15話 マナ修行



俺たちはその場からそそくさと逃げた。

師匠は一瞬で消えてたけどね。

俺は来た道をただひたすらに走って戻る。


「くそっ……!あんなことになるとは思わなかった……!これも悪魔に長い間取り憑かれていたせいなのかよ……?!」


だいたい不発とかならまだ分かるけど、爆発して消滅するとなると自分が恐ろしくなる。

……うん、本当に怖い。


「ま、まってくれよ、ししょーーーう!!」


師匠のオーラの痕跡が見えなかったので帰りは結構時間がかかってしまった。

あんにゃろう……絶対最短ルートで逃げやがった……!



〜〜〜


夜の11時頃。


俺はやっとの思いで師匠の家に辿り着いた。

行きは10分で行けたのに……!


「おい!師匠!なんで先逃げちまうんだよ!帰り道迷っちまったじゃねぇか!」


俺は玄関のドアを開け、ズカズカとリビングに入っていく。


「いやだって、……なぁ?」

「なぁ?じゃねぇよ!あんなに木が生えてたのに一気に消滅しちまったじゃねぇかよ!」

「それはお前の語彙力が足らないのと、長い間悪魔なんかに取り憑かれていたせいだ。私に難癖つけてくるな。」

「あぁそれ言っちゃいます?それ言っちゃったら師匠失格も良いとこですよ?!」

「仕方ないだろ?例外も良いところだ。下忍にもなってないお前があんなマナを放出するとは思わなかったんだ。」

「それを考慮して弟子に修行させるのが師匠ってもんだろ?!」

「わかった。お前はマナのコントロールが下手なんだ。だからコントロールさえ上手くなればお前はそこら辺の下忍よりは圧倒的に強くなれる。」

「挙げ句の果てには俺のマナのコントロールのせい?!」


一度もやったことないマナ放出にケチをつけられるとは思わなかった……。


「また風呂に入るのもなんだろうから、家の外で簡単にマナのコントロールができるやつをやるとしよう。」

「最初っからそれやれば良くなかったんじゃ……?」

「それを言ったらおしまいだ。」

「あ、自覚あったんだ。」


まぁ、とりあえずやってみるか!




俺たちは家の外に出た。と言っても庭なんだけどね。

まぁ、家の前でやるわけにもいかないよな。


「じゃあ、まず自分の体からオーラを出ているイメージをしてみろ。さっきやったのと同じだ。脳の中にマナを流し込むようにだ。」

「おう!」


俺はさっきと同じように目を瞑り、頭の中でイメージした。

そして、自分の体を見る。やはり、黒色のオーラが滲み出ていた。


「よし、そしたらオーラを右手の人差し指の先に全部

集めてみろ。さっき私がやってみせたのに近い練習だ。最初のうちは全神経を指の先に集めるイメージでだ。これを繰り返しこなせば、簡単にコンマ数秒でできるようになる。マナを指先に流し込むように。」

「お、おう……。」


くっ……!意外と難しい。

オーラは人差し指にはいくが、先というとこまではいかず、指全体を包み込む状態になった。


「初めてでそこまでできれば上出来だ。いいか?そこから指先一点に集中だ。そこにだけ力を入れてみろ。」

「あ、あぁ。」


すると、指先に半径2センチ程度の球ができた。

なんか、マナ放出の前に似てるな……。


「あぁ、お前はこの過程をすっ飛ばしてマナ放出をしたからな。」

「それはすいませんでしたね!」

そう力んで言った瞬間、気の緩みのせいだろう、………


「「……………。」」


俺の指先に集まっていたマナが放出され、師匠の家に数十センチの穴が空いてしまった。よく見ると、その奥の方も穴が空いていた。

どうやら貫通してしまったらしい。


「「ま、まさかな。」」


俺たちは師匠の家の玄関先に回りこむ。


「………風呂入って寝ますか。師匠。」

「……ああ、今日は疲れたろう。明日の修行のために早く寝るように……。」


俺たちは何も見てない……!


俺たちの目の前で住んでいる人の家に穴が空いている……。なんて光景は決して見ていない……!!




〜〜〜



朝の6時ごろ

日が見えるか見えないかという時間帯に師匠に叩きおこされた。

今日も学校があるというのにこんな早い時間に起こされると授業中に寝てしまう。

俺は目を擦りながらも一階のリビングに向かう。

中に入ると師匠は犯人スーツを着ていた。


「おい、それじゃあ私がなんかの犯人みたいではないか。」

「いや、実際そういう格好してるからね?多少模様が入ってても遠くからみたら犯人そのものだからね?」

「はぁ……まぁ、いい。早速だが修行だ。そうだな……制服に着替えといたほうが良いな。着替え終わったら庭に来い。」

「いきなりか……。」


俺は溜め息をつきながら、だらだらとまた自分の部屋に向かう。

「……文句あるなら、斬るが……?」

「わぁあ!修行が出来てマジハッピーだなぁ!?」

「よし、斬る…!」

「わかりました!早く着替えてきますから!?」


俺は慌てて部屋に戻った。



俺は速攻で制服に着替え、庭に出た。

「よし、それじゃあマナの性質変化について修行する。」

「セイシツヘンカ?」

「あぁ、これを身につければ私ほどではないがそれなりに速く行動ができる。もちろん悪魔退治にも役立つわけだ。」

「おお!そうすれば、学校に行く時楽だな!」

「その分、体に負担がかかる。まぁ慣れればいけるがな。」


まぁ、それ相応のデメリットは出るわなぁ。

でもこういうのを身につければ体育の授業とかで使えるな…!


「ちなみに日常生活で使えば私がマナを感じとってすぐにお前をしばきまわしにいくからくれぐれも使わないように。」

「えぇ、ダメなのかよぉ!」

「あぁ、登下校はともかくとして授業でとかは駄目だ。」

「はいよ。」


まぁ、他の人にバレたりしたらそりゃ大変なことになるわからなぁ。


「まあ、これもイメージでどうにかなるもんだ。なんでもいいからとりあえず、どうやったら速く動けるかとかをイメージしてみろ。」

「またイメージかよ!」

「だってイメージするしかないんだから仕方ないだろ?」

「……もう師匠の意味あるのそれ?」

「言わないでほしかったその言葉……!」


師匠はあからさまにショックを受けていた。

ほぉ、師匠モードでも感情の起伏ってのは一応あるんだな。


「……まあいい、とりあえずやってみろ。」

「はいよー。」


そうだなぁ……。速く動けて、かつ速く攻撃できるようなのがいいなぁ。

……でもこれじゃあ、四つん這いになるんなぁ。

とりあえず、やってみるか!


「お?なんか浮かんだか?」

「まぁね、とりあえず見てて。それで評価をくれ。」

「あぁ、わかった。」


俺は四つん這いになる。いや、正確に言うと四足歩行状態になる。

そして、両手両足にマナを集中させる。

そのマナをよく弾むボールにイメージして維持させる。


「おぉ、まさか一発でできるとは思わなかった。」

「え、そうなんですか?」

「あぁ、しかもその体制といいマナの性質といい。

しかも、もし敵とかと遭遇した時にそれを発射するんだろ?よく考えたなぁ。ちょっと動けるかどうか試してみろ。」

「お、おう……!」


俺はそのまま宙高く飛ぼうと腰を下げ、そして、

マナの力を使って、飛んだ。

………真後ろに。


そりゃそうなるわなぁ。

だって、まともにマナ放出もできない俺が、いきなりこんなやったこともないことをやってもそりゃ成功しないわなぁ…。

俺はそのまま壁に背中から激突した。

「ぐはぁっ!!」

まじ痛い……!


「そうじゃなくて、マナの方を動かしてみろ。そうすればうまくいく。もう一回やってみろ。」


おい、俺今壁に激突したばっかなんですけど……。


「知らん。良いからやれ。今日の登下校はそれで帰ってきてもらうつもりだからな。マナと体力の修行ができて一石二鳥だ。」

「ゲホッゲホッ!……あ、あなた一石二鳥好きだなぁ。」

よく俺はツッコミを入れられたなぁ。自分で自分を褒めてやりたい!


とりあえず、やってみるか!

そう言って俺はまた試してみることにした。

いや言ってないんだけどさ……。



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