10話 あの時の出来事 前編



その後、5時間目、6時間目が終わり、帰りのHRも終わり、放課後タイムに突入。

今日は、というより今日も色々あったな……。

朝は走らされるし、昼は師匠がなんか怖かったし、結局修行しないと周りの人たちに迷惑がかかるってことがわかるし……。

しんどい。しんどいけども!これも俺の普通ライフを送るためだ!

多少の犠牲はやむを得えん!そうだ!こういう時こそ、ポジティブに!だ。

俺がガッツポーズをしてると、紗由理が俺の前に立っていた。

「浩介は何一人でにガッツポーズしてるのよ…。

それより、帰ろう。……あ、でも、あ、あの人の家に行くんだっけ……?」


あの人……?あぁ、師匠のことか。


「いや、一旦家に帰るよ。師匠の家にこれからお世話になるからその理由をしないといけないからな。」

俺がそう説明すると、紗由理があからさまに不満顔だった。

……おいおい、どうしたんだよ、紗由理さん……。


「理由って?」

「…え?」

「だから、その師匠さんの家に泊まる理由よ!」

「理由って……修行だよ、修行しないといけないからね。」


そう言い切ると、さらに不満顔になり、


「夜の修行?」

「ちゃうわ、ボケ!」


やべ、関西弁が出ちまったよ……。急にボケてきたから素でツッコんじゃった……。


「…じゃあ、何の修行なのよ……」

「それは……い、色々だよ。色々……。」

「やっぱり……夜の修行なんじゃない…。」

「それだけは違うから、いやほんとまじで!」


紗由理のボケはどうやらマジのようだ。

しかし……これは対応に困った。

師匠からは紗由理には言うなって言われてるし……。

どう説明すれば良いだろう……。

忍者の修行してんだぜ!

………これは無いな。ていうか言っちゃってるしなぁ…。

わり、ちょっと急いでるからまた明日!

………これも無いな。どうせ明日責められるに決まってるし……。

実は、本当は夜の修行をするんだ……。

………逃げれる、逃げれるけど俺が社会的に終わる……。

俺が苦悩していると、紗由理が溜息をついた。

「……どうせ言わないんでしょ?師匠さんに止められたりしてるんだろうけど……。言わないかわりに1つだけ条件!……いや、2つ!この2つの条件をのんでくれるなら言わなくて良いよ!」

「…お、おう…。」


紗由理が珍しく折れてくれるなんて……!

紗由理は普段、隠し事となると何が何でも聞き出そうとするのに……。やはり、高校生になって成長したのか…!俺は感動だぜ……!


「まず1つ目!言えるようになったら絶対に言って!」

「おう!」


でも、俺が忍者の修行してるなんて言っても信じてくれんのか?

俺が「不幸体質だ!」って言っても最初の方は言ってくれなかったのに…。


「そして、2つ目!………絶対、絶対あの時のように無茶しないで!怪我しないで!そして、修行なんだから強くなりなさい!……まぁ何の修行か分からないから応援しづらいけど……。」

「お、…おう。」


なんか、条件がめっちゃ増えたような気がするけど。

あの時、か…。そうだな、あの時のような事は二度とごめんだしな。

幼馴染から応援もらったからには、ちゃんと強くならないとな!

正直面倒くさいけども!


「応援ありがとな!」

「べ、別に…!応援という応援じゃないけど…」

「ツンデレかよ」

「ツンデレじゃないわ、ボケ!」

「ぐはぁぁあっ!」

また、腹パンされた。もうそろそろ勘弁してほしい……。

息できなくなるんだぞ、腹パンてよぉ……。


「早く帰りましょう!」

そう言うと、紗由理はスタスタと歩いていく。


「ま、待てよー!」

俺はその後をついていく。

……いや、ほんとまじで付き合ってないからな…?



〜〜〜


午後4時ごろ

俺たちは帰路に着いていた。

俺はさっき紗由理が言っていた「あの時」のことを思い出していた。

さっきから紗由理がなんだかうるさいが俺は思い出浸っていた。

本当、「あの時」の出来事は大変だったなぁ……。

は〜い、ここから回想入りまーす!


--------


それは俺がまだ小学4年生の頃の事だ。

確か夏休み、不幸体質だった俺は友達と遊ぶ事は出来ず、一人で散歩をしていた。

ごめんなさい、この時友達という友達はいませんでした。


散歩してないで家にいた方が安全って……?

仕方ないじゃん、暇だったんだもの。

しかも不幸体質になってから3年が経つ。さすがに不幸には慣れていた。なので、多少の事は驚きもせずに普通に散歩していた。まだ小学4年生だったからなのか、不幸の度合いが小さく、たまに掌サイズの石が顔面目掛けて飛んでくるくらいのレベルだった。


それでも危険じゃねぇかって……?

仕方ないじゃん、慣れてたし、不幸体質になったおかげで反射神経とか鍛えられちゃったんだもん。

あぁ!回想進まねぇ!

まぁとりあえず、石とか30センチものさしぐらいの木の枝が飛んでくるだけで普通に散歩をしていた。


「何石と枝で遊んでんのよ。」

とここで俺の前に現れたのが紗由理だ。

この時の紗由理にはまだ不幸体質のことを話してなかった。

なので俺は

「いや?別に?ただちょっと、野球したいなぁとか……思ったり?」

「だったらバットとボールを使えばいいじゃない?」

「……ごもっともです。」

まぁ、この時の紗由理には多少勘付かれてたんだろう。


「それで……?本当は何してたの?」

「あぁ、ただの散歩だよ。」

「わかった、暇だったんでしょ?」

「なんでわかんだよ!」

「だって幼馴染だもの!」

「そりゃ関係ねぇだろ!」

「ねぇ、どうせ暇でしょ?」

「さ、散歩中だよ!」

「だったらさ、いつもの神社いこう?私も暇だしさ、ね?」

「……わかったよ」

ってことで神社に行くことになった。

俺、昔から紗由理相手に弱ぇぇ……



10分ぐらい歩くとそこには、ボロい鳥居にボロい賽銭箱、ボロい……あの建物なんて言うんだろう?本殿だっけ?まあ、屋敷としよう、ボロい屋敷がある。なんの変哲もないどこにでもある普通の神社があった。

ここが俺らがいつも行ってる、狐呼(ここ)神社だ。

少し名前が変わってるが、昔から狐があの屋敷から出てくると噂になっていた。

参拝しようと思ったが、お金を持ってなかったのでやめといた。

俺らはそこら辺の日陰に座ってまた他愛のない話していた。


え?紗由理が不幸の巻き添えになるって?

それは大丈夫!紗由理が俺から目を離したその瞬間を狙ってやってくるからだ。紗由理とここにくるまでも10回以上やられたしな。

あぁ、慣れって怖い怖い……。

だけど、この神社にくると不思議と不幸が止む。

今思うと、悪魔とかはこういった聖域に弱いかもしれない。もしかしたら、お札とかにも弱いかもしれない。あぁ、くそ!師匠とはやく出会っていれば、俺のお小遣いを奮発してでも買いまくってたのに……!

そんなこより、回想回想っと。


「浩介って学校とかで私以外とあんま話さないよね?」

「ま、まぁな。」

「友達いないの?」

「ま、……まぁな?」

「ふーん」


言えない…!小1の頃は不幸な事で精一杯で他の人のことなんて考えられなかったなんて言えるわけがない!

言ったら絶対に引かれる!


「私は?」

「…え?」

「私は……友達じゃないの?」


ワオ!なんつードストライク質問!これは効果抜群だ!

やばい!なんて返そう!あっ、そうだ!


「馬鹿言うな、お前なんか友達じゃねぇよ。」

「……そ、そうだよね、……うん、知ってた…」

俺はそこで紗由理の両肩を掴んだ。

「友達じゃない、親友だ!」

「こ、浩介……!」


決まったーー!名付けて、「下げてから上げる作戦!」

まぁ、親友だとは思ってたけどね!……嘘じゃないけどね!


「ゴホン……紗由理も人の事言えないよな、俺以外と話してるとこあんま見たことないし。」

「だって、それは……浩介が…その……心配だからよ!」

「心配?」

「そうよ、心配よ心配!別にいいじゃない、なんだって!」

「そ、そうか…」


心配してくれてたのか……なんか照れくさいな。

まぁ、そうだよなぁ。俺は両親亡くしたし、不幸なことが何度も起こるし、正直表情とかやばかったかもなぁ。絶対死にそうな顔してただろうなぁ…。

そう思うと、なんか申し訳ないなぁ…。

よし!なんか奢ってやるか!


「そうだ!紗由理!あとで家帰ったらよ!ジュー……スってあれ?紗由理…?」


そう、ちょうどこの時。

紗由理がどっかに消えちまったんだ。



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