9話 忍者について 後編



「話を戻すが、お前が言ったように隠密行動は得意だ。そして、情報収集をする」

「うん、言ってはないけどね?思っただけだけどね?」

「チャ◯ラは使わんが、マナを使って徘徊している悪魔を殺すのが忍者の仕事だ」

「スルーするのは良いけど、もうちょっとオブラートに包めよ!今飯食ってんだからよ!」

「うるさいなぁ。わかった、退治な、はいはい」


師匠も高校一年生ならもうちょっと女らしくしたらいいのに……。

女の子が殺すというとなんか怖いしな…。


「女らしくなくて悪かったな……」

「すみません!すみませんでした!だから、拳を握らないで!」


はぁ、疲れる……。ていうか、一向に話が進まない。


「まぁ、いい。これが忍者の大まかな仕事だ」


要するに悪魔退治集団ってことか。

まぁ、そこら辺に徘徊されてちゃ困るからな、退治してくれてるならありがたい存在なのだろう。

でも、最初っから納得いかないのが、忍者と忍者が戦うなら良いが悪魔って……。

そういうのは、陰陽師とかが出番だと思っていたの……。

いや、陰陽師って妖怪とかだっけ……?

まぁ、いい、聞けばわかることだ。

「師匠、悪魔とかっていうのは本来忍者じゃなくて、陰陽師とかが倒すんじゃないの?」

「あぁ、本来はな」


何か訳ありって感じだな。

まぁ大体想像できる。陰陽師の一族が消滅したとか、そこら辺だろう。


「400年も昔、実は陰陽師の一族は生粋の怠け者たちばっかでな。

悪魔はもちろん、妖怪などの魑魅魍魎の退治を面倒くさがっていた。そこで、忍者の里の忍たちにある任務がくだった。陰陽師の村のどこかにある、陰陽師の力が記された書物を手に入れろと、な」


………生粋の怠け者って……。

俺の陰陽師のイメージが悪くなった。

もっと賢い人たちだと思ってたんだけどなぁ…。

実際色んなゲームで使われてる陰陽師って格好良かったり、頭良い人風なんだけどなぁ……。

あの安倍晴明も怠け者だったのかなぁ……。

それだけはないと信じよう。


「任務実行の日、数人の忍で陰陽師の村へ出発した。侵入するので、夜まで入口の付近で待機するという戦略で行われた。

日の沈みかけた頃、入口付近に到着するが村の周りは結界のようなものに囲まれていて、中に入ろうとすると電撃のようなものが身体中に走るというものらしい。実際にイノシシが結界の中で焼け死んでいるのを見てわかったことだ。

真夜中になるが、まだ結界を破く方法が見つからず結界周辺の探索していた時、大きな岩に張り付いているお札のようなものを発見した。それを剥がすと結界が何か音を立てながら消えた。結界を破られたときの警報かと思い周辺を警戒していたが、誰も来なかった」


それは恐らく陰陽師が怠け者だからなのだろう……。

しっかりしてくれよ、陰陽師…。


「結界が消えた後仲間と合流し、一番偉そうな屋敷に侵入した。その屋敷の書斎室のような場所に侵入すると、やはりというべきか、陰陽師の力が記された書物が数十個もあった。それを奪取し、陰陽師の村をさった。

翌日、陰陽師の村は魑魅魍魎たちの襲撃により消滅した。……と、この巻物にはそんな風なことが書いてある。まぁ、陰陽師の村が消滅したから仕方なく、陰陽師の力を知っている我ら忍者が妖怪らを退治したってことになる。まぁ、実際忍者の里の主と陰陽師の村の主が仲が良かったらしく、里の主が『友のために』ということで悪魔退治が始まったそうだ」

と、巻物をひらひらさせながら言った。

…………。

俺は何も言えなかった。決して話に感動したわけではない。この話に感動する部分があるとすれば誰か教えてくれ……。

俺が何も言えなかったかというと、陰陽師もそうだが、忍者もアホすぎたからだ。


「……何故この話から忍者がアホと言われなければならないのだ。」

「当たり前でしょ!?忍者たちが結界のお札を剥がしたせいで悪魔たちが村に入ってきたんだろ?!しかも夜だぞ!眠ってたからなす術なく襲われたに決まってんじゃん!しかも、俺は思っただけで、言ってないから!」


忍者って天然なのか……?

しかも主たちが仲良かったなら交渉とかで書物を貰えばいいのに……。


「……お前、私たちの主にならないか……?」

「そうなったら俺が一番強い立ち位置になるけど良いのかよ!」

「あ……そうか、じゃあ駄目だ馬鹿」

「あんたが馬鹿だろ」


本当に天然だな……。

この人だけじゃなくて、他の忍者も天然なのだろうか……。

ちょっと心配なんですけど、忍者……。


「まぁ、その時の主の方針によりその陰陽師の力を使って悪魔退治をしていたら、いつのまにか悪魔退治が仕事になっていったらしい。

たまに人との殺り合いがあるとのことだ。」


いつのまにかって……。


「じゃあ、師匠も人を殺したことがあるってことですか……?

「………………」

師匠は俯いたまま、何も言わなかった。


あ……やっちまった……!

さすがに今の質問はまずい!俺はなんて失敬なやつなんだ!


「す、すいません今の無しで……」

「ある」

「……え…?」

「……あるに決まっている。それが忍だからな」


淡々と師匠はそう言った。いつもの表情で。

俺もアホのようだ。

人の事言えやしないな……。


「今日はここまでだ。もう時間もないしな。お前はちゃっちゃと食わないと遅れるぞ?」

「……ぅお!やべ、食い忘れてた!」


俺は弁当の中身を口に一瞬で掻き込む。

この弁当は購買で買った弁当だ。決して、師匠が作ったものではない。……作って欲しかったけど。


「あ、そうだ、お前帰りも走って帰れよ?」

「えっ…!帰りぐらい良いじゃないですか!」

「お前に拒否権はない。罰もちゃんとやっていなかった奴にな。」

「バ、バレてたのか……!」

「……その前に一度家に帰って親にしっかり報告してから走って私の家に来い。その方が親も安心するだろう。着替えとか持ってくるように。同じパンツを何度も履きたくないだろう?」

「へ、変なこと言うなよ……。あ、ひとつ質問」

「……なんだ」

顔見ればわかるくせに……。


「俺が忍者の修行していることや、悪魔のことを家族に言ってもいいのか?」


俺は正直、言いたい。というより、言わないといけないと思う。

悪魔のことで家族が危険に晒されたら大変だからな。

あと、俺が悪魔に狙われてるってことを言わないとな。じゃないと、修行をしてる理由にならないしな。

師匠は俺を最強の忍にしたいそうだが、俺はどうでもいい。俺の身、また俺の周りに居てくれる存在を危険に晒さないようにする。これが俺の修行する理由だ。


「あぁ……好きにしろ。ただし、お前の幼馴染の紗由理……だったっけか、そいつには絶対に言うな。

そいつは本物の一般人だ。わかったな?」

「了解、師匠」

「分かればよろしい」


師匠はそう言って笑うと、屋上を後にした。


「………帰ったら謝ろう……。」


俺はその一瞬を見逃さなかった。

師匠が屋上のドアを閉めるその瞬間、目が笑っていなかったからだ……。

聞かなければ良かった……俺もどうやら結構なアホのようだ。

その時、5時間目の5分前の予鈴が鳴った。


「やべ、行かなきゃ…!」


俺は走って屋上を後にした。

謝るついでに、師匠がマナを使うところ見てみたいなぁ……。

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