その22
ユズル部長の深く重みのあるスピーチに心を動かされたのか、社長さんと突っ伏社員さんたちはわたしたちのネット投稿小説をひとつひとつ読んでくださった。
「キャラ設定が甘すぎる」
「異世界だって非現実的だと共感できない」
「戻りながら読まないと文章がわからない。頭から読んで分かる文章にできないの?」
「『世界観』て何? 単なる独断になってない?」
「かわいい女の子が出てこない」
「恋愛要素なし」
「ギャグがない」
「作者のルックスにインパクトがない」
「声がかわいくない」
「田舎者!」
「ちょっと待ったあっ!」
わたしはどでかい声を出して反論した。
「小説の内容に対してのコメントは適切でぐうの音もでませんけど、わたしたちのルックスのこととかほっといてくだい、って感じですよ」
「ほっとけんわ!」
わたしの言葉に対して社長も大声を上げる。
「小説というものは、書く人間の人格すべてを注ぎ込むものだ。ルックスや声や人間として洗練されているかどうかということは極めて重要なことだと思わないか。美人とかかわいいとか単にそういうことを言っているのではない」
うんうんと社員さんたちもうなづく。動きがシンクロしてて、仲がいいんだなとほほえましい気持ちと気持ち悪い気持ちとでいっぱいだ。
「明日もまたおいでなさい」
と社長さんは返本の山の中から見たこともないラノベを何冊かお土産にくれた。
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