27話 本気

 


  「おいおい…?何固まってんだよぉ?俺だぜぇ?ずーっと一緒にいたじゃねぇかよぉ?」


  悪魔らしき黒い物体がねっとりと気持ち悪い口調で言う。実際、ごつい腕、ごつい足、膨れ上がった胸筋が目立つ人型だった。


  こいつなのか……?こいつが俺の人生を狂わせた張本人なのか…?

  俺は怒りに満ちていた。こいつがいきなり死に目に会うようなできごとを起こらせていたというのもそうだ。けれども、


  「……なぁ?俺が小4の時にここで紗由理を拘束した

 のはお前か…?」

  「何を今更…俺に決まってんだろぉ?」


  それを聞いた瞬間、俺の体が勝手に動きだす。紗由理に手を出したという事実に対する怒りが抑えられなかった。

  悪魔に向かって思いっきり斬りかかる。しかし、


  「ぐはっ…?!」

 

  逆に腹を殴られた。いや、腹に何かがぶつかってきた。


  「まぁまぁ、話をしようぜぇ…?キヒヒッ」


  気味の悪い笑みを浮かべると、悪魔は饒舌に語りだす。

 

  「俺は、お前の親が死んだことの悲しみによって生まれた悪魔だ。そして、定期的に出す悪感情を食って俺は存在していた。ある程度蓄えたからそろそろ離れようと思った。けどよぉ、お前が親の墓参りしてる時にまたあの時と同じぐらいの悪感情を出してきやがった。それを食った瞬間よぉ、もうこりゃ離れらんねぇなぁって思った。お前、相当な悪感情を出してたぜ?」

  「………」

  「そんでよぉ。もっと悪感情を食いてぇって思ったからお前にちょっかいを出した訳だけどよぉ。お前慣れんだもんなぁ。だからこいつを利用したってわけよ、キヒヒッ!」

  「っ!てめぇ…!」.

  「おっとぉ?動いたらこいつがどうなっても良いのかぁ…?」


  悪魔は紗由理の顔を指でなぞりながらそう脅してきた。


  「……くそっ!」

 

  俺は刀にかけていた手を下ろす。


  「最後まで話を聞こうぜぇ?」


  そしてまた悪魔が続きを語りだす。


  「けどよぉ!どういう訳か知らねぇがよぉ!お前が俺の張っていたバリアを殴って割ってくれたから邪魔が入って俺は一旦その場を後にしたんだよぉ。んでその邪魔した奴のせいで本気でちょっかいだすのが3年ぐらいかかったんだぜぇ?」

  「………」


  俺が中学生になってから不幸のレベルが上がったのはそういう理由なのか。

  それにしても邪魔って……やっぱりあの人なのかな…まぁ見てはないんだけど。


  「でも、お前はそれにも慣れてきやがった!だから少しの間時間をおこうと思ったわけだよ。どうせ毎年あの悪感情が食えるならいいかと思ってなぁ。でもよぉ、そこで現れたのがあの忍者なんだよぉ!」

  「師匠はお前を倒したんじゃ……?」


  確か、異質だったが倒したと言っていた。でもどうしてこいつはここに存在してるんだ?


  「あぁ、倒されたさ。けどよぉ、殺せてねぇんだよぉ」


  そんなのありかよ……?!


  「普通の悪魔なら斬られたりしたら一発で死ぬ。けど、俺はお前の特質な悪感情を食いに食いまくったから体が変異したんだろう、あの忍者に斬られても死にやしなかった。だからあいつは、俺の事を無数に斬りきざみやがった……!一瞬だった。理解が追いつかないスピードだった。それで俺は戦闘不能になった。けどよぉ、戦闘不能になっただけで死んではいないんだなぁ、これがよ!」


  「………」


  紗由理も捕まって、件の悪魔が目の前にいるのに、


  何やってんだよ師匠ぉおお!!


  と思わずにはいれなかった。


  「なるほど、そういう事か」


  後ろから聞こえてきた声に振り向くとそこには師匠が忍者服を着て立っていた。


  「その後再生した貴様は、浩介が小4の時と同じ作戦で紗由理に近づいて拘束すれば浩介の悪感情をたらふく食べることができる。そう考えたんだろ?」


  「あぁ、そういうわけだ。その時の悪感情は美味しかったしなぁ。しかも、こいつの悪感情も頂いたわけだから、まさに一石二鳥ってわけよぉ!まぁ、お前ほど美味しくはなかったが」


  悪魔は俺に指をさしながらそう言うと、腰を低く下げ戦闘態勢に入った。


  「俺はとりあえず、お前に復讐をする」

 

  今度は師匠に指をさして構える。


  「あぁ、貴様を今度こそ……」


  師匠は刀を抜き、


  「殺す……!」


  師匠は刀を悪魔に向け、そう言い放つ。

  俺は足が震えてしまった。師匠の目が本気だったからだ。あんな師匠の目は初めて見た。


  「我が弟子を傷つけたことを、後悔するがいい……」


  師匠は刀を構えたまま悪魔に突進する。


  「随分とカッコいいこと言うじゃねぇか。俺の計画を邪魔したことを後悔させてやる!」


  こうして師匠と悪魔の激戦の幕が上がった。

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