8話 忍者について 前編


それから2時間目〜4時間目はあっという間に時間が過ぎていった。もちろん、忍者の存在や悪魔について考えていたからだ。



その1 どうして、俺の前に現れたのか。

この事は、もう解決している。………多分。


確か、俺に悪魔が憑いていた。本来なら憑いたとしても1週間、最悪でも1ヶ月経てば離れて、そこら中に徘徊するらしい。そこで師匠が現れて、俺の悪魔を殺した。でも、どうやらその悪魔は異様だったらしい。

そりゃあ、10年近く憑いてれば多少なりとも変化はあるだろうと思った。


その2 どうして悪魔が俺に長い間憑いていたのか。


これについてはどうも納得いかない。俺は両親を交通事故で亡くした。今ならさらりと言えるが昔はその現実をとらえようとしなかった。そのせいもあるかもしれないが、悪魔がずっと俺に憑いていたのかもしれない。悪魔は悲しみなどで生まれ、そして悲しみを食って生きていると師匠が言っていた。しかし、俺はあの家族に巡り合ってから、十分楽しい生活を送っていた。今のお母さん、要するに義母はとても明るい性格ですぐに感情に流されるような性格だ。それ故にとても家族想いだ。義父も明るい性格で、結構ワイルドだ。ちなみに冒険家だ。そのせいであまり家にいないようだ。まぁ、冒険家だし当たり前か。

兄妹たちは、長女の成瀬 若奈、14歳と、長男の流星、11歳と、次女の千夏、13歳がいる。結構歳が近くて驚いた。

あ、ちなみに俺の姓は成瀬ではない。わかってると思うけど……。何故か分からんが市役所で高島のままで平気だと言われたらしい。

正直、俺は高島のままが良かった。両親のことを忘れないためにだ。

みんな、活発的だからすぐ仲良くなれた。

皆、今では本当の家族だと思っている。いや、もう家族だ……!

話が逸れたが、成瀬家に迎えられてからは本当に幸せに暮らしていた。

「不幸」は最初の方は本当に恐怖そのものだった。

あんな頻繁に起こってればそうなるかもしれないが、頻繁に起こったおかげで自然と慣れがでてきた。慣れのおかげで、俺は恐怖に慄くことは無くなったはずだ。にもかかわらず、俺に憑いていた。

それは恐らく、毎年行っている両親の墓参りのせいだろう……。普段の墓の掃除などは義母……いや母さんがしてくれてるので一年に一度だけ行くことになる。

俺はその度に悲しくなってしまう。そのせいで悪魔がずっと憑いていた、という結論に俺は至った。


その3 これからの修行についてだ。

正直、家に帰りたい……。でも、師匠曰く、

俺の体は悪魔にとって居心地の良い器、らしい。

それで、その器に入ろうと悪魔たちがお前の前に現れる、

俺には悪魔を見る術がない。それも修行で身につけられるだろうけど、面倒くさい。

とにかく面倒くさい。俺は普通に過ごしたいのに……。

どうやら、この世は俺を普通に過ごさせてくれないようだ……。

とりあえず!とりあえず一旦家に帰って現状報告をしたい。親には曖昧に言っといたが、ちゃんと説明しときたい。

そこらへんを今日の昼休みに師匠に聞こう。

とそこで、4時間目終了のチャイムが鳴った。

俺はすぐに弁当をカバンから出し、立ち上がろうとした瞬間に、紗由理が俺に声をかけてきた。


「浩介ー!ご飯食べよー!」

紗由理はルンルンと擬音が付きそうな感じで俺のとこにスキップしてきた。

昼休みになるといつも俺のところに来て、一緒に昼ご飯を食べる。

紗由理とのご飯は楽しいが今日は先約がいる。


「悪い紗由理、ちょっと行かないと……」


「シショーのとこ?」


「ああ……今日は違う人と食べてくれ」


「……そっか、そうだよね、じゃあ、また明日一緒に食べよう……?」


そう言って紗由理は苦し紛れだったが、笑っていた。


「ああ、わかった。じゃあ行ってくる」

そう言って俺は、そそくさと教室を後にした。


「……うん、いってらっしゃい……!」


紗由理のその言葉は浩介には届かなかった……。



……あ、そういえば、場所ってどこだ……?




〜〜〜〜




その後、俺は校舎内を探索した、もちろん走りながら。

だって、遅れたら忍術とかでぶっ飛ばされそうだし……。てかもうすでに遅れてけど。

校舎内にはいなかったので、一番高い4階の窓からグラウンド、中庭、体育館の周りと調べたがどこにもいなかった。

正直あんな目立つ人がいれば、すぐ見つかると思ってたんだが……。流石忍者というべきだろうか。

そう簡単には見つからい。

そういえば、師匠の容姿を言ってなかった。

髪は黒髪のポニーテール。

胸は……しっかり出てる。紗由理より出てるな。

そう考えるとなかなか大きい方なのかもしれない。

身長は紗由理とそこまで変わらないが、少し高いぐらいだ。顔も可愛いというより、綺麗だ。

大人の女性、という感じだ。

……総じて言うなら美人だ。となると、紗由理はどちらかというと可愛い系だな…。

しかし、これは学校での姿だ。

忍者服を着ている時の師匠は、本当にコ◯ンに出てくる犯人のようだ。……まだ一回しか見たことないからよくわからないが、第一印象がそんな感じだった。

胸が出てなかったから、最初は男と勘違いしていた。

さては、サラシを巻いていたな……!

ってそんなことより、師匠を探さないと……

何されるかわかったもんじゃないからな……。

俺はその時、ビビッときた。もしかしたら……!

そして、俺は立ち入り禁止である屋上に全力疾走で向かった。



〜〜〜〜



「よくわかったな。浩介」

「ゼーハーゼーハー……」


やっぱり、屋上にいたか……。

師匠は屋上の扉の数歩前に仁王立ちしていた。

何せ修行だ。人目がつくような場所でするわけにもいかない。もし、グラウンドなんかでやっていれば完全に不審者だろう。……まあ何をやるかによるけど。


「今日は本来修行しようと思ったんだがな、ちょっとお前には忍者について教えておくべきだなと思ってな……講義を開く」


そういえば、あまり詳しく教えてもらっていなかった。……俺が思ってる忍者とはどうやら違うらしいしな。なんだよ、悪魔退治って……


「飯を食いながらでいいから聞いてくれ。まあ、いくつか質問はするがな」

「……は、はい」


そう言って俺はその場に座って弁当箱を開いた。

お、今日は大好きなハンバーグが入ってるではないか……!つっても、購買で買った日替わり弁当なんだけど。


「早速質問なんだが、お前は忍者をどういう存在と認識している?」

「…え、あ、忍者…?」

「そうだ」


俺はハンバーグを口に入れる瞬間に質問されたため、食べることができなかった。……くそう。

それにしても、忍者か……。

隠密行動を得意として、敵陣の情報を天井から聞いているイメージが強い。

あ、ナ◯トみたいにチャ◯ラとか使いそうだな…。

◯遁 豪◯球の術とか言っちゃったりして。

いや、ないなこれは。


「いや、使うぞ。だが、チ◯クラではなく、マナを使うがな。」


……え?…マ、マナ…?


「あぁ、マナだ。」

「うぇぇええええええっ!」


ま、まじか……!おいおいおいおい、漫画の世界じゃあるまいし、そんなことあるわけ……


「実際、お前に憑いていた悪魔だってマナを使わなきゃお前から引き剥がせなかったしな」

「……ま、まじかよ…!」


俺は驚きを隠せないでいた。だって、それはある可能性が生まれるからだ……!


「そ、それって、俺にも……?」

「あぁ、もちろん使えるようになる。修行をすればな?」

師匠はニヤりと笑いながらそう言った。

俺にも使えるのか……!

嬉しい!嬉しいが、一旦置いとこう…。


「おお、切り替えはやいな。まあ、話が進められるから良いが、ちょっと意外だな。」

「もっとはしゃぐとでも?」

「まあな」

失敬な!まぁ、確かにまだ興奮してるけども。

それよりも俺は師匠の講義をしっかり聞こうと思った。忍者というものがどういうものかで俺の生活が大きく変わるからだ。……なるべく楽な感じであってほしい。……そんなこと絶対ないが…。


「まぁ、話を戻すが………」


そんな感じで師匠の講義が始まった。

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