14話 マナ



夜ご飯を食べ終わるといつのまにか10時になっていた。

それにしても、眠くない……。

あんなに今日走ったのに疲れない……。

なんでだ??

まぁ、疲れないことは良いことだしな!

それより師匠に話があったんだった。

俺は用意されていた自分の部屋を出て師匠のところに向かう。




師匠はキッチンで今日の夜ご飯に使った皿などを洗ってくれていた。


「師匠、手伝います。一応弟子ですから、こういうのは出来といた方がいいでしょ?」

弟子というのは、まず雑用をこなさないとな。

漫画とかは修行せずに雑用だけみたいのが多いからな……。

そう考えると、結構優遇されてる方だと感じる。

まぁ、雑用だけさせる師匠もどうかとは思うが……。


「あ、ありがとう、助かるよ。」

「お、おう……。」


プライベートモード……やりずれぇ!!

確かに可愛いんだがやりずれぇんだよ!なんだ、あの女子って感じは!?師匠モードと全然かけ離れてんじゃねぇか!

もう別の人格だよ、これ!

……いかん! 本当は話があったんだった。


「そうだ、師匠。あとで実際にマナを使ってるとこを見たいんだけど……」

「あぁ、構わない。食器を片付けてたら見せてやる。」

「あ、ありがとう……。」


急にモードチェンジされても困るんだよなぁ……。



皿洗いが終わり、俺たちは外に出た。

しかも、師匠は俺が初めて会った時のあの犯人姿に見える服を着ていた。

しかし、よく見ると多少模様とか入っていてオシャレだった。

それにしても、ここで修行というのはまずいと思うんだが……。

ここは山に囲まれているとはいえ、一応住宅街だ。

こんなところでマナを使うとなると、音や光とかで周りの住人に迷惑になるんじゃないのか……?

しかも、師匠が使うマナだ。上忍が使うマナだ。それなりのものに決まっている。

……まぁ、見たことないから音とか光が出るかどうか分からないけど。


「大丈夫だ。ここから少し移動して、山の中に行く。

って言ってもたったの3kmだ。」

「いや、遠くない?!しかも風呂上がりだし!」

「また入ればいいだろう。」

「え、めんどい。」

「うわ、不潔。」

「そういうのじゃないから!あと、真顔で言うのやめて!傷つく!」


……俺、ツッコミは好きじゃないんだが……。

まぁ、一応動きやすい服に着替えといたから良いけども…。


「じゃあ、良いな。私は先に行く。お前はマナを使って私についてこい。これも修行だ。」

「いや、でもマナ使ったことない……」

「大丈夫だ。イメージでいうなら漫画とかアニメにあるあのオーラを頭の中でイメージしろ。」

「オーラって……」


文句を垂れながらも、師匠を見ながらオーラが出てるイメージをする。

すると、すぐに師匠からオーラが出てるのが見えた。

紫色のオーラが師匠の体の色んなとこから滲み出ている。

……それにしても、見えずらい…。


「オーラはマナ容量と比例して排出量が変わる。マナ容量が多いやつほどオーラが多く出て、マナ容量が少ないやつほどオーラが少なく出る。だが、マナの特訓をすれば、オーラの排出量を調整できる。そうすれば対人戦の際、相手を油断させることもできる。」

「へぇ〜……」


俺は相槌をしながら、自分の体を見る。


「うわ!めっちゃ黒いのが出まくってんですけど……!」

しかも、めっちゃ出てる!

なんか悪者みたいだ。

「悪魔に長い間取り憑かれていたせいだろう。恐らく、世界で探してもオーラが黒いのはお前だけだな。」

「へぇ〜…!」


なんか、俺だけってなると特別みたいで良いな…!


「オーラは痕跡が残りやすい。たとえ微量だとしてもだ。だから、その痕跡を辿ってこい。体力もつけられるし、マナの修行もできる。一石二鳥だ。それじゃあ、ついてこい。」

そう言った瞬間、師匠の姿が消えてしまった。


「…いや、それでも早すぎるだろ!?」

上忍レベルになると、あんな風に動けるのか……?

体育の授業の成績は5確定だな、こりゃあ……。

でも、よく見れば痕跡は確かに残っていた。

……まぁ、屋根の上とか高いところだけどね…。




〜〜〜


「ゼーハーゼーハー!!」


……オーラ見ながら走るのキツすぎるんですけど?!



「それはそうだ。オーラ見るのにマナを使うんだからな。マナを消費すると体が重くなったり、怠くなったりする。」

「やっぱり、……そういうお決まりなのはあるんだな……。」

「あぁ、しかも脳にマナを流し込むから負担が大きい。人間の中心だからな。」


そういえば、自然と脳に行ってたなぁ……。


「目に流し込むのはまだ修行不足だ。まあ、すぐにできるようになる。そうすれば、悪魔も見れるようになる。」

「あ、そういえば徘徊してるって言ってたのに全然見えないからなんでだろうって思ってた。」

「悪魔たちは私たちとは裏の世界にいる。まぁ、鏡の中の世界と言った方が良いかもな。そこで徘徊している。それで、マナを通して見ることによって、自然と鏡の世界に行けるようになる。そこで、悪魔を退治する。というのが、忍者の主な仕事だ。」

「はい、でました初耳情報!」


なんか設定話を聞かされてる気分になってきた。


「それより、マナを使うとこを見たいんだよな。」

「あぁ、頼むよ。」

「わかった。じゃあ、あの木を見てろ。あの木を今から千切りにする。」

「ま、まじか…。」


すると、師匠が刀を構える。

俺は師匠と今から千切りされるであろう木を同時に見渡せる場所に立つ。

そして、師匠のオーラを見る。

「こりゃ……ちょっとやばそうだな……!」


これは素人でもわかる。

師匠はオーラを全開なのかどうかはわからんが、さっきより遥かな量のオーラを出していた。

そして、そのオーラが一気に刀身に注がれ、纏わりつく。

「ちょっと強めにやる。しっかり見てろ。」

「お、おう。」


こりゃ夢なのだろうか……。

頬をつねってみたがただ痛いだけだ。


「……すげぇ!これが……マナの力!」


なんと、刀身が師匠の持っていた刀の刀身の2倍の長さぐらいになっていた。マナを使うと刀の補強みたいなのができるってことか……。


「いくぞ……………、参る!」


何か呟いたあと、木は一瞬にして、そして本当に千切りにされた。

斬り終わると、師匠のオーラは元の排出量に変わっていた。


「今のが、マナ補強だ。これは中忍ぐらいになれば使えるぐらいのレベルだ。」

「……………。」


俺は口を開けたまま、呆けていた。

本当に漫画のような世界に驚きが隠せなかった。


「すげぇよ!師匠!本当に千切りにするとは思わなかった!」

「ふっ……まぁ、これでも上忍だからな。」


自慢してやがる……。でも自慢できるぐらいすごかった!!


「今からお前にはマナ放出をやってもらう。これもイメージが必要だ。魔法を使うイメージが一番近いだろう。やってみろ。」

「おう!やってやるぜ!」

「狙いはあのちょっと小さめの木だ。あれを木っ端微塵にできなきゃ話にならん。マナ放出は下忍でもできることだ。」

「おう、やる前にプレッシャーかけないでくれよ…」


俺はそう嘆きながら、左手を前に突き出し、掌を目標の木に向ける。一応、右手で左手首を抑える。

これで左手吹っ飛んだら嫌だし。

……イメージだイメージ……!魔法を使うようなイメージ!そうだなぁ、球を出す感じだ!……、よし行ける!

目を瞑りながらイメージトレーニングできた俺は目を開けると、俺の掌には確かに球みたいなのが出来ていた。黒いけど……。


「よし、そのまま撃ってみろ。何かそれらしいことを呟けば、発射できる。言葉によって、威力も変わるけどな。まぁ、語彙力も試されるな。」

「ここにきて、まさかの語彙力が試されるなんて……!」


俺は驚嘆しながらも言葉を考える。

どんなのにしよう……!ちょっとかっこつけたいよな?でも師匠の目の前でやるの恥ずかしい!

くそ!こうなったらやぶれかぶれだ!


「マナの力よ!目の前のモノを粒子残さず吹き飛ばせ!!」

その刹那、俺の掌にあった黒い球は勢いよく飛び出し、…………

目の前にあったほとんど木を本当に粒子が残ってんじゃないかというぐらい、吹っ飛んだ。

勢いつけすぎちゃった…。

師匠の方を見ると、目を丸くし顎が外れるんじゃないかというぐらいに口が開いていた。

うん、俺も今そういう状況なんだけどさ。


「「よし、逃げるか。」」


まさか、師匠までそう考えるとは思ってなかった。


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