25話 幼馴染で親友
それからというものの、昼飯を食べたり、ゲーセンに行ったり、クレープを食べたりと、それなりに楽しい時間を過ごした。
ってこれ、デートみてぇじゃねぇか!きもちわりぃ!……ま、まぁ実際楽しかったから良いけど。
ちなみに慎也の頰は赤く腫れていた。前に言ったと思うけど、慎也は生粋の女たらしだ。良い女を見つけた!と言うと、その女性の手にいきなりキスをしビンタされ、というのを何度も繰り返して今に至る。
そのせいもあり、俺たちは注目を浴びてしまった。
まぁ、7割は俺の背負っている刀のせいなんだけど。
午後5時頃。
俺たちは帰路に着いていた。
「全員にフラれた……」
「当たり前だ。お前はいきなりすぎるんだよ」
「俺の顔で駄目ならもう浩介なんて…」
「俺ってそこまで駄目な顔?!マシな方だと思うんだけど…!」
そんな他愛のない、いつも通りにツッコミを入れながら話していた。
「じゃあ、俺こっちだから」
「おう、じゃあまた月曜日な、慎也」
俺たちは別れ道で別れ、それぞれの帰路に着いた。
「さて、そろそろ上がりますか」
俺は足にマナを集中しようとした時、前から歩いてくる人が見えた。
やべっ!気づかなかった!
俺は慌ててマナの流れを止める。が、そこを歩いてる人に俺は驚愕した。
「紗由理……!」
そこには、スーパーの袋を持っていた紗由理が歩いていた。おつかいの帰りのようだ。
俺の声に反応してこちらを見る紗由理。すると紗由理も驚いた顔をし、すぐに睨みつけてきた。
タイミングは最悪だけど、今しかない。
「な、なぁ、紗由理…?何で最近俺のこと避けてるっていうか、そういう態度をとるんだよ…?」
「……自分の胸に手をあてて聞いてみれば?」
「それでもわかんないから今聞いてんだろ?」
「…え?自覚なしでやってたの?何よそれ、ウケるんだけど……」
「………」
紗由理は嘲笑うかのように俺に突っかかってくる。
「約束を自覚なしで破るって相当メンタル強いよね、浩介」
「約束……?お前といつどんな約束なんてしたんだよ…?」
「お昼一緒に食べるって約束よっ!!」
紗由理の目は怒った猫の目のそれだった。
「お昼一緒に食べようって約束したのに、次の日には師匠と食うからごめんって……まぁ1回目は我慢したよ…?仕方ないって自分に言い聞かせたよ?でも2回目もまた師匠と食うからって言って。口では確かに仕方ないって言ったけど、寂しかった。クラスの皆は仲良くしてくれるけど、そこに浩介がいないならそれは意味ない!ただお昼食うぐらいって思うかもしれない!けど、それでも浩介といる時間を大切にしたい…。ちょっと、ほんのちょっとの時間でも大切にしたい…」
「………」
紗由理がこんなにも俺のことを思ってくれてたのに俺は、その気持ちを、思いを無下にしてたのか……。
「小学校高学年から中学生の間、あんまり遊ばなかったよね?多分、私がまた不幸に危険な目にあうからだと思う。それでも!私は一緒に遊びたかった!一緒にいたかった!深月くん(慎也)とも遊ばないでいた。その時の浩介の顔……本当に自殺するんじゃないかって顔だった……同時に誰かを殺すんじゃないかっていう顔だったんだよ…?」
「………」
この事は慎也にも言われてたことだ。あの時は本当に不幸に振り回される毎日で、怪我はしてないが不幸のレベルが急上昇したことについていけなくて、自分の不幸を恨んだ。多分、その恨みが殺気に見えたのだろう。
「だけど、高校になってからは浩介は元に戻ってた。不幸が起きなくなったって言ったから、不幸が起きてて一緒にいれなかった分、一緒にいようって思ってたのに……。一緒に……笑って…いたい…て思ってたの……に」
紗由理の頰に涙が流れる。自分の気持ちを絞りとるように、苦し紛れにそう言った。
「……ごめん」
としか言えなかった。
情けない。自分が情けない。約束したのに、破って、幼馴染で親友の考えていること、思っていることを分からずに無下にして。そんな自分が情けない。
「浩介の……バカ…!」
そう言って紗由理は、走って行ってしまった。
「……畜生…!」
何も言えなかった。忍者をやってるなんて言えない。言ってしまったら、紗由理を守ることができなくなってしまう。俺が始末されてしまうからだ。
畜生……!全部……約束も守れない俺のせいじゃねぇか…!
〜〜〜
休日が終わり、月曜日。
紗由理は学校に来なかった。
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