第15話 もっと手がかりがあれば
意識を失って、知らない所で寝てるなんてなんかデジャブだな。変な侍がいなければいいんだが…...
「やっと目を覚ましたか。今回はワシまで意識が飛んでしまった」
権蔵は僕の顔を覗き込みながら言った。
あっ権蔵まだいたのか。
「私は
黒髪の女性が優しく説明してくれた。
「それは、ご迷惑お掛けしました」
僕は軽く会釈をした。
「めぐ。水持ってきたよ~」
知らない茶髪の女性がペットボトルを何本か抱えて持ってきた。
「うわっ目が覚めたんですね……体調はどうですか?」
知らない女性は嫌そうな顔をしながら僕に話しかけてきた。
「もう大丈夫です。ありがとうございます。ご迷惑お掛けしました」
僕は女性が嫌そうな顔をしたのは見なかったことにした。
「こちらは
如月さんはその女性を紹介した。
「どうも。目が覚めたなら早く帰ってもらえますか? 」
笹野さんは淡々と言った。
この笹野さんって冷たい感じだな。
嫌な感じ……というかムカつく~!
「笹野さん! 病人には優しくしてくださいよ~」
如月さんがニコニコと優しく笹野さんに言った。
「ああ、悪い悪い、業務が滞っていたので」
この笹野さんって人、全然僕に悪いと思ってないな。
カチャ
誰か部屋に入ってきた。その人物を見て、僕は驚いた。
「今猿社長……なぜここに? 」
僕は今猿社長を見ながら言った。
「調子はどうですか? ここは、僕の父親の会社なのでいるんですよ……そしてここでは社長ではなく部長ですけどね」
今猿社長は
「えーじゃあ僕を背負っていただいた上に社長の部屋をお借りしてたんですか? 本当にご迷惑お掛けしました」
僕は深々と頭を下げる。
「気にしなくていいよ。偶然僕がそばにいたからね」
今猿社長はニッコリと言った。
その会話を聞いていた如月さんが目を丸くした。
「あらっ部長とお知り合いだったんですか? こちら
如月さんは改めて社長のことを紹介してくれた。
「今猿部長は全女子社員の憧れなんですよ。私もそのうちの1人です」
僕にコソッと耳打ちした。女性に耳打ちされるなんてちょっとドキドキした。
今猿社長モテるんだなあ。なんかチクリと胸が痛い。
「心配だから、家まで送り届けるよ」
社長が僕を気遣ってくれる。なんか僕ってスゴイな。
「いえ。同僚もここにいるので大丈夫です。ありがとうございます」
僕は遠慮した。さすがに社長に送ってもらうわけには……
「ああ。同僚の人には連絡したので多分もうすぐ来ますよ」
笹野さんが書類を見ながら僕と目も合わさずに言う。
早く帰れってか。
まあ高梨先輩達も心配してるだろうから連絡ついて良かった。
「どうして同僚と連絡できたんですか? 」
そう言えば、笹野さんは何で高梨先輩達に連絡出来たんだ?
「そりゃあそんな派手なネーム付けてたら……パーティ会場に問い合わせたらすぐでしたよ」
笹野さんはチラッと僕の胸元を見た。
あっ婚活パーティーのネームプレート付けたままだった。[
~しばらくして…~
「たちばな!急にいなくなるから心配したぞ」
桂も僕に駆け寄ってきた。
「2人ともありがとうございます」
僕は心配されたのが、少し嬉しかった!!
「たちばな先輩! 大丈夫っすか? 」
桂が心配そうに僕を見る。
桂にも優しいところあるんだな。今度はコーヒーでも奢ってやろう。
「俺が家まで送って行ってやる」
高梨先輩が車のキーを出しながら言う。
「でも高梨先輩はカップリングした人と約束が…」
僕はさすがに高梨先輩に申し訳ないと思った。
「いいんだよ。たちばなは気にしなくて! ここで後輩を見捨てたら
桂が高梨先輩の後ろから様子を伺っている。
「たちばな先輩のことは高梨先輩にお任せします。僕はカップリングした人と約束あるんで、これで失礼します。」
桂はいそいそと部屋から出て行った。
高梨先輩。
さっき優しいところがあるって思った気持ち返せ!
明日桂の消しゴムの角使って消しゴム
今猿コンサルティングを出て駐車場に向かった。
駐車場に置かれた高梨先輩の車の助手席に乗せてもらった。
僕も車を買えたらな。免許持ってないけどね
「これが自動車か!すごいのう。この車かっこええのう!いつも[
権蔵が高梨先輩の車に乗ると大はしゃぎしている。
「すごいだろ? この車高いんだぜ」
高梨先輩は車を褒められて上機嫌だった。
「権蔵の初恋の人の生まれ変わりには会えたか? 」
高梨先輩は運転しながら僕に質問してきた。
「それが、[
僕は結局権蔵の初恋の人の生まれ変わりがすぐ側にいたのに全く分からなかったことを思い出して落ち込んだ。
「権蔵とたちばなの様子が変だから、生まれ変わりがすぐ側に居るとは思ってた。途中で退室したのが気になったが理由もなく退室できなくて、行くのが遅れて悪いな」
高梨先輩はパーティーで女性と話しながら僕らのこともちゃんと見てくれてたんだ。さすが、高梨先輩!
「気持ちだけで嬉しいです」
高梨先輩はホントいい人だな。
それに比べ
「今回は全然役に立たず申し訳ない。まだあんまり思い出せんのじゃ」
権蔵が目を泳がせながら謝る。
「僕こそもう少し手がかりがあれば見つけられたのに」
僕はうなだれながら言った。
僕がもっとしっかりしていれば、もう権蔵の初恋の人に会えてたかもしれない。悔しい気持ちともどかしい気持ちで一杯だ。
「まあAB型って少ないから探しやすくはなったんじゃないか? それにイベントスタッフ、参加者含めても100人ぐらいだし……」
高梨先輩が僕らの気持ちを察して励ましてくれた。
「次こそは見つけたいです! 」
僕は意気揚々と言った。
次こそは絶対権蔵の初恋の人の生まれ変わりを見つけるぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます