24話 束の間の休日



あの後、マシロに氷漬けされた俺たちはすぐに元に戻してもらい、その場を後にした。

家に着いた時にはもう昼になっていた。すると、師匠が意外な提案をする。


「さすがに疲れたと思うから、今日は修行は休みだ。自由にしていいぞ」

「………」


ただ単に師匠が疲れただけじゃね?もう顔に出てるし。変な汗とかかいてるし。

そりゃ、刀から式神がいきなり出てきたとなったら驚くか。でもあの師匠が疲れてるとこ見るのはなんか新鮮だ。


「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらいますわぁ…」

「あぁ、どっかに行くのは構わないが一応刀は持ってけ。何があるかわからないからな…」

「わかったよ」


俺は自分の部屋に戻り、スマホを取り出し、電話を

かける。

誰にだって……?慎也しかいないだろ。


「あ、もしもし、慎也?今から遊ばない?久しぶりに」

『あぁ、良いよ。じゃあ俺ん家集合な』

「あぁ、わかった、じゃあ今すぐ行く」

『了解!』


俺は電話を切る。

俺は慎也以外と男友達とほとんど遊んだことはない。だからと言って、女友達と遊んでるわけではない。むしろそっちの方がないな、うん。……悲しい!


出掛ける前に風呂に入り、それなりの服に着替え、準備をする。そして、刀を背負う。

あ、そういえばマナの性質変化で隠せるんだっけ?やってみるか…!

俺は袋に入れた状態の刀をマナで包み込む。そして、透明になるようなイメージをする。

それを部屋に置いてあった鏡に映してみる。

すると、刀は鏡に映ってなかった。


「よし、映ってないな…これなら大丈夫か」


だいたい袋に入れた状態でも端から見たらだいぶ怪しい。中二病と思われてもおかしくない。

俺は二階の窓から人がいないのを確認し、そのまま隣の家の屋根にマナの力で飛び移り、慎也の家に向かった。


……あ、靴履き忘れた……!



〜〜〜


10分後。

慎也が家の前でスマホに目を向けながら立っていた。

俺は慎也から見えない位置で屋根から降り、走って慎也の家の前に向かう。


「ごめん!待った?」

「……デートの待ち合わせ風に言うなよ」

「まさか俺がツッコミを入れられる日が来ようとは……」

「……浩介、お前のその背中にある奴何?」

「……え?」


俺は慌てて背中の方を見る。

……刀、見えてるじゃねぇか…!

あれぇ?師匠は一般人には見えないって言ってたよねぇ?!あれぇ?

「し、慎也ぁ。ちょ、ちょっと待っててくんね?」

「あ、あぁ、わかった」


俺は慎也が見えない位置まで素早く移動した。

そして、刀を取り出した。


「おい!お前ら!出てこい!!」


俺がそう指示すると、刀が白く光だしマシロたちが目の前に現れた。


「なに、マスター?今ちょうどお腹いっぱいになっちゃって寝ようと思ってたんだけど……」

「それより!俺、刀をマナで包み込んで見えないようにしたのに、一般人の友達に刀が見られたんだけど!どゆこと?!」

「私はさっきまで寝てましたので何も……」

「私もです、旦那様」


ノノやアマでも分からないのか。ていうか式神はよく寝るもんなのかぁ?まぁ、となると。


「マシロ。お前なんでか分かるか?」

「私はただマスターから送られてきたマナを食べてたから原因なんて知らないよぉ…。それより眠い」

「「「………」」」


どうやら、ノノとアマは原因が分かったようだ。そういう顔をしてる。…まぁ俺も分かったけど。

俺は目を擦りながらあくびをしているマシロのこめかみをグリグリし、怒りを露わにした。


「お前!お前のせいなんだよ!お・ま・え・の!どうしてくれんだよ!見られたんだぞ!?」

「いたいたいたいたいたいたい!ごめんなさい!マスターぁぁあ!」


さすがにこれ以上式神とはいえ女の子に手をあげるのはどうかと思い、こめかみから手を離す。


「いいか?!今からもう一回マナで隠すから、絶対にマナを食うなよ?食わなかったら後で存分に食わせてやるから!!いいな?」

「はーい…」

「分かればよろしい!……てことで2人とも、マシロのこと見張ってくれ」

「「はい」」

「よし、じゃあ3人とも、戻ってくれ」


そういうと、刀がまた光だし、3人とも刀に戻っていった。


「よし、じゃあ隠すか」


俺はマナで包み込み、性質変化をさせた。そして近くにあったカーブミラーで確認した。


「…よし、隠れてるな!じゃあ今度こそ行くか!」


俺は慎也のところに急いで戻る。


「浩介、長いよ。……んで?結局その後ろにある黒い奴は何なんだ?」

「…え?あ、あぁ、これは護身用に親から渡されたんだよ!ほ、ほら!俺、不幸なことが起きるじゃん?だ、だから親がわざわざこんな大きい物をくれたってわけだよ!ま、まぁ、中身は見ないで!って言われてるんだけどさ!」

「なんだ、そういう事か!それなら仕方ないか!じゃあ行くか!」

「お、おう!」


……言い訳が酷すぎた!慎也が単純な奴じゃなかったらどうなってたか…!そして、マシロ…!あとで覚えてろ……!


俺はマシロを恨みながら、慎也と繁華街に向かった。




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