第8話 ツチノコとこうざん
「さて、次はどこ行くんだ?」
ジャングル探検が終わった一行は次の目的地へ向かっていた。
「次は高山にあるアルパカさんのカフェですね」
「カフェかー!また紅茶飲みたいなー!」
サーバルがワクワクしながら山の上のカフェに思いを馳せ。
「カフェか。高山支店と言った所か。アルパカってスリか?それともワカイヤか?」
「ああ、スリの方だよ」
ツチノコの疑問に思うルルが答える。
「ふーん。あいつがカフェをするなんて時代は変わったもんだな」
「ツチノコさんの時代のアルパカさんはどんな事をしてらしたんですか?」
そんなツチノコのひとりごとにかばんちゃんが高山への道を進みながら聞く。
「スリか?あいつは床屋、所謂髪の毛を切る仕事をしていたな」
「そうなんだ!わたしも今度切ってもらおうかな」
サーバルが既に見え始めてる高山の頂上を見ながらつぶやく。
「あくまで私の時代のアルパカだからな?今のアルパカは知らんぞ?」
「それにサーバルちゃんはまだ短いし…」
「でも確かにアルパカって髪長いもんね。定期的に切らないと前髪伸びすぎて両目隠れになっちゃったりして!」
ルルが面白いこと思いついたような感じに笑いながら言う。
「でももしそうなってたら大変ですよね。前が見えないし」
「アルパカ・スリは無尽蔵に毛が伸びるから定期的に切らないと最悪毛の塊みたいになってしまうんだ」
かばんちゃんの言葉を聞き、ラッキービーストがつかさず解説する。
「そうなんですか。ならなんらかの方法で切ってるんですかね」
「どうなんだろうね。さて、山に着いたよ」
改めて山麓から山を見上げる一同。
「さて、どうやって登ろうか」
「前はトキさんに運んでもらいましたが、今はいませんね」
「この位なら普通に登れそうだがな」
「ぼくも、行けるかな…?」
「えー?でも大変だよー?」
「ぼくは無理そうです」
各々が思い思いに駄弁っていると
「どうやらここは私の出番のようね」
そんな声が空から降ってきた。
「ん?あ、トキさん!」
破滅的な歌声を持つ鳥、トキが現れた。
「お困りの様子ね。アルパカのカフェに行くの?」
「そうなんです。またお願いできます?」
「うふふ、私ね、アルパカのカフェに行きたい子を連れてってあげるボランティアを始めたの。お安い御用よ」
「そうなんですか!ありがとうございます!」
「ちょっとちょっと、私も居るんですけど!」
かばんとトキのお話に赤い影が割り込んできた。
「あれ?君は確かショウジョウトキだっけ?ゆうえんちでPPPと歌ってたよね?」
「そうですそうです!久しぶりですねサーバル」
赤い影の招待はトキの仲間のショウジョウトキだ。
「ショウジョウトキの朱色は、餌である甲殻類の色素の影響なんだ。だから生まれたてのショウジョウトキは朱色はしてないんだ」
またラッキービーストの解説が入る。
「私とショウジョウトキの二人体制でやってるの。さて、かばん以外にもう一人運べるわよ。誰にする?」
「私は大丈夫だ。むしろ登れるか試してみたい」
「じゃあじゃあツチノコ!ぼくとどっちが先に着くか競争しようよ!」
「お、いい度胸だな。言っとくが負けるつもりは無いぞ?」
「もちろん!本気で来てよね!」
ルルとツチノコが闘志を燃やす。
「あ、じゃあショウジョウトキ、わたしお願い出来るかな?もう山登りは懲り懲りだよ」
「おまかせあれ!私ならトキよりも早くカフェに着きますよ!」
「へえそう。だったら私も負けられないわね」
「どっちが先に着くか競争ですよ!トキ!」
「負けないわよ!ショウジョウトキ!」
ここでも二人が闘志を燃やす。
「えっと、危険なのであまり飛ばさないでくださいね?」
「安全面に関しては安心してくれていいわよ」
「私たちなら大丈夫ですよ!」
自慢げなトキ二人だが、
「ふ、不安だなあ…」
「大丈夫かなあ」
かばんちゃんとサーバルは不安そうに声を漏らす。
「じゃあ早速始めるよ!よーいドン!!」
「あ、おい!イキナリは卑怯だぞ!」
ルルが言いながら岸壁に張り付き、器用に崖の石を登っていき、出遅れたツチノコが出っ張った岩を足場に飛んでいった。
「じゃあ私たちも行くわよ」
「負けませんよ!」
「かばんちゃん、大丈夫かなあ?」
「落とされないことを祈ろう」
「心配しなくていいわよ」
~山登り組~
「よっ、ほっ、それっ!」
ルルが器用に小さな出っ張りも目ざとく見つけ、足場にし登っていく。
「よっと」
その横でツチノコが小さな出っ張りも大きな岩場もお構い無しに足場にし、ジャンプして登る。
「いやー、ツチノコ早いなー」
「お前も、中々やるじゃないか。大丈夫そうか?」
「へーきへーき!すぐ追いつくよ!」
「ふん、無理はすんなよ」
「そっちこそ、急に落ちてきたって受け止めれないからね」
「他人の心配より自分の心配をしたらど」
ツチノコがブーメランな小言を言ってる真っ最中にそれは起きた。ツチノコが足をかけていた石が突如砕けた。
「うおっ!」
ほぼ垂直な崖で急にバランスを崩したツチノコはそのまま崖下へ真っ逆さまに…
「ツチノコー!!」
ルルが慌ててツチノコに声を掛けるが、ツチノコは無残にルルの隣を通って落ちていく…。所だった。
「えいっ!!」
ルルが決死の覚悟で落ちていくツチノコにジャンプし飛び付いた。
「ば、馬鹿お前飛びついてどうすんだよ!さらに勢いついてお前諸共落ちるだけだぞ!!!」
「あああああ!!どうしよう助けてツチノコー!!」
ルルは後先を全く考えなかった行動に一瞬で後悔し、涙目でツチノコに助けを求める。
「ったく、それっ!!」
ツチノコは近くにあった小さな出っ張りに尻尾を伸ばし掴まらせ再び崖にくっつくことに成功した。
「はあ、危なかった…。一大事だったな」
「うわーんツチノコー!!怖かったよおおお!!!!」
ルルの涙目が大泣きに変わった。
「ん…。まあ私が落ちちまったとき、つかさず捕まえてくれてありがとな。受け止めれたじゃないか。落ちただけだが」
「うう…。ぐすっ…」
ルルはツチノコの言葉を聞いてるのか聞いてないのか、ひたすらおえつを漏らしていた。
「なあ、ルル。もう競争は止めるか。慎重にいこう」
「う、うん。そうする…」
この出来事でルルには筆舌に尽くし難いトラウマを背負うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます