第10話 柊のお守り?!

TOIN たちばな

『プレゼントを桃井さんに一緒に選んでもらいたくて』


 TOIN たちばな

『もちろん高梨先輩や桂も来ますよ』


 TOIN 桃井さん

『そうですか。分かりました。また3月になりましたら予定をご連絡ください。』

 なんとか誤魔化したけどなんか事務的なメッセージだなあ。

 危なくデートの誘いをする所だった。高梨先輩達にもこのことを言わないとな。



 ~1週間後会社のお昼休みにて~

「「勝手に3人で社長のプレゼントを選びに行くと決めた~? 」」

 桂と高梨先輩が同時にハモった。


「あれから1週間も経ってるやないか早く言わんかい! ヘタレやな! 」

 権蔵がいらいらしている。


 最近権蔵はイライラし過ぎだぞ!

 カルシウムのサプリを今度お守りに押し付けておいてやろう。


「しょうがないやつだな。こないだの合コンの女性2人も誘うか? 」

 高梨先輩が溜息をつきながら言った。

 すると、桂は気まずそうな顔をした。


「俺、実は稲本ちゃん振ったんっすよ。だから気まずいです」

桂が気まずそうに言った。


「えー!何でだよ? 上手くいってクリスマス一緒に過ごしたんじゃないの? 」

 合コンの日はクリスマスだったのだが、クマの人形に気が行き過ぎて高梨先輩以外誰も触れなかったな。


「俺は共働きの女性と結婚したいのに…専業主婦になりたいって言うので。僕とは合わないと思って」

 桂は驚くべき発言をした。


「桂、おまえ結婚願望あったのか?」

 高梨先輩が飲んでいたコーヒーを吹いた。


「ありありっすよ! 温かいご飯とやさしい嫁さんが待つ家に帰りたいっす」

 意外だ…僕より若いのに桂は結婚願望があるなんて…それなら専業主婦でいいじゃないか。


「俺達今婚活してるんだけど桂も一緒にやるか? 」

 高梨先輩が婚活に桂を誘った。


「やるっす」

 桂は即答した。即答かよ!


 権蔵がなにか唱えている。

「ふんぬ!」

 何かが僕のカバンから出てきた。


[婚活特集]と書かれたチラシが出てきた。婚活パーティーの主催者のサイトに登録した。なので、チラシが朝の新聞に混じっていて、一緒に持ってきてしまったようだ。


桂と高梨先輩はチラシを眺めた。

「そうだ。今すぐに婚活しましょう! 」

 桂が嬉しそうに言った。


「うーん。あそこの主催者いろいろやっているみたいだな。街コン、趣味コン、婚活飲み屋、婚活パーティ…」

 高梨先輩はチラシを読んでいる。


「街コンは、合コンの大きいのですね。人数も合コンの10倍以上の人が参加するっす。街ぐるみで行われて数々の飲食店を回るのが一般的っす」

 桂がベラベラと説明する。

桂、えらく詳しいな。


「街コンの中に趣味コンもあるな。バスツアー、料理コン、釣りコン、サバゲーコン、アニメコン、謎解きコン、旅コン、スポーツコン、音楽コン……」

 高梨先輩がまたチラシを読み上げる。


「街コンにもいろいろあるんですね。40歳までとか…… ほとんど年齢制限があるんですね」

 僕はチラシをのぞき込み言った。


「俺にはキツイな…婚活飲み屋はどうだ」

 高梨先輩は年齢制限を気にしているようだ。


「婚活飲み屋は男性が料金を払い、ランダムで女性と一緒に食事や飲みができるところっすね。女の子をチェンジもできます」

桂がまたベラベラと説明する。

 桂……婚活について詳しすぎだろ……


「桂。詳しいなあ。俺は婚活飲み屋がいいなあ」

 高梨先輩が2回も『婚活飲み屋がいい』って言うから、よっぽど婚活飲み屋に行きたいんだな。


 僕も何回も言うが、それにしても桂詳しすぎだろ。

「たちばな先輩も高梨先輩も音楽好きっすよね?俺は趣味コンの音楽コンがいいっす」

 桂は趣味コンがいいらしい。確かに女性と共通の話題があって楽かもな。


「ワシは前見た[大人数型婚活パーティー]がいいと思うぞ」

 権蔵は婚活パーティーを薦めている。

 僕はどれがいいと言おうかな?


「僕はこないだ1階フロアで開催されていたのと同じ婚活パーティーがいいと思います」

 僕は、あまりお酒が強くないので、飲まなくていいパーティーにしておくか。


「まあ。確かにこないだと同じ所の方が手がかりが掴めるかもな。また権蔵の初恋の人が来る可能性はある」

 高梨先輩が僕に同意してくれた。


手がかり権蔵の初恋の人ってなんすか? 」

 桂が不思議そうに尋ねる。


 一緒に婚活するなら教えておいてもいいか。

 高梨先輩がなんとかフォローしてくれるだろう。


「実はなあ。信じられないかもしれないけど」

僕は桂に説明することにした。


 ~桂に今までの経緯を説明中~


「それっマジっすか? 先輩達には悪いですけど…… 本当かどうか信用出来ないです」

 僕の説明を聞いたあと若干桂がドン引きしている。


 桂!もっと頭を柔らかくしないと出世しないぞ。


「よし!そんなに言うなら証明してやろう!」

 権蔵が悪意に満ちた顔で何か唱えだす。


「今から証明するってさ」

 高梨先輩が桂にコソッと伝えた。


「ふんぬ!」

 権蔵がなにか唱えると、桂の机のものが落ちた。


「うわ!?」

 桂はびっくりしながら机を片付けている。


「ふんぬ!」

 権蔵はまだ唱えるのをやめない。

 そして、うちの課の電気だけ消えた。


「分かりました分かりました。認めますからやめさせてくださいよ」

 桂が慌てて認めた。


「権蔵。もう分かったからやめてくれよ」

 僕が権蔵にやめるように促すが全然聞いていない。


「ふんぬ! 」

 権蔵はやめる気がなく、権蔵が何かを唱えたら今度は窓が開いた。会社の書類があちこちに飛ぶ。


「ストップって言ってるだろ! 」


 僕はお守りを取り出し、握りしめ念じた。

「ぎゃあああああああああ」

 やっと権蔵は唱えるのをやめた。やめたというより強制終了させたんだが。


「なんだ? 今の? ポルターガイストか? 」

「こわーい」

 周りの会社の同僚が大騒ぎしていた。


「いやあ。本当なんですね!権蔵さんよろしくっす」

 桂が権蔵とはあさっての方向にお辞儀した。


「初めてさん付けされたぞ」

 桂のよいしょに感動してる権蔵。


「ところで権蔵さんってたちばな先輩の先祖じゃないんすか? 」

 桂が僕の顔を見ながら言う。


 まさか桂……おまえも権蔵が見えるんじゃ……


「いや。権蔵って名前のご先祖さまはいない。まあわかる範囲だが」

 僕は桂から目をらしながら、ボソッと言った。

 一応こないだ母ちゃんに[権蔵]という名前の知り合いか御先祖様はいるか電話で聞いてみたら『知らない』と言っていた。


「もっと昔ならわからないだろう?権蔵ご先祖さま説はあるかもしれないぞ」

 高梨先輩がうなづきながら言った。


「さっきの権蔵さんを抑えたお守り見せてもらえますか?」

 桂は僕が握っているお守りに興味を示した。


「ほら」

 僕が手にしていたお守りを高梨先輩と桂に見えるように出した。


「へぇーこれが…普通のお守りみたいっすね。お守りならなんでも効果あるんすか?」

 桂が自分のお守りを念じてみるが何も起こらない。


「お守りこれしか持ってないから分かんないな。」

 僕は自分のお守りを見ながら言った。

 桂のお守りには『恋愛成就』と書かれていた。


 高梨先輩がしげしげと僕のお守りを見た。

そして高梨先輩はギョッとした。

「これは[ひいらぎ高校]にある石碑の前で販売されたのじゃないか? 懐かしいなあ」


 よく見ると、お守りに大きく真ん中に[ひいらぎ]と書いてあった。


「たちばな!昔ひいらぎ高校で[4の儀式よんのぎしき]っていうウワサあったの覚えてるか?」

 高梨先輩は懐かしそうにテンションをあげて言うが、僕はその儀式全然聞いたことない…


「…僕は知らないです。きっと僕らの時にはすたれてたんですよ」

僕がそう言うと、高梨先輩が驚いていた。

高梨先輩は権蔵に質問する。

「権蔵は?」


「ワシも知らん」

 権蔵は即答した。


 もっと悩めよ!


「権蔵さんは何て言ってるんですか? 」

 桂が興味津々に権蔵がなんて言っているか知りたがっているので僕は通訳した。

「知らないってさ……」


 高梨先輩が不思議そうに首を傾げる。

「おかしくないか? 権蔵は長いこと高校に住んでいたのに知らないなんて」


 確かに長く住んでいたなら知っててもおかしくないのに…何かその儀式には秘密があるのか?


「わしはピチピチギャルにしか興味が無い!! 」


 もしくは権蔵がただの馬鹿愚か者かだな。


「……」

 権蔵のそのセリフに呆れて一同黙る。


「とりあえず、婚活イベントは全部行ってみましょう」

 桂がチラシの日付を見ながら言った。


 結局僕らは音楽コン、婚活飲み屋、婚活パーティーすべて行くことにした。

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