです』


 たくさん並べられたチョコレートの山がある……。

その中に僕に送られてきたチョコレートが真ん中に置いてあった。


「もしかして、[mandarinorange0727]さんがこのチョコレートを僕にくれたんじゃないですか? MがIDの最初ですし! 」

 僕は高梨先輩にスマホの[mandarinorange0727]さんのkonstagramを見せた。


「誕生日が7月27日生まれで僕と同じなんですよ! もしこの人が権蔵の初恋の人の生まれ変わりなら大きな手掛かりですよね? 」

 僕はドヤ顔で高梨先輩に説明した。



「ハハハハ。まさかたちばな……このチョコレートとkonstagramは自作自演じゃないだろうな?」

 高梨先輩が笑い出す。


「僕にも見せてくださいよ~確かに自作自演っぽいですね~」

 桂まで笑い出す。


「ワシは全部見ていたが自作自演ではないぞ!こいつはダメでゲスでモテないやつじゃが、そんなくだらんいたずらはせん! 」

 権蔵がフォローしてくれた。

あまりフォローになってないが……


「笑ってないで説明してくださいよ~」

 僕はなぜ自作自演と言われたのか全然分からなかった。


「えっ?たちばな…本当に分からないのか?」

 高梨先輩が急に真顔になる。


「たちばな先輩…もっと英語勉強した方がいいっすよ」

 桂まで真顔で僕をさとしてきた。

英語力なくて悪かったな!


「mandarin orange は日本名は[たちばな]だよ」

 高梨先輩がスマホの辞書を見せてくれた。



「おまけにたちばな先輩の誕生日の0727っすよ」

 桂がやれやれって顔をしてる。


大卒だからってさっきから高卒の僕を馬鹿にしてるだろ! 悔しい……


 とりあえず、スマホのメールを見せて僕がこの[mandarinorange0727]さんではないことを説明した。


「たちばなの名前と誕生日を知ってて、わざわざチョコレートを送ってくるなんて何者だろう?」

 高梨先輩が考え込む。


「僕の誕生日なんて親友のえにしと高梨先輩と桂、それと、婚活パーティーで出会った人と母ちゃんしか知りませんよ」

 僕も真剣に考え込む。



「たちばな先輩のストーカーっすかね? それはないな……ただの偶然じゃないっすか?」

桂がぽつりと言った。


 桂。おまえ今『それはないな』って言っただろ!

 ちゃんと聞き取れたぞ!僕にもストーカーの1人や2人いるかもしれないじゃないか。


「たちばな。彼女とかは、いたのか?もしくは振った女性とか……」

高梨先輩が全て言うまでに僕は話を遮った。


「高梨先輩!僕は今まで生きてて女性に好かれたことは無いですよ!」

 僕は半泣きで高梨先輩に訴えた。


「なんかすまん」

 高梨先輩が平謝りしている。


「たちばな先輩の初恋の人とかはいないんすか? 」

桂が僕を不思議そうに見る。


 僕は記憶を手繰たぐり寄せるが、特に思い出せない。

「ちょっといいなぐらいはあるけど、初恋はないかもしれない……」


「うっわ……マジっすか……? 」

 今びっくりするぐらい桂がドン引きしている。


そんなにどん引きしなくていいだろ!


「まあ、現時点では、婚活で出会った人っぽいってことだな」

 高梨先輩がフォローする。


「もしくは母上殿か……」

 権蔵が笑いながら言った。


権蔵、もしうちの母ちゃんが生まれ変わりなら恋愛するのは無理だぞ!


[mandarinorange0727]さん……君は一体誰なんだ?


 ~後日~

「久しぶりだな! 」

 街角で僕に大きな声で叫ぶえにし

 久しぶりに親友のえにしと会った。

相変わらず筋トレが趣味らしく筋肉隆々きんにくりゅうりゅうとしている。

えにしは背も180センチと高い。


「おまえが婚活してくれて嬉しいよ!子供が同い年ならいいな」

えにしはテンションが高い

 まだ気が早いよ!えにし


「なあ。えにし……[4の儀式]って知ってるか? 」


「覚えてるよ! わするの儀式だろ?高校の時すごく流行ったよな! 」

縁が笑いながら言った。


「えっ……?僕は覚えてない……」

僕はそんな儀式聞いたことがない。


思ひ出思い出はたや、お守り、わするの4つが必要なんだ。だから4の儀式という」

 えにしが目を輝かせながら言った。

そんなの聞いたこともない。何でえにしが知ってるのに僕が知らないんだ?


「その4つを揃えると願いが叶うんだ。ちなみに、思ひ出は思い出の品を、将やは古文で[もしかして]つまりIFだね。お守りは特別なお守りを、忘るは自分もしくは誰かの記憶を差し出せばいい」

えにしは詳しく説明してくれた。


 僕はポケットから柊のお守りを出した。

「もしかして特別なお守りってこのお守りか? 」


 縁が驚いて懐かしそうにお守りを見る。

「そうだよ!誰の記憶でもいいから失恋とか失敗した時みんなやってたね~。でもなかなか願いが叶わないし、記憶も消されない人が多いみたいだからただの迷信かもな。噂ではすべてが叶うまでその儀式の存在自体忘れるらしい」


「じゃあ、僕は……」

僕はすべてが叶っていない……


「[4の儀式]をやったみたいだな。しかもまだ、続いている。俺はやらなかったけどな。でも4の儀式で消された記憶は、強い想いがあると思い出してしまうらしいぞ! 」

えにしは真顔で言った。


 僕は一体何を願ったんだ?


「[4の儀式]はどうやってやるんだ? 」

 僕は恐る恐る聞いた。


「まず高校の裏山の入口にお守り屋さんがあるからそこでお守りを買い、裏山の石碑に[思い出の品]と[お守り]を並べて、[だれの][いつの]記憶を差し出すか、[もし…なら]と願いを石碑に向かって叫ぶんだよ!」

えにしはメモ用紙にわかりやすく書きながら言った。


「結構めんどくさいんだな…」


「本当の儀式の名前は[わするの儀式]。面倒臭いからみんな[4の儀式よんのぎしき]って呼んでたなあ」


えにし、詳しいな!その石碑は何の石碑なの?」

 僕は本当に何も覚えていないんだな…


「《柊愛長ひいらぎつぐなが》という侍の石碑だよ!」

 縁が言った言葉に僕は驚いた。


何だって?侍だと…?

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