26話 悪魔登場
俺は嫌な予感がした。というか、さっきから俺の危険察知能力がビンビンに反応している。
俺のことじゃないのに反応するって、やっぱり幼馴染なだけあるな、うん。
でも今の俺は最低だ。約束も守れない奴が幼馴染とか名乗れない。……くそっ!
1時間目の授業が始まる前。俺はものすごくナイーブになっていた。
きっと紗由理になんかあったに違いない。それは俺の能力、と直感でわかる。
でも、俺の思い過しかもしれない。ただの風邪なのかもしれない。いや、だとしたら朝のHRの時に「新島は風邪だ」と担任の先生である竹山先生から知らされるはずだ。でも、今日は何も言わなかった。
ていうか、先生は「今日新島はサボりか?」って呟いていたじゃねぇか。てことは連絡が来てないってことだ。
……あ〜どうすっかなぁ、絶対に家に行った方が良いんだろうけどなぁ。でもこれから授業だしなぁ。
俺が色々と思考を巡らせていると、慎也が心配顔になりながら、話しかけてくる。
「浩介……?何暗い顔してんだ…?紗由理がいなくてテンション上がらないとか…?」
「まぁな、そんなとこだよ……」
俺は少しぶっきらぼうに言う。
「だって、お前全部分かってんだろ…?」
「…紗由理とどうせまた喧嘩とかしたんだろ?んで、なんだかんだで紗由理が心配だから様子を見に行きたいってとこだろ?」
「……分かってんじゃねぇかよ」
「当たり前だ。昔からのよしみじゃねぇか!」
そう言って俺の背中を思いっきし叩く。
「行ってこい!幸い1時間目の授業は竹山先生だ。どうせまた寝るだけだろうし、大丈夫だろ?」
「……慎也…!」
慎也さん、まじかっけぇぇえ!
だけどなぁ、竹山先生忍者なんだよなぁ。しかも強いし。もしバレたりしたらその後のお仕置きとかありそうで怖い…。実際そんなこと言ってられないほど事態は恐らくやばいんだけど……。
てことで、ここはお言葉に甘えますかぁ!
「悪い、慎也!じゃあ、行ってくる!」
「行ってこい!仲直りしろよぉ!」
俺は友達は少ない。ていうか殆どいない。それでも最高な友達がいる。今はそれで良いやと思ってしまった。
俺は教室をダッシュで駆け抜けた。そして、一気に昇降口まで行き、靴を履き替える。
「高島、どうした?忘れ物か?」
「げっ…!先生…!」
最悪だ…!まさか竹山先生に見つかるとは思わなかった!……すまねぇ!慎也!ここまでのようだ…。
先生は俺の顔をじろじろ見るなりして、何か分かったような顔をして頷いていた。
「なるほどなぁ…。うーん……仕方ない!良いだろう!先生の特権でお前を早退させてやる!深月の奴に感謝しろよ?」
先生は片手で頭を掻き、唸りながらそう言った。
先生、まじ神かよ…!かっこよすぎだろ…!
ん…?待てよ…?
「な、なんで先生分かったんですか…?」
「ん?あぁ、お前の師匠が使ってる奴と一緒の能力だ。まぁ、普段は使わないがな。」
「じゃあ、使わないでくれると助かりました…」
「そういうわけにもいかない。何せ、お前が昇降口にいるからだ」
「そりゃそうですよねぇ」
まぁ、でも師匠も使える奴が多いとかなんとか言ってたな。
とにかく、そのおかげで説明する手間が省けた。
「では、先生、早退します」
「おう。…気をつけろよ」
「……はい」
俺は靴紐を強く結び、マナを足に集中して紗由理の家に全速力で向かった。
〜〜〜
3分後。紗由理の家に着き、インターホンを鳴らした。すると、すぐにガチャリと玄関のドアが開く。
「はーい。…って浩介くんじゃない?!どうしたの?」
「すみません、紗由理いませんか?」
「紗由理…?紗由理なら学校に行ったとおもうけど…?」
「そうですか、ありがとうございました、では!」
「あら、お母さんによろしく言っといてねぇ〜」
「はーい!」
俺は急いでその場を後にした。変に心配させても後々面倒になりそうだしな。
そして、屋根の上に登り周辺をマナを通して見渡す。
師匠にはまだ悪魔との対戦は早いと言われていたが、そうも言ってられない。
「なん…だ……あれ…?」
数百メートル先に黒いマナがまるで火事のように湧いていた。
「あっちは……狐呼神社方面…」
絶大に嫌な予感がする。というかほぼ確定だ。あそこに紗由理がいる。
「くそがっ!」
俺は街を全速力で駆け抜けて、狐呼神社に向かった。
〜〜〜
「紗由理ぃ!」
俺は神社の階段を登りながら、紗由理を呼ぶ。
「……浩介ぇえ!!」
今紗由理の声がした!
俺はすぐに階段を登りきる。
そこにはあの日と同じ光景が広がっていた。
紗由理が木に張り付けにされているという光景。
しかし、1つだけ違った。
「よぉ………久しぶりだな…高島浩介ぇ…!」
紗由理の隣には数メートルある黒い塊、「悪魔」がそこにいた。
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