第16話 バレンタインデー
いつもは甘い物やスイーツなど目もくれない男性諸君が、スイーツを欲しがる唯一の日。
モテるリア充には最高の日。
モテない非リア充には期待だけが通り過ぎていく日。
そう今日はバレンタインデー!
僕は今日は心が痛いので会社休みたい……
「チョコをもらえないからって会社休むな! まだ分からんだろうが! ゴチャゴチャ言ってないで会社いけ!! 」
珍しく正論な権蔵に促され、重たい気持ちで会社に行く。
「ハー」
ため息をつきながら僕は会社へ行く道を歩く。
ふと、見覚えのある人物がいた。[
ナンパしたら実はキャッチセールスだった時の女性だ。
うわあー今完全に目が合ったよ。やばいな。
走って逃げよう。
「あらあ。お兄さん久しぶりじゃない」
しかし、中井さんが僕に話しかける方が早かった。
「どうも。お久しぶりです……」
僕はまた高い
「やだあ。今は壷は売ってないわよ。あれから一儲けしてお店を始めたの。よろしければ、寄っていって♡」
以前より艶かしくなった中井さんに近くのバーに誘われたが、以前のことを思い出して断ることにした。
もちろん会社に行くから行けないのもあるが。
「僕は今から仕事なんで! すみません! 」
僕はそそくさと去ろうとした。
「そーなの。残念ね。これだけ貰って行って」
そう言うと、中井さんはバーのチラシと一口大のチョコレートをくれた。
「ありがとうございます! それでは」
僕は走って会社に向かった。
「よかったのう。チョコレートをもらえて」
権蔵は
「ぜい……ぜい……」
僕はやっと会社に到着した。
我ながらよく遅刻しなかったなと思う。
「どうした? たちばな。チョコレートを持った女の子に追いかけられたのか? 」
高梨先輩は笑いながら言うが、ほぼ当たっている。
「そうなんですよ~」
僕は高梨先輩に説明した。
~朝のことを高梨先輩に説明中~
「たちばな、モテ期が来たな…ハハハハ」
高梨先輩が大笑いしている。
「高梨先輩何が面白いんですか?」
桂がチョコレートを山ほど抱えて話しかけてきた。
「聞いてやってくれよ」
高梨先輩はまだ笑っている。
そんなに笑わなくても……
~桂に説明中~
「たちばな先輩、モテ期っすよ。ハハハハ」
桂も笑い転げている。
ここまで笑われるとバカにされてるみたいでムカつくな。
「桂。そんなにチョコレートをもらうなら婚活しなくてもいいんじゃないか?」
僕が桂が持っていたチョコレートを指さしながら言う。
「結婚と恋愛は違うんで。条件に合った人と結婚したいんすよ」
桂が周りの女子社員に聞こえないようにひそひそと言った
そんな恋愛観もあるのか……僕は恋愛して結婚したいよ。
「高梨先輩もチョコレートを貰ってましたよね?」
桂がそう言うと、高梨先輩はディスクの一番大きな引き出しを開けた。
すると、そこにはたくさんのチョコレートが詰まっていた。うらやましい……
僕もコソッと引き出しを開けたが書類しかない……
「何も入ってないぞ!」
権蔵が念を押すように言う。
「わかってるよ!」
僕は権蔵を睨んで言った。
~会社の業務中~
「たちばな! 悪いがこれ郵便局に持って行ってくれ」
上司が僕に書類を渡した。
「はい。分かりました! すぐ行きます」
そう言って僕はコートを着ていると桐谷さんと梅田さんが僕にひとつずつ何かを渡した。
綺麗な包装紙のチョコレートだった。
「これ、僕に? 」
僕は驚いて言った。
「朝いなかったから」
桐谷さんがうなずいてにこやかに言う。
「
梅田さんが僕に念を押す。
「わかってますよ! それでも嬉しいです! ありがとう」
僕がそう言って廊下に出ると桐谷さんと梅田さんの声が聞こえる。
「あれ、余ってて困ってたのよね~」
桐谷さんが僕に聞こえるか聞こえないかの声で言った。
「余りで喜んでくれてよかった~」
梅田さんは笑いながら言った。
余りかい!
「余りやと、
権蔵がニヤリと笑いながら言うが、僕は無視して急いで外に出た。
「うわ。寒い…」
僕は思わず呟いた。
「心がか?」
権蔵はまだ余計なことを言っている。
まあ心もひんやりしていているが……
「チョコレートに罪はない」
僕はチョコレートをバックにしまった。
僕が郵便局に着くとまた見覚えのある人物がいた。
[
婚活アプリで知り合ったが、会って話したらメッセージが来なくなった人だ。
僕が目も合わさず知らないふりをして郵便局に入ろうとしたら、柿島さんに話しかけられた。
「あの……たちばなさんですよね?」
僕は流石に無視するわけに行かず、返事をした。
「はい。そうです。お元気でしたか?」
「あの時はごめんなさい。あまりにメッセージと本人の印象が違うからなりすましかと思って」
柿島さんがそう言って頭を下げる。
確かに権蔵の言う通り書いたからなりすましだよな。
もしかして、これは脈アリかな。
「こちらこそ、友達にメッセージはアドバイスもらって書いたのでごめんなさい」
僕もそう言って頭を下げた。
柿島さんはびっくりしていたが、すぐ笑い飛ばしてくれた。
「そうだったんですね! その時言ってもらえればよかったのに」
もしかして、もしかすると……僕とやり直したいのかな?
やり直すも何も始まってすらいなかったが。
「あの……これ」
柿島さんがチョコレートを僕に渡してきた。
やっほーい!よっしゃああ。
僕は心の中で喜んでいるのを顔に出さないようにした。
「ありがとうございます。義理かな?」
僕が恐る恐る聞いた
「違います!」
柿島さんは即答した。
よっしゃあ。モテ期来たぞ!これ。
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