手紙
「あ、おかえりなさいメグちゃん! それにアスカも! オーウェンもご苦労様。ね、オーウェンどうだった? 仕留め甲斐があったでしょう?」
その後、お昼ご飯を食べて街のメイン通りを散策した私たちは夕方、オルトゥスに帰還。おやつの食べ歩きとか初めて! と喜ぶアスカは可愛かったです。そんな私たちを出迎えてくれたのはサウラさん。受付カウンターからわざわざ出てきて入り口までとっとこやってきてくれたのである。サウラさんも可愛いし、本日の私は可愛いに囲まれて幸せです。
「そりゃあね。ギルさんたちと違って俺だと甘く見られてんだろうなってのがよくわかった……当然、全部蹴散らしたけど」
「え? そんなに変な人、いたの?」
オーウェンさんの報告に驚いて目を見開くと、サウラさんは苦笑しながら当然よ、と口を開く。
「こんなに可愛いメグちゃんが街を歩いてるんだもの。手を出そうとしてくる人は後を絶たないわ。それに今日はアスカだっている。可愛い子どもが2人もいるのよ? いつもより桁が多いってのは予想がついていたの」
「でも、マジで多いんだな……直接行動はしてこないけどひたすら凝視してくるやつらの多いこと多いこと……」
「き、気付かなかった……!」
そんなにいたんだ……あれ? 私、普段は何も考えないで過ごしすぎなのかな? 街を1人で歩くことも多くなってきたけど、そんなの全然知らなかった。たまに変な人が絡んでくるけど外部の人だし、なんとか自分で対処出来てるし。
気を張っていれば多少はわからなくもないんだけど……うーん。まだまだオルトゥスのメンバーとしての自覚が足りないってことだよね。反省。
「いいのよ、メグちゃんは気付かなくて。むしろ気付いたら怖くて外に出られなくなっちゃうわよ」
「ひえっ」
それはそれで嫌だ! 思わず自分の身体を抱きしめて身震いした。その横でポンポンと背中をさすってくれるアスカの優しさが沁みる。
「慣れればどーってことないよ?」
「アスカも気付いてたの!?」
「うん。ぼく、人からの視線に敏感だから。注目浴びるのは好きだし」
そういえば昔から甘えん坊だったよね、アスカは。自分の可愛さを自覚してて、可愛いって褒められたり注目を浴びるのが好きなのだ。でもさ、誰彼構わずって嫌じゃない……? あ、嫌じゃないの? そうですか。強い。
「あ、そうそうメグちゃん。手紙が届いてるわよ。これを渡そうと思ってたの。はい、これ」
「えっ、もうお返事が? ありがとーございます! あ、ルーンとグートからだ! それに、ウルバノのも!」
手紙は合わせて3通。みんな私が送るとすぐに返事を書いて送ってくれるから、届くのもこうして同じタイミングであることが多いんだよね。でも今回の返事はやたら早い。あれかな? 私が闘技大会について書いたからかな?
「メグ、手紙が読みたいんじゃない? 部屋に戻っていーよ。返事も書きたいでしょ? でも、夕飯は一緒に食べよ?」
私ったら手紙を見つめながらソワソワしていたのかもしれない、察したアスカが私の顔を覗き込みながらそんな提案をしてくれた。くっ、気遣いの出来る子じゃないか! あとその上目遣い反則!
「う、そんなに顔に出てたかな?」
当然、夕食の約束を断ることはないんだけど……その間、アスカはどうするのかな? 心配になったので聞いてみる。
「うん? ぼくはギルドの中を少し回ってみるからへーき」
「お、じゃあそれに付き合ってやるよアスカ」
「ほんと? やったぁ! オーウェンありがとー!」
ギルド内探検か。そういえば私もここに来たばかりの時にやったなぁ。レキと。……うん、あれはあれで楽しかったよ! レキのことも知れたいい機会だったし、懐かしい思い出である。
「えっと、じゃあお願いしてもいーですか?」
「ははっ、メグは真面目だな。任せとけ。俺はどのみち今日1日お前らといるつもりだったから気にすんな」
「もー、ぼくのこと心配しすぎだよ?」
えー、だってアスカの面倒を見るって約束したのは私だもん。ここはきちんと挨拶するのが筋ってものでしょ。過保護だと拗ねるアスカは可愛かったけど。今ならギルさんたちが過保護になる気持ちが理解出来る気がした。うん、これは仕方ないね!
「2人ともありがとうっ! じゃあ、あとでね!」
快く承諾してくれた2人に手を振ってから部屋へと向かう。チラッと振り返ると、すでに2人は楽しそうに会話しながら歩いて行ったのでホッと一安心。なんだか相性良さそうだよね、アスカとオーウェンさん。年も離れているのに友人かのような感覚である。不思議だ。でも、おかげで安心して手紙が読めそう。私は3通の手紙をギュッと胸に抱いて、再び前を向いて歩き始めた。
部屋に着くと、まずミニソファに座ってローテーブルに手紙を置く。せっかくなので1番上にあった手紙から手に取った。毎回この瞬間はウキウキである。前に街で買ったお花を象った可愛いペーパーナイフで丁寧に封を開けた。
「ルーンからだね。相変わらず元気そう」
字からもその明るい性格が伝わるような気がする。読みやすくて大きなはっきりとした字。私はこのルーンの字が大好きだ。手紙には、闘技大会に参加するってことなどが書いてあった。おー、やっぱり参加するんだね!
「将来アニュラスの一員になるためにも、負けないんだからね、か。夢のために突き進むルーンはかっこいいなぁ」
ベッドの上にゴロンと仰向けになって手紙を読む。ちょっとお行儀が悪いけど仲良しからのお手紙はこうやってゴロゴロしながら読みたいのだ。誰もいないから許して。あ、精霊ちゃんたちも黙ってるよーに!
さて、続きましてグートのお手紙。グートも大会への意気込みと今はそのために修行をしてるってことが書かれてた。そして最後に……。
「大会のあと、2人で一緒に出かけないか? かぁ。あれ? 2人で? あ、ルーンは先約があるから一緒に行けないんだね。ふむふむ。同年代の友達がいないと寂しいもんね。もちろんいいよって返事書かなきゃ」
セインスレイのことはあんまり知らないから、散策するのも楽しみだ。砂漠があるって何かで読んだことがあるなぁ。ついガンマンとかサボテンとかそういう風景を思い浮かべてしまうのは日本人ならではだろうか。
治安があまり良くないって聞くからきっと保護者が付くんだろうなぁ。それに、アスカも行きたいって言うかもしれない。んー、まぁそれはその時の状況次第で伝えればいっか!
さて、最後はウルバノからの手紙だ。ウルバノは今、文字を書く練習をしてるところだから、いつも一言二言書いてある程度なんだけど、一生懸命書いてくれたのが伝わるからすごく嬉しい気持ちになる。最初の手紙なんかは読めなくて、字を教えてくれてる人がそっと隅の方に訳して書いてくれていたけど、最近はそれがなくても読めるようになったところに成長を感じる。お姉さん、涙がっ。
「お、う、え、ん、い、く、よ……ウルバノ、来てくれるんだ!」
ウルバノは人見知りが激しいから来ないかもしれないなって思ったから、手紙にも無理はしないでねって書いておいたのだ。だけど来てくれるという。これを喜ばずにいられるだろうか。
「うれしい!」
思わずベッドの上でゴロゴロと転げ回る。闘技大会ではみんなに会えるのだ。楽しみすぎる。アスカのことも紹介しよう。ウルバノも、友達になれたらいいなぁ。きっと仲良くなれるとは思うんだけど、こればっかりは相性もあるからわからないよね。でも、紹介出来たら1歩前進だ!
それにしても、ウルバノは誰と来るのかなぁ? そんなことを心配ながら手紙をしまっていると、封筒にもう1枚紙が入っていることに気付いた。差出人は……リヒト? 危ない危ない。読み逃すところだった。えーと、なになに?
「ウルバノは、俺と魔王様、あとクロンや大会に出るやつらで連れて行くから心配すんなよ! か。あ、あれ、なんだか私の考えが見透かされてない?」
簡潔なその一文に苦笑を漏らす。自分のわかりやすさ具合になんとも言えない微妙な心境になってしまう。でも、まぁいい。ウルバノが安全に大会会場まで行けるのならそれでいいのだ。父様もいるのなら問題もないし。
「リヒトは大会に出るって言ってたけど、クロンさんは出るのかな。父様の付き添い? 他にも知ってる人が誰か出たりするのかな? ふふっ、楽しみ」
他のギルドや魔王城からの出場者は当日まで知ることは出来ない。聞けばわかるだろうけど、忙しい中そんなことのために時間を割いてしまうのも申し訳ないしね。というか、そもそもオルトゥスからも誰が出るのかさえまだ知らないのだ。他所のところより自分のところである。
ギルさんは……予知夢によるとリヒトと戦うだろうから出るよね、きっと。ケイさんはロニーが出るから師匠として付き添いに忙しいかもしれない。ロニーは成人部門で出るって言ってたもん。
そうなると、シュリエさんやニカさん、ジュマ兄も出るかも。ルド医師やレキ、メアリーラさんは救護の方にいそうだ。ま、あれこれ予想したところで結論はわからないけど、それも当日の楽しみにするっていうのもアリだよね!
「よしっ。早くお返事を書いて食堂に行かなきゃ!」
手紙も読み終えたことだし、と私はガバッと身体を起こしてベッドから下りる。手紙を大事にしまって机の引き出しのお手紙ボックスにしっかりしまう。このボックスならいくらでも入るからね。え? もちろん頂き物です。収納ブレスレットほどの機能はついてないよ。時間の経過はするし、手紙サイズの物がただたくさん入るってだけだから。それだけでも相当な高級品だけどね……大丈夫か私の感覚。
さっそく自分の机に向かってペンを取り、いろんな種類の便箋の中からそれぞれに合いそうなものを一つずつ選んでペンを走らせていく。それぞれに1枚ずつ、必要なことと最近の出来事なんかを書いてよし、である。だってあれこれ書いちゃうと次のお返事で書くことなくなっちゃうもん。
アスカたちも待たせていることだし、とキリのいいところでペンを置き、続きはまたあとで。しっかりお手紙セットを引き出しにしまい込んだところで、私は食堂へと向かうことにした。
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